槇村さとる先生、『イマジン・ノート』(集英社文庫)と『スタイル・ノート』(幻冬舎)。マンガ入りのエッセイ集である。

『イマジン・ノート』は、書かれている「事実」だけを見ていくと、とても重い衝撃の告白本とも読める。「苦労」と呼ぶにはあまりにも大きすぎる経験というか「事件」に、驚きを通り越して打ちのめされる。ただ、奥の奥に眠っていたそうした経験と真正面から向き合い、折り合いをつけていく槇村さんの心の過程が、優しくすがすがしい余韻を残す筆致で描かれている。嘆きをひきずるわけでもなく、美化するわけでもない。向き合って、認めて、すべて肯定し、未来に向かうことで光を見出していくプロセスに、一緒に泣けて心が洗われていく感じがする。以下、とりわけ沁み入ったことば、備忘録まで。

「人間あんまりにも辛い生き方してるとホンのちょっとの普通の親切をもらっただけでも”愛してる”ぐらい思っちゃうもんである。当時の私はメタメタ自尊心低く、ギンギン自意識過剰。(気付いてないけど)心の底で自分はクズだと思っていたから、恋人とも友人ともどうも、なぜか、うまくいかなかった」

「『どうも記憶が怪しい』とか『このごろ物忘れするぞ?』と感じた時は、『心が何か信号を出している』と思うことにしている。何か無理をしているんじゃないか、自分にウソをついているんじゃないか?と考えるきっかけになっている」

「相手の伝えたいことが、言葉が、声が心が、細かいツブになって、波動になって、私の細胞の間をサアッと抜けてゆく。その一瞬の印象をつかまえる。それが相手に触るってこと。相手の身になるってこと」

「自分で自分をしつけ直す。(中略) 自分好みの自分に、しつけて、成っていくことだから、深い喜びがある」

『スタイル・ノート』のほうには、もっとマテリアルな面での具体的なアドバイスが描かれている。「無難という考え方を捨てよ」とか、「迷ったら買わない」とか「メイクより内臓優先」とか。もっとも共感を覚えたのが、ダメ―ジに対する対処法。

「1、出す。2、寝る。3、泣く。きちんと悲しむ。4、考えはじめる。 平気なフリは禁物。時間をかけてしっかりプロセスを踏みながら 溶かしたり、受け入れたりしていくこと。パニックにならないこと」

きちんと悲しむ、ということが、なかなかできない。ちょっと勇気がいる。でもたぶん、これを「きちん」とやっておくことで区切りをつけられるんだろうなあ、とわかる。

「50代は満開の花 始末よく 華やかに 自分がやってきたコトが全て顔に出ています それが美しいように」

キムさんの表現を借りれば「菩薩のように」美しい槇村さんがこう書くと、説得力がある。

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