◇韓国映画「息もできない」DVDで。ヤン・イクチェンが製作、監督、脚本、編集、主演をこなしたという、彼の強い意気込みが伝わってくる力作。

暴力でしか自分を表現できない底辺のちんぴらが、家庭内暴力で行き場のない苦しみをかかえている勝気な女子高校生と出会って、淡い恋のような、友情のような同志のような、心の絆を結ぶ。足を洗おうとしたその日に悲劇が起きる。暴力シーンが多く、観ているのが痛ましくつらかったシーンも多かったが、全編に、どうしようもない哀しみを抱える、愛に飢えて救われたい、不器用な人の魂の叫びがあふれている。ちんぴらの最期には、それこそ「息もできない」感情に襲われる。

韓国映画の底力と層の厚さに、あらためて感じ入る。

◇中国の「端麗服飾美容」の連載原稿を書く。今月のテーマは「マリン」。津波の恐怖もなまなましい今、ファッショントレンドのマリンを語らなければいけないというミッションに際して、いかなる態度で書くべきか?とかなり長い時間かけて自問してしまう。

「それはそれ、これはこれ」としてまったく現実を切り離して、ファンタジーとしてのマリンを解説するのが、もちろん、「ファッション誌」(しかも海外の)には似つかわしいのかもしれない。でもどうにもこうにもウソくさい。苦渋の末、マリンにつきもののボーダー(縞模様)が、中世では「混乱を警戒し、秩序を再建するための柄」であったことを引き合いに出し、かろうじて現実との折り合いをつける。純粋にマリンファッションをうきうきと楽しみたいと思っていた中国の読者の皆様には、場違いな重たい記事になったかも。ご寛恕ください。

こういう場合、たとえ自分がウソくさいと感じても、ファンタジーに徹底するのがよかったのか。それとも、現実との関連のなかで心底納得できたことを書くのがいいのか。どっちがプロとして「誠実」な態度なのか。読者サービスを考えたら、前者だろうな、と若干うしろめたい思いをしつつ。

◇米軍のOperation Tomodachi に対する日本からの御礼、Operation Arigato。仙台の青年が、砂浜に木材でARIGATOと。海兵隊はそれを上空から見て「黙々と頑張っているのは日本の人々。礼には及ばぬ」と。ARIGATOを書いた青年が、その行動に至るまでの舞台裏をミクシーの日記に詳しく書いている。ありがとうを伝えようとする青年の行動力、こたえてくれた海兵隊。じーんとくる。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1700339052&owner_id=29157455

2 返信
  1. 宮内瑞恵
    宮内瑞恵 says:

    いつも拝見させていただいております。
    私たちの日常に、現実に、重たい出来事が起こったのですから文調に滲んでしまうのは仕方ないと思います。
    本当の自分をごまかす事がファンタジーの役割だなんて、哀しいことのような気がしますが、甘いでしょうか。
    私は「中野香織」のファンです。先生の美しい文章に、とても惹かれます。どんな題材を書いていても、興味をひかれるし楽しませて頂いております。
    無料で読んでいいのかと思うほどです(笑)ありがとうございます。
    コメントさせて頂いたのは、一つお願いがあるからです。
    ブログのバックデザインを変更する御予定はないのでしょうか?
    黒バックはシックで素敵なのですが、プレビューを開くたびに、最近は暗く重く感じてしまうのです。
    せっかく春になったのですし…
    長々と、勝手なことをすみませんでした。

    返信
  2. kaori
    kaori says:

    >宮内瑞恵さま
    あたたかいお言葉、痛み入ります。
    デザインのこと、ご指摘ありがとうございました。たしかにもう3年ほど経っているし、そろそろ変えなくてはなりませんね。
    デザインをお願いしているところに、相談してみます。しばらく時間がかかるかもしれませんが、変える方向で動きます。
    ご意見いただき、嬉しく思いました。
    ありがとうございました。

    返信

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