解熱剤が効いている合間に読んだので、冷静には読めてないとは思うが、現代にこそ必要な「礼法」や努力観が満載なのではないかと思わされたのが、三島由紀夫『若きサムライのために』(文春文庫)。文庫になる以前の本は、日本教文社から発行されているが、それは自決の一年前ぐらいのこと。それを知って読むとひときわ感慨深い。

野心家こそ作法を守れ、というのが三島の教え。「普段、作法を守っていればこそ、いったん酒が入って裸踊りのひとつもやってのけたときには、いかにも胸襟を開いたように思われて、相手の信用をかち得ることができる。普段からだらしがなくては、だらしがない姿を見せても人がツーともカーともこないであろう。そのためには男の威厳(ディグニティー)を保つ作法があり、初めてその裏に人間性の伸びやかさ、人間性の自然さが垣間見られて、そこで相手の信用を博し、同時に仕事の戦いも成功を収めるというわけである」

服装観にも、いかにも「らしい」記述あり。「服装は、強いられるところに喜びがあるのである。強制されるところに美があるのである。これを最も端的にあらわすのが、軍人の軍服であるが、それと同時にタキシードひとつでも、それを着なければならないということから着るというところに、まずその着方の巧拙、あるいは着こなしの上手下手があらわれる」

努力に関しての講和も、心の底から納得する。「一番つらいのは努力することそのことにあるのではない。ある能力を持った人間が、その能力を使わないように制限されることに、人間として一番不自然な苦しさ、つらさがあることを知らなければならない」

「人間の能力の百パーセントを出しているときに、むしろ、人間はいきいきとしているという、不思議な性格を持っている。しかし、その能力を削減されて、自分でできるよりも、ずっと低いことしかやらされないという拷問には、努力自体のつらさよりも、もっとおそろしいつらさがひそんでいる」

ちなみにこの本を発見したのも「アレな人」がうようよしているヴィレッジ・バンガード。くやしいけれど(というか、恥ずべきなのか?笑)、ある狭い一角にはツボにはまる本が固まっているのだ。でもほとんど狩りつくした感あり。この感覚の延長で、この一角だけ、さらに充実させてほしい。

2 返信
  1. たけい
    たけい says:

    お体大丈夫ですか?
    今年は、インフルエンザ当たり年
    だそうです。東京は、何日も雨が
    降らなくて、空気からからですもんね。
    先日、古書店で、中野さんの本発見
    して購入しました。
    ネットで簡単に探す時代でもコマメに
    足を使う方がなんか楽しい。
    でもインフルも怖い。
    お大事にしてください。

    返信
  2. kaori
    kaori says:

    >たけいさん
    ご心配いただき、ありがとうございます。
    高熱の峠は越したようです。
    やはりインフルの熱の痛みは
    きついですね。
    たけいさんも、くれぐれもお気を
    つけください。
    絶版本をお求めいただいたのでしょうか。
    ありがとうございます。
    古書店で本が売れても著者にはまったく
    印税は入らないのですが(笑)、
    関心をもっていただけて、うれしいです。
    古書店にかぎらず、書店って思わぬ
    出会いがあるのが楽しいですよね。
    意外な棚に想定外の作家の本があるとか。
    そういう演出をしてくれる本屋を
    ひいきにしています。

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