BBCの「シャーロック」DVD、カルチュアコンシェルジュの友に強力プッシュされて大人買いしたまま、長らく「積見」状態になっていたけれど、仕事で必要にもなり、細切れの時間を使ってようやく全部観ることができた。

シーズン1とシーズン2、全部で6つのストーリー。すべてが期待以上の超絶的な面白さで興奮。脳内で花火がはじけるような瞬間を何度も経験する。笑。ひとつひとつについてこってり感想を書きたいところだがそれはまた追って。観る前と観たあとでは別の人間になっている類の作品にはまちがいない。カンバーバッチの魅力は新鮮で、呪縛力あり。

ダントツによかったのが、シーズン2の1、「ベルグラヴィアの醜聞」。アイリーン・アドラーとシャーロックの関係がむちゃくちゃセクシー。高機能な頭脳だけがやりとりできるゲームというかスリリングなプレイに、血が騒ぐ。細部にいたるまでイギリス的な皮肉やひねりや小ネタが満載で、まったく一瞬たりとも気を抜けない、作り手の本気の情熱が伝わってきた傑作。

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dominatrix にして the woman。タフでセクシーで頭がよく、男と互角にやり合えて、唯我独尊の男を打ち負かす強い女王様なアイリーン。かっこいい。

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とはいえ。最後の最後(から二番目くらい。ほんとの最後に痛快などんでん返しがあるので)が切ない。’Sentiment is a chemical defect found on the losing side.’ とシャーロックが言い、アイリーンの「センチメント」から推理して、’I’m 〇〇〇〇locked’のパスワードを解いてしまうシーン。彼女の自分に対する「センチメント」を察知したのは、「脈が早まり、瞳孔が開く」というアイリーンの反応から合理的に。こんな,男女のゲームにおいては、ホレたほうが「負け」。でも女王様だってホレることがある。秘密にすべき想いを暴かれたときの彼女の表情がなんとも複雑で、そんなこんなの二人のセンチメントのシブい扱いが、このドラマを深く艶っぽくしている。決して女に恋をしないシャーロックは、そうしてますます魅力的な存在になっていく。女に興味を示さないのは、オトナなのかオタクなのかよくわからないが。

シャーロックが、裸のアイリーンを「まったく読めない」ことも面白かった。ルブタン履いてるだろう。サンローラン的ターコイズブルーのアイメイクしてるだろう。そのくらい読みなさい。笑。

それはそれとして。

アイリーン・アドラーにヴェスパー・リンド。群れず、自分のルールに従って世界を駆け抜けたい男が追いたい夢の女、ですね。

4 返信
  1. Taul.O
    Taul.O says:

    光栄です。
    私もこの話が6話中で最も好きです。
    ただ少し残念なのは、「新しいsexy」を体現するかの様なシャーロック(否、見透かされてましたね)に対し、「The woman」は強く知的で魅力的ではあるものの、必ずしも新しいタイプのsexyでは無いこと…。
    しかし、だからこそ、愚かな男は魅かれるのかも知れませんが。
    最後のシャーロックによるどんでん返しも、或る意味「新しいsexy」な行動では無いかも知れませんし。
    これもやはり、だからこそ魅かれるのかも知れません。

    返信
  2. エス
    エス says:

    いつも楽しく読ませて頂いております。
    シャーロックを推奨したのは「L」のHさんかなと拝察。 私もまた同じコースを 辿った者であり、感奮いまだ冷めやらぬ次第です。
    Hさんから中野先生の本を推奨して頂き、書籍のみならず、ブログも拝読しております。 御両者ともに幅広い世界を先導してくださる「IOU」のお 方です。
    コメンタリーでのアイリーンも素敵でしたね。 21世紀に生きるシャーロキアンたちの「古典」に対する、敬虔で極上の恩返し だと感服しました。

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  3. >kaori
    >kaori says:

    >Taulさま
    コメントありがとうございます。
    本質的なところは原作のエッセンスをがっちりおさえているので、古風ですよね。
    斬新な表現と、クラシックな本質、そのバランスが絶妙です。
    ただ、女性像に関しては、やはりこれは基本的に「男の世界」のお話であるからか、あまり複雑には掘り下げてませんよね。アイリーン像には、ボンドガールと同じ匂いを感じました。

    返信
  4. >kaori
    >kaori says:

    >エスさま
    ふふふ、さすがシャーロキアンでいらっしゃいますね。
    観るべき映画やドラマ、展覧会に関しては、センスが似ている「L」Hさん情報を全面的に信頼しています。「レミズ」はダメで「キックアス」を推す、この感覚を共有できれば「L」族でしょうか(笑)。
    いずれ「L」でお会いしましょう。

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