今なお残る英国貴族の城館ガイド。写真たっぷりの眼福本です。『図説 英国貴族の城館』(河出書房新社 ふくろうの本)。

玄関ホールからすぐに眼に入るゴージャスな階段。なんでわざわざややこしい螺旋にしたのか?と思ったことがあったが。あれは晩餐会や舞踏会の進行にハイライトを与える機能があった、と知って納得。

廊下と呼ぶには華麗すぎるロングギャラリー。あれは部屋と部屋をつなぐ廊下ではなく、一個の独立した部屋だったとのこと。英国の冬は長く寒く湿度も高い。それで、運動不足とイライラ解消のため、巨大廊下のような部屋が、屋内運動場として機能していたそうである。また、紳士淑女が衣装や装身具を競い合う社交場でもあった。ファッションショーの舞台、当時のランウェイというわけですね。

もうひとつ、写真本。同じシリーズから出ている田中亮三さんの本。『図説 英国貴族の暮らし』。

上の本と重複するところもあるが、貴族の生活(階上と、召使たちが住む階下)をめぐる不思議についての疑問がいくつか解消された本。

面白かった小話が、クラブをめぐる話。ジェントルマンズ・クラブは表札も看板も出ていない。で、第一次世界大戦前夜、初老の男性たちが毎夜楽しそうに正体不明の家に出入りしているのを見た警官が「売春宿に違いない」と思った。ある晩、捜査に踏み込むと、テーブルで談笑していた4人の男は大法官とカンタベリー大司教とイングランド銀行総裁と内閣総理大臣だったという話。

文学のなかにでてくる、あれやこれやのカントリーハウスのリアルな写真が見られることがとにかくうれしかった2冊。

でもこうした世界はすでに「ファンタジー」の領域ですね。

とはいえ、今でも階級意識は残り、「共通の発音で話し、共通の生活環境に暮らすほんのひと握りの上流階級は『みんなが知り合い』(Everybody knows everybody)という関係にあるようです」(『英国貴族の城館』)。これは階級がないはずの国の<上流階級>でも同じですね。ゴシップガールの世界とか。

2 返信
  1. 松尾明日香
    松尾明日香 says:

    いつも楽しく拝見させて頂いております!
    大学時代英米文学を専攻しておりましたが、仕事を始めてからはその世界からだいぶ遠のいてしまっておりました。中野さんのブログを拝見してまた古い本を探して読み返したくなりました[E:happy01]

    返信
  2. kaori
    kaori says:

    >松尾明日香さま
    ありがとうございます。
    あたたかいお言葉、励みになります。
    モームとかシェイクスピアとか、人間の真実をしっかり描いてるので、今読んでも全然古くなってないですよね。テクノロジーは「進化」しても、あんまり人間の心の中って変わんないだ…と気づかされます。

    返信

返信を残す

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です