「マッドメン」シーズン3のボックスを観はじめる。まずはDisc1からDisc3まで。第6話の「ガイ・マッケンドリック」の話が衝撃的だった。

ロンドン本社から重役が訪れ、社長を引き継ぐ予定の男が、パーティー最中の「おふざけ」による事故で足を失う。重役たちは「ゴルフもできない男に仕事はムリ」と冷たい。夫の昇進とともに寿退社予定だったジョーンが、まさかの昇進フイで夫から「仕事を続けろ」と命じられるが、寿退社を祝う同僚にはとても言えない。退社パーティーでの涙の意味を、同僚は知らない。

「絶好調のときに、思いもよらないことに足元をすくわれて転落する。それが人生だ」みたいなドンとジョーンのやりとりが、そのエピソードに対する「警句」として効く。

「営業のコツは、流れには逆らわず、獲物がきたら確実にとらえること」。ラインナップから外されたロジャーに対し、クーパーが淡々と言う。

ささやかなエピソードひとつひとつに、苦いオチと渋いセリフがさりげなくついてくる。

くだらないことにはかかわらない、というドン・ドレイパーの態度は相変わらずかっこいいし、男性も女性も60年代ファッションを堂々と着こなしている。

衣装デザイナー、ジェイニー・ブライアントのことばがBOXにつく小冊子に紹介されている。

(男性キャストの衣装のポイントを聞かれ)「Tシャツをとてもぴったりに、パンツをとても高めに着せるようにしているの。おへその高さでね。それにパンツに折り目がないのは、あの時代の大きなことだったの。足首のところのたるみはとてもきらいなの。すべての男性は、最初、シャツのえりがとてもきつすぎていやだったのよ」

ドン、ロジャー、クーパーはグレイスーツが多い。なのに、襟の大きさ、選ぶタイの趣味と結び方、ジャケットのシルエットの違い、ウエストコートの有無、チーフのあしらい方などの微差を重ねることによって、同じグレーでも、3人それぞれの個性の違いが際立っている。ファンデーション(下着)からみっちり構築されている女性服は言うに及ばず。社会的な場面における服の威力を考えさせてくれるドラマでもある。

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