ポール・フリードマン編『食事の歴史 先史から現代まで』(東洋書林)。370ページ近いハードカバーの大型本。ケース付き。食卓の情景を描いた絵画がカラーでたっぷりぜいたくに添えられていて、目にも楽しい。人間にとっての「食事」の意味を考えながら、まずはざっと目を通した。後日、テーマに応じて参照できそうなところが、ところどころある。

ただ翻訳ということもあってか、文体がやや単調で地味なので、通して丁寧に読もうとすると眠気に襲われる。概説書はそんなもんかな。逆にそういう文体だからこそ、「古くなりにくい」というところもあるのだろう。同時代感覚を出しつつ今、面白がってもらうか、10年先の読者を見据えて己を抑えていくか。究極の選択のようにも感じる。両立できたら理想だが。

最後の章、美食学についての新しい展望についてのペーテル・スコリールスの論が、現代の関心と近くつながっていて、若干、興味深く読めた。ダノンやコカコーラによる味覚のグローバル化。移民による食材や味覚の国際化。ファーストフードの台頭とその反動としてのスローフード運動。レストランへの熱中が世界中で一気に増えたのが、1970年代であったこと(比較的最近だ)。1960年代には「新しさ」をアピールする食の記事が多かったのに、1990年代には「伝統」をアピールする記事が増えていること。でもその伝統は「創造された伝統」であるということ。その間に起きた食品スキャンダル。などなど。ポール・フリードマンの序説と併せて読むと、近年の食のトレンドの、一連の流れがつかめる。

「フラウ」の連載原稿の最後の締め切りが迫っているので、最終回にふさわしいネタ探しも兼ねてのアラ読み。4年近く続いてきた連載だが、海外の食のトレンドニュースをチェックし続ける習慣のなかで、食のトレンドとファッションの流行が連動していることをひしひしと実感してきた。衣食住ばかりでなく、教育・社会・広告・経済・政治・恋愛・文化・・・・・・人の営みは全部、多かれ少なかれ、互いにつながっているのだけど。

2 返信
  1. はすざわ
    はすざわ says:

     遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
     ファストフード対するスローフードという図式は勿論、高級料理の分野でも、前衛化(最近だとエル・ブジ的なるものの拡がり)⇒反動としての伝統回帰 みたいな動きは必ずと言ってもいいくらい繰り返す気がします。
     ワインでも、ロバートパーカー的なグローバル化⇒最近の地場品種への関心 みたいな動きはありますね。
     多分、どんな世界でも、こういう「行ったり来たり」は大なり小なりありうるんでしょうけど、食べもの・音楽・そして勿論ファッションについては、なかでもその激流が凄いというか・・。
     その中で自分を見失わずに、しかも最前線で長きに渡って日々糧を得ている人たちを、ただただ尊敬します。そのいずれの世界に身を置いても、消耗がハンパじゃないというか・・。(例え何らかの才能に恵まれたと仮定しても)私なんかとてもとても息が続かない・・。
     
     

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  2. nakanokaori
    nakanokaori says:

    必ず「行ったり来たり」の揺り戻しが来るから、頑として同じことをやり続けていれば、そのうち時代の風が吹いてくるっていうことも、ありますしね(笑)。いずれにせよ、膨大なエネルギーの要ることだとは思いますが…。
    前掲書には、『キッチン・コンフィデンシャル』の著者アンソニー・ボーデインが、エル・ブジのシェフを「あの泡野郎」と切り捨てた、という記述が出てきます。でもそれを契機に、エル・ブジの影響力が拡大し始めたようです。「人為」「無作為」どちらの方向にしても、憎きアンチの存在があってこそ互いに刺激を受けつつ発展していくのかな、とも感じます。

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