京都国立近代美術館で「ラグジュアリー<ファッションの欲望>」展を観る。

世界一のコレクションをもつKCI(京都服飾文化研究財団)が、王道を行く展示を、それこそ贅沢に見せてくれました。ラグジュアリーに関する連載をもつ身としては、いったい「ラグジュアリー」の表現を考えるにはどういう視点があるのか?ということをサブテーマとして抱きながら観ていたのですが。

セクションは4つに分かれます。「1.着飾ることは自分の力を示すこと–Ostentation」「2.そぎ落とすことは飾ること–Less is more」「3.冒険する精神 –Clothes are free-spirited」「4.ひとつだけの服–Uniqueness」で、トータル80余点。

どのセクションもコンセプトが明確に際立っていて、これまでのKCIの展示で見たことがある服があったとしても、新しい視点から見直すことができました。とりわけ圧巻だったのが、「冒険する精神」のセクション。コム・デ・ギャルソンの服が、「もとはこんなにシュールな形だったのだ!」ということを力強く写した畠山直哉の写真と対峙する形で展示されています。世界を驚かせた日本のデザイナーによる、不思議なのに構築的な美しさをたたえる作品が、ずらりと並ぶさまには静かな感動をおぼえました。

「ひとつだけの服」セクションのマルタン・マルジェラの作品も、楽しい驚きの連続。王冠でつくった服、クリスマスツリーに飾るモールでつくった「コート」、貝がらみたいなアクセサリーパーツでできた「ジャケット」、3つの異なるウェディングドレスをつぎはぎしたウェディングドレスなどなど、笑いもとりつつうならせる超個性的な一点ものばかりです。

個人的に欲望を刺激されたのは、1920年代のフランスの靴会社がもっていたというヒールのサンプルコレクション。ラインストーンによるデコレーションが、ヒールにぎっしり。これ、今つくると流行ると思うんだけどなあ(ちなみに、いま、「アビステ」さんにデコ指示棒をリクエスト中です)。

ソニーのプレステ3によって作品の細部まで高画質で見ることができる、という新技術にも驚きました。生地の縫い目までリアルに拡大して見ることができる!すごすぎ。これも現実化してほしいものです、ぜひぜひ。

KCIのアシスタントキュレーター、石関亮さんについていただき、詳しい解説や学芸員ならではの苦労話を聞きながら観るというとても贅沢な鑑賞をさせていただきました(ありがとうございました!)。「なぜ、世界不況のこの時期にラグジュアリー展なのですか?」とあえて聞いてみたら、「世界のムードが暗いからこそ、美しく贅沢なものを見てよい気分にひたっていただきたいのです」とのことでした。たしかに、とても豊かな気持ちにさせてくれる展示です。東京展は10月から。こちらには別のサプライズがあるのかどうか、今からとても楽しみ。

せっかくの京都なのだから、ということで先斗町の「卯月」さんで食事。雨だったので川床はできませんでしたが、京都情緒はたっぷり堪能いたしました。