「欧米では、」などと雑にひとくくりにされることが多いが(私もめんどくさいときにはときどきやります、はい)、イギリス人気質とアメリカ人気質はまったく違う。そのあたりのモヤモヤを笑いとともに明確にしてくれた本に出会い、うれしくなった。

コリン・ジョイスの『「アメリカ社会」入門 英国人ニューヨークに住む』(NHK出版)。

皮肉とユーモアにあふれた観察力と描写力がツボにはまる。私が心底好きだった(最近ではイギリスもアメリカナイズされてきたので、なかなか出会えない)イギリスならではの、スパイシーでひねくれた、でもまっとうなヒューマニズムの香りがふんだんに漂う。感覚を共有できる友人と出会えたような幸せを味わう。

ニューヨーカーの「見知らぬ他人に対する親愛あふれるオープンネス」が、実は相当気持ち悪いことである、ということを、ストレートに書かずにやんわりとおもしろおかしく伝える技芸にはうなった。こういう、いじわるでユーモラスなイギリス的文章芸は、かねてから「身につけたいものだ・・・」とひそかに目指している芸でもある。

「平等」をたてまえとするアメリカは、実はものすごい偏狭な階級社会であり、人々がその格差や差別に対して平気である、というそのことじたいがイギリス人を驚かせる、という指摘にも、「なるほど」と感心。

なかでも最もはっとさせられたのが、アメリカ人が(そしておそらくアメリカ好きの日本人も)熱心な、「ネットワーキング」の気持ち悪さに対する指摘である。

「交友関係が仕事に役立つというのは、友だちづきあいのあくまで副産物でしかない。しかるに、アメリカ人はおおっぴらに、自分にとって役立つ人と友人になろうとする。その人が有用だから、親しくなろうとするのだ。ぼくには、そんな振る舞いはあまりに功利主義に染まったものに見え、ぞっとするほど不誠実だと感じられた。」

このくだりには思わず膝を打った。うさんくさいベストセラー本などでまことしやかに奨励されている「役立つ人脈の作り方」「いらない交友関係の整理の仕方」みたいなのがどうしようもなく不気味だ、と常々感じていたのだが、そうそう、こういうことなのだ。コリンがすっきり代弁してくれた。ありがとう!

翻訳の谷岡健彦さん、イギリス的気質を踏まえたとてもすばらしい訳をなさる方だと感心しました。

コリン・ジョイスの前著(読んでなかったのが恥ずかしい)もさっそく購入したことは、言うまでもない。

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