久々に、脳内にアドレナリンのシャワーが噴出してくるような衝撃を与えてくれた小説だった。樋口毅宏『さらば雑司ヶ谷』(新潮文庫)。ちょこっと読み始めたら止まらなくなり一気にラストまで。「小説界のタランティーノ現る!!」の帯のコピーは、まちがっていない。

なまじ半端な説明をしてしまうと感動がすべて逃げてしまうような気がするので避けるけれど。「キル・ビル」とか「パルプ・フィクション」、および「キックアス」風の荒唐無稽なオタク世界すれすれのスタイリッシュなヴァイオレンス&不条理な笑い&地獄を突き抜けた後に訪れる予想外のカタルシスというかエクスタシー、に満ちた世界が好きな人は、ハマるだろう。

物語の構成や登場人物のキャラクターや背景の設定なども呆然としてしまうほどばかばかしくマニアックだが、文体も好き。ピリッと渋く、オリジナルで、的確な描写。とりわけ、主人公(男)が「敵」であるはずの閣鉄心に犯され、服従させられていくシーンの描写のぞくぞくするような表現ときたら。

「心が肉体をコントロールするのは難しいが、肉体は心をいくらでも矯正し、支配できる。誓っていいが、俺はそれまで男色の毛は髪の先一本とてなかった。しかし、喉が枯れるまで唱えさせられた呪詛は肉の悦びに拍車をかけ、言霊となって俺自身に憑依すると、復讐の炎はやがて情炎に転化し、閣鉄心の肉の虜になるまで、時間はたいして必要としなかった」。

吹き出してしまったところも多々あるが、たとえばこんな箇所。

「映画『グッドフェローズ』で、挑発してきたガキに逆上してジョー・ペシが撃ち殺したり、『パルプ・フィクション』でジョン・トラボルタが誤ってチンピラの頭をぶっ放した後、ミスター・クリーンを呼ぶまでの苦心惨憺ぶりを思い起こしてみろ。奴らはそれぞれ仲間から轟々たる非難を受ける。それは『人の命を粗末に扱うな』といった道徳的観点からではなく、『死体の後始末はどうするんだ』という怒りからだ」。

久々に「すごいものを読ませていただきました…」の興奮が残っているうちに、続編はじめ、樋口作品全作品、注文してみた。

勧めてくれたのは「ル・パラン」マスター。観るべき映画とか、読んどくべき本とか、聴いておくべき音楽とか、アディクト系に関してはハズさずに教えてくれるバトラーというかコンシェルジェみたいな人だ。

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