◇ダイナースクラブ会員向け情報誌「SIGNATURE」12月号。写真がきれいで、内容も厳選されているので、毎月楽しみにしている雑誌のひとつ。今月号のベトナム特集の写真にもうっとり。落語家・立川談春による「流儀CODE:すべての芸能に勝負を挑む」に、興味深いことばがあったのでメモしておく。

「落語を伝統芸能と捉えている人は多いでしょう。でも、多くの人が思っているような、伝統芸能をつくる、伝える人たちが目指しているものと、落語はまったく違うベクトルにあります。それは落語が、洗練というものに価値を見出さない、洗練へのアンチテーゼから始まっているからなんです」

落語は洗練へのアンチテーゼ! なるほど、そうだったのか。近頃、落語が妙にかっこよく見えてきているのだが、その理由のひとつが、「反・洗練」にあるかもしれない、と思えてきた。

◇同誌、伊集院静のエッセイ「旅先でこころに残った言葉」より。旅先で、伊集院さんが小泉信三『読書論』を読んでいて心に残った箇所、として引いているのだが。

「(慶應義塾大学工学部の)学部長であった工学博士の谷村豊太郎が、大学に寄付などをしてくる企業家が、<すぐ役に立つ人間を造ってもらいたい>と注文するのに対して、<すぐ役に立つ人間はすぐに役に立たなくなる>と言って大学では基本的理論をしっかり教える方針を徹底した逸話を挙げ、<すぐに役に立つ本はすぐに役に立たなくなる>とも言えると書いてあった」

ハウツー本ばかり売れる時代に、まだこういう考え方を伝えようとしてくれる人がいて、ちょっと嬉しくなった。同じ欄にこんなことばも。

「人が生きる示唆を与えられたり、才能を開花させるのはほとんどが<人との出逢い>である。それも慈愛に満ちた人である場合が多い」

これも経験上、しみじみ実感するところ。ただ、<出逢い>をきちんと<出逢い>にするには、心と態度をオープンにしておかねばならない。かたくなにつまらない鎧をかぶっていると、貴重な出逢いも逃げていく(自戒をこめて)。

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