翻訳独特の読みづらさもところどころあったものの、なんとか読了しました。ダン・アリエリーの「予想どおりに不合理」(早川書房)です。ビジネス書として人気が高いようですが、人間の行動や心理の不可解さを研究の底流テーマにしている私のような人文系人間にも興味深い指摘が多々ありました。備忘録がてら、メモしておきます。

●もっとも強く印象に残ったのが、4章めの「社会規範のコスト なぜ楽しみでやっていたことが、報酬をもらったとたん楽しくなくなるのか」の話。

 ☆人に何か頼みごとをされたり、もてなしてもらったり、手伝ってもらったりするとき。「ああ、申し訳ない、なんとかお礼をしたい」と思って代価を支払おうとすると、かえって人間関係が決定的に壊れてしまう! 

 ☆社会規範が優勢な関係においては、市場規範をもちこむことはタブーなのだ。

 ☆ボランティアとして働き、人に喜んでもらうのなら熱心に働くけれど、同じ仕事であっても、それが低賃金のバイトだったらとたんにやる気をなくす。

 ☆デートでもかかった金額を具体的に口にしたとたん、二人の関係は社会規範から市場規範に変化する。

 ☆ばりばり市場原理で動いているような企業であっても、社内で社会規範が働くことで、従業員に忠誠心を抱かせ、やる気を起こさせることができる!

●3章の「ゼロコストのコスト なぜ何も払わないのに払いすぎになるのか」のお話にも考えさせられるヒントがたくさん。

 ☆値段ゼロは単なる価格ではない。ゼロは感情のホットボタンであり、不合理な興奮の源である。値段ゼロの効果は、単独で独自のカテゴリーをつくっている。

 ☆何かが無料!になると、私たちは無料!であることに感動して、提供されているものを実際よりずっと価値あるものと思ってしまう。

 ☆ある一定以上の金額を買うと送料が無料!になるサービスがある通販の場合。ふたつめは別にほしいものでもないのに、無料!配送があまりにも魅力的で、つい要らないふたつめを買ってしまう(・・・私もよくやることだ・・・)。

 ☆あるビールは3キロカロリー、別のビールはカロリーゼロ。この場合、軽さはたいして変わらないはずなのに、カロリーゼロのほうが健康にいいことをしている気分をたかめてくれ、ついこってり料理を一皿注文してしまうかも(不合理すぎっ。笑)。

 ☆2と1の違いは小さいが、1とゼロの違いは莫大である。この点を理解するなら、客を大勢集めるのに「無料!」の力を有効利用すべき。「無料!」を利用して社会政策を推進することも可能。人々に電気自動車を運転させたいなら、登録費用を安くするのではなく、無料!にするとか。無料!は手持ちのエースであることに、ほとんどの政策参謀は、気づいていない。

一見、矛盾だらけで不合理に見える行動をよくよく分析すると、なるほど、そこにはヒューマンな真実が。これを意識化して心にたたきこんでおくことは、いろんな場面で身を守ってくれたり、役立ってくれたりしそうである。

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