今日は三島由紀夫が市ヶ谷で割腹した日。45歳だった。この人にはかなりの影響を受けている。逆説を用いながら真実をつくウィットがたまらなく好きで、少しでもその頭の中のレベルに近づきたいと憧れている永遠の師でもある。

小説もいいが、何度も読み返しているのは、エッセイのほう。とりわけ「不道徳教育講座」はどっかの細胞の一部になっているかもしれない(笑)。「流行に従うべし」という項目の次のくだりなどは、小気味よくてかっこいいばかりか、真実をついている。

「流行は無邪気なほどよく、『考えない』流行ほど本当の流行なのです。白痴的、痴呆的流行ほど、あとになって、その時代の、美しい色彩となって残るのである」

「一般的に浅薄さはすぐすたれ、軽佻浮薄はすぐ凋む。流行というものは、うすっぺらだからこそ普及し、うすっぺらだからこそすぐ消えてしまう。それはたしかにそうだ。しかし一度すたれてしまったのちに、思い出の中に美しく残るのは、むしろ浅薄な事物であります。(中略)しゃっちょこばったものや重厚なものは、一見流行ほどはやりすたりがないようにみえるが、本当のところは、流行より短命なのかもしれない。浅薄な流行は、一度すばやく死んだのちに、今度は別の姿でよみがえる。軽佻浮薄というものには、何かふしぎな、猫のような生命力があるのです」

「人の不幸を喜ぶべし」とか「空お世辞を並べるべし」「死後に悪口を言うべし」「人の失敗を笑うべし」などなど、一見、「不道徳」な項目ばかりが並んでいるのだけれど、すべて偽善の虚をついて、ピリッと楽観的に人間の真実をさらけ出して見せてくれる。フィールグッドな言葉ばかりが流通する現代じゃあ、これをそのままうけとって、まじめに「けしからん」とかいう人もいるのかな。お手軽な自己啓発本や名言集みたいのばっかり店頭に並ぶ現代の「軽佻浮薄な流行」を、三島だったら何と言ってからかうだろうか…。

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