芦田淳『人通りの少ない道』(日本経済新聞出版社)。日経新聞連載の「私の履歴書」の書籍化。こうしてまとまったものを通読すると、一人のデザイナーの立志伝が、波乱万丈の「物語」として読める。

戦後の焼け野原のなか、家族の猛烈な反対(デザイン画を燃やされる!)を押し切り、コネもなにもないマイナス状況のなかで、「デザイナーになろう!」と志を立てる。それからはまっしぐらに行動あるのみ。中原惇一に強引に弟子入りするきっかけを作るくだりなど、映画を見ているよう。奥様の友子さんも、当時の婚約者から「略奪」(!)。このエピソードは昨年の金婚式のときにも披露されていたが、あらためて活字で読むと、なんともドラマチックである。

「男のくせに女の服をつくるとは」という偏見まるだしの建築業者たちと酒の飲み比べをしたあげく、彼らを味方につけるエピソードも楽しい。「男がファッションデザイナーなんて」という偏見がいま以上に強かった時代だと思うが、こちらが心をストレートに真摯に開けば、偏見など案外、あっさりと覆るものであることなど、随所に「学びのツボ」もあり。

美に対しては徹頭徹尾、繊細な神経を行き渡らせている芦田先生だが、こうして半生記を通読してみると、行動はかなり大胆でマッチョである。その両輪がバランスよく働いてこそ成功に結びつけられたのであろうなあ、と感じ入る。

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