400ページ超えの長編だったけど、移動時間に読み始めたら止まらなくなり、結局、一気読みしてしまった。樋口毅宏『雑司ヶ谷R.I.P』(新潮社)。

「ゴッドファーザーPartII」を思わせる話。一家皆殺しをかろうじて生き残った少女、泰が、巨大新興宗教組織の神となっていく過程と、その跡継ぎとなった太郎の今の物語とが、交錯しながら語られる。たくさんの人物が登場するが、それぞれのキャラクターや人物同士の相関関係が尋常ではなく突き抜けていて、「えーっ?!」の連続。お笑い交じり、現代ニッポンに対する風刺交じりの、アナーキーで暴力的なエンターテイメント。

とりわけ描写力に笑いが止まらなかったのが、石田吉蔵最強伝説。ターミネーターのような最強ぶりを見せるエピソードが、これでもかというくらい延々と繰り出され、それがいちいちバカバカしいくらいにド派手。人間を超えてる、恐竜すら超えてる、全生命体の頂点に立つ吉蔵。ワル乗りしすぎなくらいの映像化不可能な描写を、作者が楽しんでいるのがわかる。

「それでも政府が吉蔵を生かしておくのは、対北朝鮮と中国、ソ連に対する切り札にしているからだと。建て前上、核を持たない日本が抑止力として保持しているのだと」

核兵器に匹敵する抑止力、とたとえられるほど強い吉蔵。うそくささマックスなのに、不思議と描写に愛嬌があって、面白すぎ。

人はガンガン殺し、建物は派手に壊し、最後は全て崩壊する。そこにゴッドファーザーのような孤独な哀しみが少し。宗教に入れあげる人間の弱さや、そこにつけこんで「神」となっていくための「秘訣」も、アイロニーをこめて描かれて痛快。タイトルにしたセリフも、その「秘訣」のひとつ。神はあまり親近感を与えちゃだめなのよね。秋元康やNIGOや村上隆(名指しではないけれど、明らかにわかる)を揶揄するところも、ブラックすれすれでくすくす笑い。関東大震災・戦前・戦中・戦後の日本社会のリアルな描写に交じってB級なオタクネタも満載。

「冷たい熱帯魚」「キル・ビル」ワールドOKの方にはいいけれど、高尚で品よい世界を好む人には勧めません。

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