コリン・ジョイス「『ニッポン社会』入門」(NHK出版)読了。もっと早く読んでおくべきだった。「英国人記者の抱腹レポート」と副題にあるとおり、意外な盲点を鋭くつかれて思わず笑ってしまうところも多いのだが、それ以上に、泣ける本でもある。

たとえば「日本の日常」という章。山手線の車内。混雑した通勤電車。居酒屋のトイレ。近所の公園。駅のホーム。テレビのワンシーン。プールの休憩時間。エスカレーター。近所のスーパー。アパートの布団干し光景。これといった感動的な叙述はなにひとつなく、ひごろ、文字通り見過ごしているなんの変哲もない光景が、たんたんと積み重ねるように描写されるだけである。それなのに、最後の一文、「ああ、これこそ日本。」に思わず胸がつまり、涙が流れる。感動を狙わず、感情を描かず、ありのまま、見えたままの平凡な事実をしずかに叙述して泣かせる。かなり高度な芸である。もの書きとして見習うべきところが多い本である。「虎林」のハンコが見てみたい。

6月も終わりで、一年の折り返し。あいかわらず焦点の定まらない雑多なことに終始するばかりだったが、とにかく無事に生きのびることができて、仕事を与えていただけることに感謝する。

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