野地秩嘉『一流たちの修業時代』(光文社新書)。会社創業者、アーティスト、職人、営業マンなど、15人の一流の人たちが登場。今は輝かしい成功者として名高い彼らが、「修業時代」にいかに考えて行動したのか?を語る。 仕事の合間に一人か二人分ずつ読むつもりが、あまりにも面白くて全部読み終えてしまう。なんだかもったいないことをしてしまったような気分。

創業者のなかでは、CoCo壱番屋の宗次徳二さんに圧倒される。孤児で、養父母に引き取られるも貧乏のどん底で苦労がたえない。そこから会社を創業、一部上場まで育てあげるのだ。

ユニクロの柳井社長のことば。「しないうちからあきらめるな。だって、若い人って、まだ何もしていないんでしょう。あきらめることなんかない。まだ、何にも始まっていないんですよ、あなた方は」。

クレイジーケンバンドの横山剣は昔からのファンなので、デビューまでの物語は知っているつもりではあったが、やはりインタビュアーが違うと、知らなかった話や言葉がでてくる。「人間、どうせいつかは死にます。どんどん妄想して、勘違いして、やれるうちに何でもやったほうがいい」。

日本画家の千住博による、「世に出るとは」。

「世に出るとは、打たれても打たれても舞台に立ち続けること。厳しい批評にさらされても、描くことを放棄せず、じっと耐えて、また絵に向かい合う。人はあまりに打たれ続けると、打たれることがつらくなってしまい、褒めてくれる人を探すようになります。そうして自分で小さな舞台を作り、自分を理解してくれる少数の人の前だけで作品を発表するようになる。でも、それは、本当の芸術行為ではない」。

続いて、芸術の定義。「本当の芸術とは、わかってくれない人たちを美の力で引き寄せる、あるいは説得することです。つまり、わかりあえない人とわかりあうための手段が芸術なんです」。

そういう芸術家にとって、「修行が終わりということはない」と。

ここのところ、毎夜、地震で起こされる。3~4夜連続。下から突き上げるようなブキミな揺れ。地震雲や赤黒い空やミミズやカラスやモグラやイオン濃度の異常を「前兆」視する声もあちこちで聞こえる。いつ死ぬかわからない漠然とした恐怖がひたひたと現実味を帯びてきている感じ。でも、とりあえず生きている間はビクビクしてもしょうがない。ビクビクしている時間がもったいない、生きている短いうちに、妄想でも勘違いでも、やれることはやれるだけやっとこう、という気持ちにさせてくれた本だった。

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