映画館で見逃していた「イヴ・サンローラン」、DVDで。

サンローランの物語、というよりも、亡きイブを回顧する、50年間にわたるパートナー、ピエール・ベルジェによる、サンローランとの日々の回想録といった趣きのドキュメンタリー。

静かに、ほんとうに静かに淡々と、ピエールが語っていくサンローランとの日々。その抑制のかげに隠れた大きすぎる愛の物語に畏敬の念をおぼえるし、彼らを国家的に敬い、認め、愛するフランスという国のすばらしさにナミダする。

冒頭の、サンローランによる引退会見の言葉からして心をかきみだされずに聞いてられない。

「人は生きるため、とらえがたい<美>を必要とします。私はそれを追い求め、苦しみました。苦悩にさいなまれ、地獄をさまよいました。精神安定剤、麻薬、神経症、厚生施設…。でも私は、<創造の天国>に昇ることができたのです。(中略)人生でもっとも大切な出会いは、自分自身と出会うことです。(中略)心から愛したこの職業に、別れを告げます」

華やかな名声にいろどられているかに見えるサンローランだが、実は幸せそうな顔をしていたのは、年にただ2回、コレクションの最後に登場して喝采を受けるときだけだった、というピエールの告白。

あとの日々は、創造のための苦しみばかりだった。

それを支え続けたピエール。こういうパートナーに出会えたことこそが、サンローランにとっての最大の幸福だったのだなあ…としみじみ思う。

クリスティーズのオークションにかけられる、ふたりが愛した美術品たち。ピエールの心中を想像するだけで耐え難いものがあった。

サンローランの映画、というよりもむしろ、静かに語られる、一つの比類なく美しいラブスト―リー。

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