「マッドメン」シーズン3、残りのディスクをすべて見終える。とりわけ第12話の「JFK暗殺」、第13話の「解雇通知」の、緊迫感と驚きの展開に深く嘆息。
「JFK暗殺」では、当時の映像がドラマのテレビの中で流れるなか、よりによってその日に結婚式を挙げるロジャーの娘の悲惨、ドンの秘密を知ってしまったベティの混乱はじめ、あらゆる登場人物の虚無や孤独や苦い後悔などなどが、あくまで控えめに、でも厳しく情け容赦なく描かれていく。社会的な大事件と個人の感情がぐるぐるとタイトにからみあって、大きな渦巻きになっていくような眩暈感。
「解雇通知」のスリリングであっと驚く急展開。会社がマネーゲームの対象になって翻弄されることに抵抗し、クーデターを起こすドンたちの、ここぞの結束にしびれる。ジョーンが「帰ってきた」場面で喝采したファンはさぞかし多かっただろう。まさかのベティの冷やかな離婚宣言にも凍りつく。「新しいパトロン」とともにいるベティが、決して笑顔ではなく、幸せそうではないことにもひっかかる。多くを失い、絶望のどん底に落ち、それでもふんばって、ささやかな新スタートを切るしかないキャラクターたちの淡々とした表情や後姿のショットに、ロイ・オービソンの「シャダローバ」が流れる。このラストがシブすぎる。
「シャダローバ(Shahdaroba)」は、夢が破れて心が叫びだしたいときにつぶやくことば。未来は過去よりもきっといい。「シャダローバ」は、途方にくれて絶望したときにつぶやくことば。きっといつか永遠の愛にめぐりあう。「シャダローバ」、運命が導いてくれる。
こんな感じの歌詞で、短調からスタートして長調がいい塩梅でまじりあっていく、セ・ラ・ヴィなメロディ。大人のリアリズムと哀愁が、深い余韻となって続く。
新会社はどうなるのか。シーズン4までお預け(アメリカではとっくに放映されているが)。
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