◇有吉弘行「お前なんかもう死んでいる」(双葉社)、移動中(往路)に読み終える。たぶん、ライターが聞き書きしたと思しきサブカル本。猿岩石時代の月収2千万から給料ゼロのどん底に落ち、地獄を7~8年味わったのち浮上してきた有吉氏の生々しい生活と意見。

太田プロの習慣、午後4時に明日の仕事を確認する電話を入れなくてはいけない(「ありません!」という返事だけをもらうために)、というエピソードが、とりわけ怖い。午後4時になると体が震えていた、とさらりと書かれているが、どれだけの仕打ちだ。

「自分を小者に見せて目立たないように生きろ!」「上昇志向なんて持たずに下を見て生きろ!」「潰れたときのダメージがデカいから夢とか希望とか持つな!」「『やりがい』や『自己実現』の基準なんて時給1250円だ!」「金は貯めるだけ貯めて残高見ながら死んでいけ!」などなど、限界越えのどん底を長期間経験した人ならではの教訓は、淡々とお笑いとして書いてあるけど笑えない。有吉氏のどん底状況に「明日の我が身」を見てもおかしくはない時代、真剣に自戒してしまう。

◇内田樹「街場のメディア論」(光文社新書)を復路に読む。読みながら泣けてきた。ここ数年、もやもやと感じていたことを、すっきり、ばっさり、凛と書いて、人間社会が本来あるべき方向へ光を当ててくれるような論。

キャリア教育における「自己診断」「適性検査」の弊害と愚かしさ。新奇と変化を追って無責任な定型文を繰り返すマスメディアの実害。理不尽なクレーマーの増加。医療と教育に、市場原理がもちこまれたことによる医療と教育の崩壊。殺伐とした方向へ暴走してしまった現代社会の諸事情の背景にあるものが、すべてつながっていく。骨太で、まっとうな知性に出会った思いがする。

自分の権利や要求ばかり通そうとする人が増え、危機的状況に陥っている現代人に必要なのは、疎遠になった世の中と親密な関係を切り結ぶための、「私は贈与を受けた」と感知する能力。この力強い原点提示に、はっとさせられる。

Sauve qui peut. 「生き延びられる者は生き延びよ」。 社会全体が生き延びるために必要な心構えを説く終章には、ほとんど宗教的な浄化を感じる。 

「一緒に革命できますか?」という学者の判断基準もいいなあと思う。「一緒に革命できると思えるような人」。最高の人物評価である。

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