◇「メンズプレシャス」2011 spring号発売です。特集「奥深き"御用達"名品の真実」において、扉の記事と英国王室御用達についてのエッセイ、2本を書いています。機会がありましたら、ご笑覧ください。

今号には、チャールズ皇太子・讃、の記事が目立つ。政治的にはともかく、メンズファッション業界では絶大な人気を誇る人であること、再認識。

◇4月末のケイト&ウィリアムご成婚にあわせた記事を7本書く。一冊の雑誌でこれだけの数を書いたのは初めてのこと。志なかばで人生を断たれたり、仕事をしたくてもできない、つらい状況におかれている人々のことを思うと、「ムリ」なんてぜったい言えるわけがない。被災者の方々に励まされてできたような仕事だった。おまえが励まされてどうするっ!てもんだけど、ほんとうにそんな思い。

日本のシビアな現実とはかけ離れた世界の話だが、たとえば避難所で雑誌を広げた時に、心の滋養になったり、少し士気が高まったりするような記事になるようにと、祈りをこめて書く。編集者もみな同じ思いである。

◇そうこうするうちに、1号機が水素爆発の危機にあるらしいことが報じられる。政府は被爆量の上限を引き上げるとか、不条理なことばかり言っている。与党も野党もこの危機にあってせこいプライドだかなんだかしらないが、大連立するのしないの、駆け引きみたいなことに奔走している。未来を描けない福島の人の悲痛な叫びが聞こえてくる。リーダーのことばがどこからも聞こえてこない。というよりリーダーの顔も見えない。世界中で日本レストランの多くが倒産の危機に追い込まれているというニュースが届く。

こういう「有事」において、外界の現実とどうやって心の中で折り合いをつけて仕事をしていくのがいいのか、日々、考える。納得のいく答えなんか出ないだろうが、少なくとも、同じ状況を生きる読者の心の中の反応というのを、以前よりも長時間、考えるようになった。てんでばらばらの現実を生きる読者の関心事が多岐にわたっていた以前は、「あとは受け取る人まかせ」にしていた部分もあったが(それはそれで信頼のつもりで)、今は多くの読者が同じ苛酷な現実を共有している(共有部分の大小はあるかもしれないが)。そこに届くことばを見つけることが、私などが仕事をする領域で果たして可能なのかどうか。重苦しい現実と、美しい虚飾の世界を、手探りで行きつ戻りつ。

◇昨日の森川先生のツイートからつらつら考え、今さらながらはっきりとわかったこと。カワイイ礼賛・美魔女志向・アニメとマンガに対する過度な崇拝っていう3・11前の日本のカルチュアと、大人の責任がとれるリーダー不在という現実は、地続きである。それでもなお、幼稚なカルチュアを「クールジャパン」とかいってもてはやすのか。大人はちゃんと成熟して、大人の責任をとれ。

1 返信
  1. 住吉せんり
    住吉せんり says:

    メンズプレシャス 2011 Springを読みました。
    久しぶりに気分が晴れるというか、高揚する感じ。
    確かに、高級ファッション誌を眺めることによる非日常感には(ショック療法ではないが)ある種の麻酔作用があるように思う。
    英国王室御用達のブランドなどと言う途方もない(と思える)世界を見せられたとき、彼ら(彼女ら)が、果たして元気を取り戻すきっかけになるかは、まさに「希望的観測」であろう。
    ただ、今後の日本のものづくりを展望するにあたり、同じ島国にあって同じ成功を期待するのは、あながち的外れではないとも思う。
    「奥州」のブランド化は、かの地の復興にあたり一考に価すると思うし、例えば工業製品におけるデザイン付加価値に「皇室御用達」を導入することは、作り手にとってもまさに「希望」を与えることになろう。
    今、日本にいる大人の中で唯一ちゃんと「日本」を考えておられるのは、我々の象徴の方達だけではないだろうか。

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