明治大学創立130周年記念国際シンポジウムのひとつ、「ファッション・ビジネス教育の世界展開」が昨日、大盛況のうちに終了。

コシノジュンコさん、シャネルジャパン社長リシャール・コラスさんの特別講演に続き、各国の教授陣からのプレゼンテーション。UKからはインペリアル・カレッジ、ビジネススクールのネルソン・フィリップ教授。フランスからはモダルト・インターナショナルスクール学院の校長、パトリス・ド・プラース氏。同じくフランスからパリ商業高等大学マネジメント学部のクレッツ博士。中国からは東華大学服装・芸術設計学院の楊以雄教授。そしてオーストラリアからはクイーンズランド工科大学のケイ・マクマホン先生。

4時間半近くに及ぶシンポジウムは内容がぎっしりで多彩、ファッションビジネス教育の現状と展望が、ぼんやりとながら理解できた。そのなかで、自分のような、ビジネス色の薄い立場から(カルチュア、ヒストリー、ジャーナリズムという観点から)ファッションにアプローチするとはどういうことなのか、あらためて考えさせられる。

・コシノジュンコさんの講演は、「対極の美のバランス」。

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神がつくったものは丸く、人間が考え出したものは四角い、という指摘。つまり、地球、月、妊婦のおなか、波紋、らせんなどの自然界にあるものは丸くて、建築などに見られるような無駄なく合理的に計算されたものはどうしても四角くなる。昼と夜、オンとオフ、陽と陰、右と左、重い扉とのれん、赤と黒、未来と過去、楽譜と手習い、現実と非現実、などなど、あらゆる「対極」にあるものを、逆らわずに融合させていくことが大切、というお話。

・リシャール・コラスさん。流暢な日本語で、ジョークをとばしながら、シャネル・ブランドについての熱いお話。ファストファッションが流行する現代だが、「Fast Fashion はFast Fading Fashion でもある。トゥエンティワンはフォーエヴァーではなく、トゥエンティトゥーにはもう存在しない」とジョークで笑わせ、シャネルのスロウ・ファッションの戦略について語る。

スロウで変わらない、と見えても実は時代に応じて微妙に変わっている。消費者にはわからないように。たとえば香水No.5のボトル。50年代にはアメ車やハリウッドスターの影響を反映し、少し太めに。60年代にはイタリアンデザインを意識して少しスリムに。でも消費者には永遠に変わらぬNo.5のボトルに見えるように。

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現在もなお、ココ・シャネルの価値観からはずれるようなことは、決しておこなっていない。彼女の価値観とは、Discipline(規律、礼儀正しさ), Rigueur(厳格さ), Austerite(わび・さび), Simplicite(シンプルさ), Liberte(自由)。そしてビジネスにおいては、「新しいことだけをする」こと。

職人をリスペクトする、というシャネル社の姿勢が一貫していることにも心を打たれる。銀座のシャネル社のビルには、建築に加わったすべての職人の名前が刻まれている。10年後、彼らがこのビルの前を通った時に、自分の子供に「これがお父さんが造ったビルだよ」と教えられるように。

上場しない。十分なキャッシュフローをもつ。ということも、やりたいビジネスを貫くためのポイントとして守り続けている。

一流の人は、ジャンルを超えてあらゆる仕事に通じる話ができる。それを実感した講演でもあった。

2 返信
  1. snoozer
    snoozer says:

    中野様
    素晴らしいカリキュラムですね、ファッションはカルチャー(美術、文学思想、音楽など)や歴史・社会学的アプローチ、ビジネス、スタイリングなどと多様な切り口で語ることができるところが面白いと思います。このような学際的なアプローチもファッションの魅力に迫るものですね

    返信
  2. kaori
    kaori says:

    >snoozerさま
    ありがとうございます。
    今後の「ファッション」は、ビジネスは当然のことながら、人文・社会学的な研究においても、ほかのあらゆる側面においても、グローバルに考えて発信し行動することがふつうに前提となってくる…ということをあらためて知らされて、ちょっと気が遠くなってくるというか冒険心がわいてくるというか(笑)。
    日本では、まさにこれから、大学でのファッション(ビジネス)教育が本格的に始動するんだと思うと、なんだかワクワクしてきます。

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