◇朝日新聞夕刊、「人生の贈りもの」欄より作家・精神科医の帚木蓬生さんのおことば。備忘録まで。

「ものを書くときには、その分野に関する本を100冊か200冊、読めばいいですよ。それだけ読めば、その道のプロになりますもんね」

「われわれふつうの作家は毎日、書かないといけませんよ。バイオリニストが毎日、トレーニングするのと同じです。あれは、手を動かしてることによって、続きが浮かんでくるもんですからね」

3年かけて資料調べして、1年かけて書く。これだけの努力あってのあの成果。ことばに重みがある。すばらしいお手本がいることが、畏れ多く、ありがたい。

◇「フラウ」次回ネタに、7月19日に英国でおこなわれるという「ビッグランチ」の話を書く。ボランティアによる、コミュニティ単位での路上パーティーのようである。今の段階で7000スポットの予定というが、果たして当日どうなるのやら。まだ行われていない時点で一大イベントの話を書くというのはかなり神経をすり減らす。

この話を書こうと思ったのは、ほかでもない、宮台真司さんの『日本の難点』(幻冬舎新書)に刺激をうけたためである。挑発的な表現もかなり多くて、著者独特のあくの強さに慣れていない人の中にはむかつく人も多いだろうなあ・・・とは思うものの、その点も含めて、この人、おもしろい。ちょうど大学のゼミでhathos(嫌快感)を議論したんだけど、まさしくそんな感じを抱かせる。いや~なところが、なんとも楽しい、みたいな。本人もそれを折込み済み。あっぱれである。こういう「感染力」、見習おうと思って見習えるもんでもないけど、したたかな腹の据わり方に、少し勇気をもらう。クレーマーや偏狭なせこい部外者のピーチクパチクなど知ったことか。そのくらいの強い覚悟がなくては、影響力のあるものなんか書けないことを思い知る。(実際、ピーチクパーチクの声が大きければ大きいほどこの人は売れていくように見える。それも想定済みであるらしいところが、やはりすごい。小心モノにはなかなかまねできないことである。)

……遠回りした。で、宮台さんによれば、コンビニ&ネット&宅配サービスなどがふえて<システム>が社会全体を覆うようになり、「役割&マニュアル」優位のコミュニケーション領域が広がり、地域社会が包摂性を失ったことが、自殺やうつや孤老死の増加にもつながっている、と(かなり短絡的な要約で失礼。このあたりもっと繊細に幅広く論じていらっしゃいます)。

「善意&自発性」優位の、相互扶助的な地域社会のコミュニケーション領域が減少した結果、隣人が何者かを知らない、知らなくてもOKというムードが、世界の都市部を覆うようになっている。英国のビッグランチの試みは、私には、この「善意&自発性」優位のコミュニケーションの復権をめざすものに見えたのである。地域社会の包摂性を再び取り戻すことが、ひょっとしたら、今起きているさまざまな社会問題に対する解決を、間接的にでも少しでも、もたらすことにつながるのではないか・・・と注目しているという次第である。

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