「ランナウェイズ」、3月の公開に先駆けて一足先に見る機会をいただく。1975年、ロサンゼルスが舞台。平均年齢16歳の、実在した「家出娘」ロックバンド、「ランナウェイズ」の物語。ヴォーカルのシェリー・カーリー役にあのダコタ・ファニング、リーダーのジョーン・ジェット役にクリステン・スチュワート。本物のジョーン・ジェットはこの映画ではエグゼクティブ・プロデューサーをつとめている。

70年代半ば、実は私も「チェリーボム!」目当てにランナウェイズのアルバムを買っていた。パワフルでキャッチーなヴォーカルは、ティーンエイジャーの模倣欲を誘うに十二分すぎるほど刺激的だった。

あの「チェリーボム!」誕生の背景にこんな物語があったとは。リーダーが、のちに「アイ・ラブ・ロックンロール」をヒットさせるあのジョーン・ジェットだったとは。ぽつりぽつりと散乱していた記憶の断片が、有機的につながっていく感慨。

幼さ残るミドルティーンの少女たちが、プロデューサーのキム・フォーリーに調教されるままセックスを売り物にし、ドラッグや睡眠薬や酒におぼれながら、舞台で挑発的にシャウトする姿はけっこう痛ましくもある。

ロックンロールも手放せないが、家族も捨てきれない。売るために一人「ぬけがけ」のセクシーフォトを撮られ、仲間からバッシングを受けねばならないばかりか、話題作りのために雑誌にひどい記事を書かれてしまう。そんなシェリーのずたずたの苦悩が、伝わってくる。あの名子役ちゃんダコタ・ファニング(彼女ももう15歳)が体当たりの演技。

女がロックをやるなどということがまだありえなかった70年代半ばに、叩かれても笑われても、粘り強くロック魂を貫いたジョーンの姿にも胸を打たれる。クリステン・スチュワートの気迫の演技。クリステンは当時の本人(ジョーン)にそっくりである。

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ランナウェイズを搾取してるだけなんではないかっ、と腹が立つほど強烈な印象を残すプロデューサーのキムが施す訓練のなかで、こりゃすごいなと感心した訓練。それが、「モノを投げつけたり野次を飛ばしたりする観客にめげずに演奏する」こと。観客はすべて敵、という前提からスタートするパフォーマンスだから、底力が違う。

そんなこんなの壮絶な物語を知ってから聴く(見る)「チェリーボム!」はやはり格別で(ユーチューブに感謝)、今、当時のステージを見ても、70年代色は濃く感じるものの、まったく古くなってない。

キム・フォーリーにしても、ジョーンにしても、シェリーにしても、「売るための覚悟と行動」が半端ではない。閉塞状況の中で打開策を見失っている多くの人にとっては、「逆風の中でここまでやる覚悟はあるか!?」と痛く一喝されるように感じるところもあるかもしれない。

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