…というわけで、植島啓司先生×鷲田清一先生のクロストーク「男が男でいる理由」。

お二人は旧知の仲良し、さらに対談は数回目ということで、とてもリラックスした信頼感がベースにあるからこそ出てくるギャグがかなり面白く、知的で笑いに満ちた90分でした。

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話題は今どきのジェンダーのことにとどまらず、多岐にわたり、テーマから大きく外れることもあったのですが、その外れたところに逆に面白さが見つかる、みたいな。すべて論理的にご紹介することなど到底むりで、以下は、とくに面白かったことばの、ランダムな個人的備忘録程度のメモです。

・80年代以降、女性賛歌はおおっぴらにあったけれど、男性論はあまり論じられてこなかった。先日、たった2日間でセリフをおぼえ、代役をつとめた宮沢りえが「どうしてそんなことができたのか?」と聞かれて「男気よ」と答えた。女の「男気」がかっこいいものとしてもてはやされる時代において、男が男でいる理由は?かんじんの男の声が聞こえてこない。

・ハンフリー・ボガート的やせがまんから、ジュリーの弱さを含みこんだかっこよさへ。「男は黙ってサッポロビール」の時代とは違ってしまった。

・居所不明、正体不明が男の魅力。つかまえにくいほどステイタスが上がる。とりわけ情報過多の時代、ガラス張りの時代において、絶対につかまらないほうが、ステイタスが上。

(これには私も同感。フェイスブックでひっきりなしに「チェックイン」して自分の居所を知らせている「かまってくん」ほど、セクシーから遠い男はない)

・ディドロが「ダランベールの夢」のなかで書いていること。「男が女の奇形なら、女は男の奇形である」。たぶん、ダンディとは、女の奇形としての男、である。

(この定義に出会えたことは、今回の最大の収穫でした)

・liberalと handsomeは重なる部分がある。ともに、「寛大、気前がいい、ものおしみしない」という意味をもつ。キップがいい、執着しないのが、かっこよさのひとつではないか。実際、ケチかそうではないかというのは、人を判断するときの判断材料になる。

・ヨウジヤマモトの引用がいくつか。「男はいつも決まった!というときに、おかしい、という感覚を同時にもちあわせているのがいい」

(これも大賛成。SNSで何の疑問もいだかず自分の「決まった」コーディネイト自慢している男のはずかしさときたら)

「男はA級とB級をともに知っているのがいい」

・男は、断片が全体になりうる。フェティッシュ、覗き見、露出趣味というのは、男に特有に見られる現象。身体→口紅とか靴といった断片→二次元、にいけるのが男。断片に喜べる能力がある、といいかえてもいい。

・色気とは。「誘えば落ちると思わせることよ」という美輪さんの定義がたぶん最強。粋というのもコケットリーのひとつ。

・密着、執着はかっこわるい。一体になりたいけれどそうしちゃったらかっこ悪い、みっともないと考えることに色気は宿る。本気になってなびいてきたら、さっとかわすのがかっこいい。それが「やせがまん」なんだけど、色気に通じる。これがなければ、ただの色情狂。その気になりきって、がんばってるのは、美しくない。

・学問のことばと、「総長」としてのことばは、扱われ方が違っていて楽しくない。会話って、つむいでいくこと。相手が気づいていないことに対して、ボールを入れ、それが自分にも返ってくる楽しみ。どこまで本気なのかわからないことまで口に出せること、これは楽しみである。

・どこまでが人の「顔」なのか? たとえば高倉健は背中が「顔」になりうる。身分証明書になりうる。女王は横顔で描かれてきた。人の存在を、正面から見た顔で表すようになったのは、実は最近のこと?人の存在には、もっと広がりがあるはずである。手、全身、その人の服、持ち物…。

・子どもの感性=男の感性。

・イメージの不安定さが色気につながる。イメージの不安定さをポジティブに評価したい。

・男はいま、女に強さを求めている。女性に、自分を支えてくれる強さを求めている。アニメなどにおいても、圧倒的に強い一人の女がリーダーで、彼女に男たちが憧れ、男たちが知恵を出し合って彼女を助けていく、という物語が増えている。

・老いの風格とは、軽くなること。

・人間の発情には、イリュージョンが入るのが特徴。イリュージョンなしに、恋は始まらない。

…などなど、書きことばにしてしまうと「意味がお役所的に固まって」しまう感じがするのがどうにもいやなのですがが、仲のいい二人のゆるゆるな雰囲気の中に、男の不安定さが、学問のことば(ことば遊びといってもいい)において「よきもの」として肯定された(と思うのですが^_^;)、楽しいひとときでした。

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会場はこのように熱心な聴衆で大盛況!写真は、ブランメル倶楽部の河合さん撮影。今回のイベントを企画・実現してくださったファッション美術館のモモさん、ブランメル倶楽部の河合さん、そして美術館まで送迎してくださったFB友のキノシタさん、ほんとうにありがとうございました。

ほかにも、書ききれませんが、たくさん考えさせられたことがあります。また追って、活字エッセイその他でご紹介できればと思っています。植島先生、鷲田先生、インスピレーションに満ちた楽しいクロストークでした、ありがとうございました。

*重ねての注意書きになりますが、これはあくまでも私の個人的なメモであって、トークの内容を全て記録した公文書ではありません。クロストークを書き言葉にし、しかもそれを断片だけとって解釈すると、まったく語り手の意図とは異なってしまう場合があります。お二人の言葉は、「総長の言葉」の対極にある、学問の言葉。単一の結論をめざすわけではなく、行動をアジるわけでもない、真実の周辺をめぐる語りの過程そのものに幸福がある、学問のことばです。この場、この文脈、この聴衆あっての、知的な言葉遊び、としてゆるくご笑覧いただければ幸いです。「男は女の奇形」という言葉尻だけ断片的にとりあげて不快を表明していらした方がいたので、くどいですが、念を押させていただきました。

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