◇朝日新聞18日付、「著者に会いたい」、村上龍さんの巻。

「テレビの仕事で成功した経営者に話を聞く機会も多いけど、『成功しよう』『有利に生きよう』と思ってやってきた人はいない。なんとか生き残ろうと努力した結果の成功なんです」

サバイバルできれば、それが「成功」。生きのびることだけで精いっぱいであるなあと実感するような日々に、ちょっと力づけられる言葉であった(ほんとうの「成功者」さんとはレベルがぜんぜん違うが)。

◇行方昭夫先生編『モーム語録』(岩波現代文庫)。人生、人間、男女関係、芸術、旅、哲学などなど、テーマ別に、本質をついてときにシニカルなモームの名言が集められる。

「人生を送ってゆくに際しての最上の心構えとして、ユーモアのある諦め以外には考えられない」

(妻の不倫を面目にかかわるから絶対に許せぬといきまく大佐に、弁護士の助言)「人の噂も75日というだろう。人は他人の事など覚えていない。世間はじきに忘れるよ」「おれは忘れん!」「それはたいした問題じゃない」

「人間としてなかなか難しいことだが、自分が物事の中心でなく周辺に立っているのを自覚するのが大事だ」

「それ自体良いとか悪いとかいう行為はない。ただ社会の慣習次第でどっちにでもなる」

「礼儀正しさは愚者が自分の愚鈍を隠す外套である」

行方先生は、大学時代に徹底的に英語の読解の基礎を叩き込んでくださった恩師である。辞書を読め、前後の文脈から意味をとれ、という基本(なのに案外できないこと)をヘンリー・ジェイムズやモームを題材に、厳しく指導してくださった。脱落者も多かったが、サバイブしなくては、と必死だった。そのおかげで今かろうじて英語が読める。

教える立場になって思うのだが、学生にラクをさせるのは簡単である。学生の将来を思って厳しく指導するのは、ほんとうに誠意とエネルギーと使命感がないとできないことなのだ。恩師のありがたみは、年月を経てからいっそう身にしみる。

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