◇心にひっかかった言葉の備忘録。朝日新聞夕刊、「人生の贈りもの」by 仲代達矢さん。8月27日(木)夕刊。

「人間とは何者か、自分とは何者かを知った上で、一人前になってほしい。『人間っていいな、悲しいね、おもしろいね。でも人間はすてきだ』という芝居ができる役者になってほしい。ここを出たからには、自分でおもしろいことを言って、自分で手をたたくようなタレントにはなってほしくない」。

「俳優は鮮度が大事なんです。常に洗い直していかないと、キャリアと引き出しだけじゃ勝負できない」。

モノカキだって一緒だろう。息の長い、信頼される仕事を続けていくためには、常に「洗い直し」を意識的にしていかないと。

◇同欄、8月28日(金)夕刊。

「映画やテレビは、いわば『のぞき』ですよ。経験のない俳優さんに目をつぶらせて、カメラを回し、目を開いて『はい、カット』で、つないでいくんですから。演技力がなくても映像はなんとかなる。でも、芝居はそうはいかない」。

「鮮度を保つことを忘れない。おごらず洗い直して勉強して、『おもしろきもの』『めずらしきもの』を追い求める。(中略) ゴールは死。策も何も弄さず、だあっと思いのままに走る。落馬したっていいんです。これからがおもしろいじゃないですか」。

ゴールは死。この覚悟があのすばらしい仕事に通じている。ほんと、がんばっても、がんばらなくても、等しくゴールは死なのである。だったら、だれがなんといおうと、外野の評判なんて気にせずに、思いのままにいったほうが勝ちだ。落馬したって、外野のひやかしなんてほんの一瞬。知ったことか。だよね。

◇ENGINE10月号、河毛俊作さんのエッセイより。

「己を知らないままに、ハリウッドセレブの普段着を研究し、雑誌の薦めるモードブランドのセクシーであるらしい服を買い求める。ジムで鍛えたりスキンケアに精を出したりもする。トゥールビヨン搭載の超高級時計を購入し、更にリッチな人々はヨーロッパの超高級車も購入する。その結果、ホストのような医者やプロレスラーのような弁護士、ラスベガスでショーをやりそうな税理士などが誕生するが、真にセクシーな男は誕生しない」。

「江戸時代の諺に、『目病み女に風邪ひき男』というのがある。目を病んだ女と風邪をひいた男はセクシーであるということだ」。

「やるべき何かが終わって虚脱し、無になった瞬間、あなたは女性の目からセクシーに見えている筈だ。(中略)冷静でストイックな男が静かに崩れていく時にセクシーさというものが生まれる。結論を言えば世の中に派手な服や露出の多い服は存在してもセクシーな服などというものは存在しない」。

さすが河毛さん、ずばっと言っちゃいましたね~といった感。メンズファッション誌に関わっているスタッフやライターだって、心の中ではわかってるのではないかと思う。「セクシーといわれている服を着るだけじゃあ、セクシーにはなれない」ってこと。でもそれを「セクシー」っていうことにしないと、服が売れない→広告が入らない。でもって、誌面では理屈を展開しなくてはならない。矛盾だらけの仕事だと思うが、どんな仕事にだってそんな一面はあるだろう。矛盾に満ちた状況とたわむれたり、変わらぬ状況を突き抜けたりする理屈を考える過程も、それはそれで、なかなか楽しかったりはする。

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