宮内淑子さんオーガナイズの「次世代産業ナビゲーターズフォーラム」に参加する。第121回になるこの日の講演は、外務省 官房長、木寺昌人さんによる「日本の外交力」。

日本は大きな国か、小さな国か?という問題にはじまり、日本の外交実施体制の実態、外交手段としてのODAの実績、当面の外交課題、普天間基地の移転問題、岡田外務大臣の外交の特色、などなど、案外メディアでは報じられていない日本の外交の生々しい実態を、具体的なエピソードを交えながらわかりやすくお話いただいた。全部記録しようとすると膨大な分量になるので、例によって、とりわけ強く印象に残った話を、以下ランダムにメモ。

☆日本は大きな国か、小さな国か? と聞かれると多くの日本人は「小さな国」と答えるだろう。だが、GDP(Gross Domestic Product)という経済指標を基準に見ると、日本は世界ランキングにおいて、アメリカに次ぐ第2位。近々中国に抜かれて3位になるとしても、ランキング19位のスイスのGDPは日本の10分の1、68位のルクセンブルグで100分の1、142位のルワンダでは1000分の1である。つまり世界の多くの国々から見れば、日本は経済大国。この内外のイメージギャップをますます拡大させているのが、日本人独特の「謙遜」の美徳。日本は自国を過小評価し続けている。世界のほとんどの国は、日本を大国として見ている、と認識すべき。

☆ODA(Official Development Assistance=政府開発援助)の実績。ODAとは、政府または政府の実施機関が、開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向上に役立つために行う資金・技術提供による協力のこと。

ODAはGNI(国民総所得)の0.7%を目標とする、という合意があるのだが、その背景には、途上国を支援することによって、テロの原因となるような経済的貧困を世界からなくし、紛争地域の状況を向上させていこうという考え方がある。

日本は軍事的援助はできないけれども、外交手段としてのODAで実績を上げている。たとえば、アフガニスタンでは学校やクリニック、道路などを多数つくるという「目に見える」援助をすることで、現地の人から感謝されている。アフリカでは、現地の人々の希望を聞き、人々と対話をしながら支援するという日本式支援を続け、好感をもって受け入れられている。実はこれは特殊なこと。たとえば中国が援助をおこなうと、援助が終わってもそこに中国人コミュニティが居残る・・・という現象が起きたりする。

↑このような「良い成果」を日本のマスメディアは報道しない。失敗のことは過大に宣伝するが、褒められるべき良い貢献をしても、まったく記事にならない(この問題に関しては、かつてこのフォーラムで講演してくださった、当時の財務省事務次官、杉本氏も同様のことを嘆いていた。メディアに携わる人間は、スキャンダルばっかりかぎまわってないで、同胞の善き行いやすばらしい成果をもっと誇り、褒めていいのではないか。それが結局めぐりめぐって自国、ひいては自分の利益になる)。

☆外交力は、現場に立つ個人の人間力でもある。現在の外務大臣、岡田克也氏は、まじめで曲ったことが大嫌い。正論を、ストレートに、しぶとく主張する粘り強さをもつ。頑として主張を曲げないことで仏外相や中国外交部長と対立したこともある(正しさをとことん貫く姿勢を保ち続ける岡田さんは、あっぱれ、と感心)。

☆中国が「核心的利益」という言葉を使ったら、要注意。誰も異論を言えないような雰囲気が流れる。

☆9月は内政と外交が連動する重要な月。2006年9月26日には安倍内閣発足、同日、国連総会で大島国連大使がスピーチ。2007年9月26日には福田内閣発足、28日には国連総会で高村外務大臣がスピーチ。2008年9月24日には麻生内閣発足、25日に国連総会で麻生総理スピーチ。2009年9月16日には鳩山内閣発足、24日には国連総会で鳩山総理スピーチ。そして今年の9月も・・・。

☆最近は、日本バッシングならぬ、日本パッシング(とばし)が感じられることさえあるが、その背景のひとつには、日本から世界へ向けての情報発信が少ないこともある。重要な国際会議に日本人が行かない。ハーバード大にもスタンフォード大にも日本人学生がいない(行きたがらない)。

締めくくりに、「外務省は眠らない」ということば。木寺さんの携帯も24時間オンとのことである。「外交」と聞くと、形式ばった抽象的なイメージしか浮かばないところもあったのだが、数多くの現場のエピソードを通してうっすらと感じたのは、外交の基本は、血が通い、感情をもつ人間が、同じ(だけれど違う文化を背負う)人間といかにコネクトしていくかという問題でもある、ということ。

世界の中の日本の位置付けを広い視点からあらためて考えさせられた、貴重な時間だった。感謝。

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