『売れる小説の書き方。』(エンジン01選書)読む。林真理子、大沢在昌、山本一力、中園ミホによる名古屋でのパネル講座を本に収録したもの。

通勤電車片道で読める分量で、「売れるハウツー」など、どこにも書いてない。ただ、それぞれの大作家の、このステイタスにいたるまでの大苦労話と、ちらりちらりと暴露される文壇内輪話が、下世話な関心をひく。

とりわけ、「え? こんな話を活字にしていいの?」と思ったのが、石田衣良さんにまつわる話。

「林:  …… 石田衣良さん、売れてるじゃないですか。

大沢:  うーん、でも彼は、あの中身のなさがすごいじゃないですか。

中園:  アハハハハッ。

大沢: 本当に、素でもああだけど、お前本当に心がないね、ってよく言うんですけど。しゃべってることにまったく心がこもってないでしょう。あれ、素でもそうですからね。あれは、素を出さないから飽きられないんだと思う」。

「作家のテレビ出演問題」をめぐる話で、これだけ読むとたんなる悪口みたいだけど、決してそういうわけではないのである。むしろ、おそらく石田さんへの一種の愛があってこそ出てくる話で、「素を出さないから飽きられない」という稀有な具体例として印象深かった。

そのほか、お金持ちにお財布をもらうと財運が移るっていうことで、中園さんが林さんからドル&ガバの財布をもらい、林さんが秋元康さんからエルメスのクロコ財布をもらった話とか、宮部みゆきさんの服の上から下までの値段とか、俗っぽいエピソードばかりが記憶に残るような、妙になまなましい本だった。

2 返信
  1. キンバリー
    キンバリー says:

    はじめまして。『愛されるモード』を拝読して以来、ときどきブログを拝見しています。石田さんの著作(小説、エッセイとも)は読むたびに、ご本人の、登場人物、あるいは読者に対する距離感、もしくは冷たさのようなものを感じていたので、「素を出さないから飽きられない」とのくだりに、なるほどと膝を打ちました。冷たさを感じつつも、本を手にとってしまうのですから、それこそまさに石田さんが「稀有な」作家であることの証明なんでしょうね。

    返信
  2. nak
    nak says:

    拙著をお読みいただきましたとのこと、ありがとうございました。
    いかなるスタンスであれ「代わりがいない」ステイタスを築くのは、それだけで大変なことであろうなあと思います。石田さんからお財布を頂戴したいくらいです(笑)。

    返信

返信を残す

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です