鈴木光司さんの自伝的エッセイ。自己啓発書のような雰囲気もあるけれど、「小説」としても読める。ビルドゥングス・ロマンの系譜? 出てくる周囲の人たちもキャラがしっかり立っていて楽しい。とりわけお母さん最高。映画化希望。

「平易で読みやすい」ライターの文体(いや、これが悪いというわけではない)ではなく、ちゃんと本人が書いている息遣いが感じられる文章というのがいい。

ターゲットをロックオンしたら、そこにいたるまでの道筋を徹底的に合理的に考え、最後まで諦めず、必ず達成。

やはり選ばれた人間パワースポット。ターゲット獲得に成功した試しがないために流されるままの身には、このパワーと絶対的自信がまぶしい。

ひとつだけ、ふふふ、と笑ったところ。「女性は完成品として生まれる。未完成品として生まれる男は、生涯をかけて、男になるべく努力しなければならない」。鈴木さんにこのような幻想というか夢を抱かせ続けている奥様には最大限の敬意を表します! 

生涯かけて努力すべきなのは、女も同じ。「女に生まれるのではない。女になるのだ(On ne naît pas femme:on le devient)」というボーヴォワールの至言のとおり。社会的にジェンダーが作られる、という文脈で彼女はそう書いたのかもしれないが、社会的文脈から逸脱してよけいなものを剥ぎ取っていこうとするときにもやはりこのテーゼはあてはまる。

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