◇「フラウ」12月号発売です。連載「ドルチェを待ちながら」で、近頃浮上してきたサステナブルなキャビアについて書いています。機会がありましたら、ご笑覧ください。

◇たいへん遅ればせながら、片瀬平太『王様の仕立て屋』(集英社)、全巻一気にオトナ買いして、読み始める。おもしろい。『美味しんぼ』のスーツ版? スーツのうんちくに、さまざまな人の人生模様がからんでくるので、服に関心がなくても興味深く読める。まずは1~3まで、読了。心に引っかかった言葉を、メモ。

○1巻 「確かにおめえのスーツは完璧だ 合理主義のアメリカ人ならおめえの方を好むだろう だがイタリア式は完璧の中にわざと隙を作る たとえば肩のこの皺だ こいつは『雨降り袖』と言って昔ながらのナポリ仕立ての『粋』なんだ と言って下手な職人がこれをやったらスーツ全体がだらしなくなっちまう」

○2巻 「そこの店は堂々たるイギリス・スタイルを継承してて 政治家やら実業家が勝負服を作りに来る 相対した人間を威圧するような服が 先生の個性をとっつき難くしてるんですよ」

「妙なことを言うな 服など人体の装飾に過ぎん 私がとっつき難いと言うなら これが天より授かった私の個性なのだ」

「腕のいい美容師は眉毛を数本抜くだけで 客のイメージをがらりと変えてみせるという 個性の改革なんてほんのちょっとした事なんですよ」

○3巻 「いい仕事をした事なんて 一日で忘れなさい! 過去の栄光なんて角砂糖一個の栄養もないのよ!」

「人間が一番最初に作った人工臓器 それが服さ」

もっと早く読んでおけばよかった…と思うものの、ま、今からでも遅くはない。先々の楽しみがひとつ増えた。