さすが、の鹿島茂先生である。『セックスレス亡国論』(朝日新書)、とても大胆で鋭い視点を提供していらして、うなったのであった。

人間はほっとくと、面倒くさいことを回避する(=セックスをしなくなる)。資本主義は、この面倒くさいことを代行する産業を生み出す(=AVやアダルトDVDの発達)。資本主義が、面倒くさいことをしたくないという願望をくみとって発達すればするほど、それが全面的なセックスレスを招き寄せ、ついには亡国の危機に至らしめる・・・・・・という議論。

「資本主義はこんなふうに人類に『面倒くさいことはやめましょう』という魔法の言葉を吹き込むことで、確実に一歩一歩人間の本能を退化させていく。もしかすると、我々は滅びの道へとまっしぐらかもしれませんよ」。

女性誌がすすめる「モテ服」の落とし穴に関する指摘も、笑いつつ、鋭すぎてひきつるところがあった。恋愛が女の見栄と結びついてしまった喜悲劇的現状があるのだが、それはつまり、女が「男からどのくらい注文があるように見えるのかを競い合うようになった」ことである、と。鹿島先生用語を使えば「女ドーダ」の競争になっている、と。

「もし、男女関係を正しく理解しているなら、絶対に、『モノを持った女が勝ち』などという発想が出てくるはずがありません。・・・・・・(中略)・・・・・・本当にモテたかったら、原節子の首をかしげるしぐさとか、高峰秀子の真っ白なブラウスなんてものを研究して、『優しげに見える女』『貞淑に見える女』『上品に見える女』を研究すべきなのです。ところが、女性誌が間違えて、完全に逆を行っている」。

「情報を載せる側の編集者も忙しくて、自分が恋愛している暇もない。要するに、稼いだお金で高いバッグを買って『ドーダ』と言っているうちに、40歳、50歳になってしまったわけです」。

男の場合、「面倒くさい」ことを嫌い、回避していると、二重の弱者になるという指摘は、先日、雨宮さんにインタビューしたときの話(非モテとワーキングプアはつながっているという話)に通じるところがあって、よく理解できた。

面倒くさい求愛行動を回避してアダルトDVDなどで完結する男は、モテない。面倒くさい受験勉強や就職活動を避けて通ろうとする男は、経済面でもうかばれないことになる、と。

「面倒くさいことは嫌いだと言っているうちに、恋愛でも経済でも、自分の可能性を片っ端から閉じてしまうわけです。・・・・・・(中略)・・・・・・面倒くさいことはしたくないと思って、それを幼いころから実行していると、いつのまにやら、二重三重の弱者になって、ワーキング・プア&オナニストになってしまっているのですね。しかし、だからといって、今さら面倒くさいことはしたくないから、そこで居直ってしまうわけです。働き口もいらない、女もいらないと」。

でも、資本主義はこの「面倒回避」の欲望をくみとって、それに対応する製品を作り続けることで発達していくのである。なんだか空恐ろしい矛盾というか悪循環というか。こういう仕組みを看破して、わかりやすく伝えられる鹿島先生はやはりタフな知性の持ち主であるなあとあらためて感心する。

で、日本の未来のために(?)とりあえず私にできるささやかなことは。 「面倒くさい」、これを言わない、言わせないような教育か・・・。

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