移動の途中やネイルの間などにちょこちょこと見ていた「マッドメン」、シリーズ1を全部見終える。第4話あたりからペースがわかってきて、がぜん面白くなっていった。

ひとつひとつのエピソードのオチは、おとなで骨太で、しびれるばかり。とりわけ強烈に印象に残っているのが、第7話の「赤ら顔」で、ドンが、自分の妻に言い寄ろうとした上司のロジャーに対しておこなう、ささやかなリベンジ。ランチに大量のカキを大量のお酒とともに流し込み、エレベーターを「故障」させといて、23階まで階段を上らせる。顧問団の前によろよろとたどりついた上司のロジャーは、そこでカキを吐いてしまい、大恥をかく。最後にほんとうにさりげなく映るドンのにやりとした顔が、シブい。ドン自身も同じこと(カキ&酒&階段上り)をしていながらなんともない、という強さも同時に相手に見せつけた。マッチョなメンツをかけた「男のリベンジ」やなあ。

グレース・ケリー似のブロンド美女で、模範的な専業主婦のベティが、生活にどこか満たされないものを感じ、モデル業に復帰しようとするも結局望みを絶たれる、という話のオチの苦みもよかった。第9話の「射撃」。ドンはモデル業をあきらめた妻に、手をとって優しく言うのである。「家庭にいてくれる君は、最高の母親だ」みたいなことを。ベティも、専業主婦であることに何不自由のない幸せを感じているわ、と天使の微笑みでこたえる。次のシーン。「君は僕の天使だ」という脳天気な歌がのどかに流れるなか、ベティはたばこをくわえながら、空を飛ぶ鳥たちをばんばん狙い撃ちするのである。セリフなしでの、ベティの心象風景の描き方、うますぎる。

ドンの秘書が急激に太り始めていく理由が、ストレスによるものではなかったことが明らかとなる最後の話にも驚愕する。男はみんなオス、女もしたたかなメス、自分勝手な登場人物たちの濃い人間関係に、はまってしまった。「シーズン2」のボックスを即、注文する。

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