エリザベス朝の文化をレクチャーするときに、必ず使う映画がShakespeare in Love. 「ロミオとジュリエット」創作秘話、という設定のもと、ひとりの男としてのシェイクスピアと、女性が舞台に立てなかった時代の芝居好きの女、ヴァイオラの恋物語が軸になる。そこにエリザベス女王やら当時の芝居関係者やらがからんで、虚実いりまじったダイナミックな物語が幾層にも語られる。最後はロミオとジュリエットまるごと楽しめる。何度見ても新しい発見がある傑作。情熱ほとばしるばかりか、ウィットと歴史ネタ満載の知的なエンターテイメント。

ラストシーンがまた、すばらしいのですね。恋にピリオドを打たざるを得なかったヴァイオラが、いやいやながら結婚した夫とともに、新大陸へ旅立つ。でも船は難破し、すべてが海の底に沈むのだけれど、ヴァイオラはただひとり、生還し、新しい陸地を歩き出す。そしてそこから「十二夜」の物語が始まる…という設定。実際にシェイクスピアが書いた「十二夜」の物語に続いていくわけです。シェイクスピアが語るラストラインがこれ。

My story starts at sea… a perilous voyage to an unknown land… a shipwreck… The wild waters roar and heave… The brave vessel is dashed all to pieces, and all the helpless souls within her drowned… all save one… a lady… whose soul is greater than the ocean… and her spirit stronger than the sea’s embrace… Not for her a watery end, but a new life beginning on a stranger shore. It will be a love story… for she will be my heroine for all time. And her name will be… Viola.

語られる間、映像は海の中の光景を映し出している。すべてが壊れて沈んでいく、そのなかを、ヴァイオラだけが、浮上する。そしてだれもいない陸地を、ひとりで歩き出す。悲しい映像のはずなんだけど、音楽は静かな希望に満ちて、なにか完璧な運命というか予定調和を感じさせる、何度見てもすがすがしく、深い感動を与えてくれるラストシーン。

終わりは、始まり。

なのですね。

そんな、終わりと始まりをあわせのむ海の光景をあらためて見ていたら、「コート・ダムール」の香りを思い出した。先日、ラルチザンパフューム表参道店で、プレスの青木さんに「海へお誘いしましょう」(笑)と紹介していただいた香りのひとつ。アナナス・フィズは、まぶしい太陽が照り付ける海のイメージで、ひと夏の情熱をかきたてるような、はじける陽気さにあふれる香り。そしてコート・ダムールは、海岸で起こりうるすべてのことを、懐深く包み込み、やさしくゆりかごのようにゆらし、慈しんでくれるような、まろやかな深みのある香り。

Lartisan
ヴァイオラの魂は海よりも偉大で、ヴァイオラのスピリットは海の力よりも強かった。だから彼女は終わりをしめっぽく、水の中で終わらせず、新大陸での始まりにすることができた。慈愛に満ちて優しい印象のコート・ダムールは、たくましくタフで情熱あふれるソウルの持ち主ヴァイオラ気分でまといたい。

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