◇桐野夏生『女神記』(角川書店)読み終える。ギリシア神話の神々はよく知っていたが、日本の神話の神々のことはまったく知らなかった。ギリシア神話に負けず劣らずどろどろに感情的で、ばかばかしいほど壮大な闘いを、女神イザナミと男神イザナキが繰り広げる。発売直後に買っておいたのだが、なかなか入り込めずにいたところ、いったん物語世界の片隅の住人になったら夢中で読み終えることができた。

裏切り、恨み、憎しみ、不寛容、復讐。こういう「闇」の感情を書かせたら桐野さんの鮮やかさはピカ一という気がする。闇の感情は無視したりすべきものではない。闇があって光がある。夜があって昼があり、陰があって陽がある。暗い部分を見つめることで明るさも「明るい」と感じることができる。死があるからこそ生が輝く。あらゆるものが、対になってはじめて世界を動かすことができる、ということを、この神話的な物語は教えてくれる。

(イザナミの言葉として)『天と地。男と女。生と死。昼と夜。明と暗。陽と陰。なぜふたつに分かれたかと言うと、ひとつだけでは足りない。ふたつがひとつになって初めて、新しいものが生まれることがわかったからだよ。また、ひとつの価値は、対極にある価値によって際立ち、互いがあることで意味が生まれるからなのだ』

女神から先に声をかけるのは「まちがい」(?)で、男神のほうから先に女神に声をかけることが「正しい」順序である、というくだりにはちょっと微笑んでしまった。最近の「狩人」系女子にはどう読まれるだろうか、と。

◇携帯サイト「時代のテクスチュア」、なんとか無事に一年間の連載を終えて、スタッフの皆様と打ち上げ@「金田中 草」inセルリアン。ベテランの優秀な編集者の方々がついていてくださったおかげで大きな問題もなく完走できたことに感謝。サイト読者の皆様、一年間おつきあいいただき、ありがとうございました。

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