神足裕司さんが新作『一度、死んでみましたが』(集英社)をお送りくださいました。大学宛に届いており、帰途読み始めたらボロボロ泣けてきて。

重度くも膜下出血から生還し、まだ脳に機能障害が残るなか、書くことだけが残された機能と感謝して綴られた奮闘記。

ご病気前の華麗なレトリックや饒舌でウィットに富んだ表現はなく、むしろ一文一文がシンプルで、本を開くと余白が目立つ。だが。その余白から立ち上ってくるものに圧倒される。ただただ、生きていることの尊さ。すばらしいご家族や友人の愛とあたたかさ。死の淵から復活し、徐々に機能を回復していく生命の奇跡。感情を、人にちゃんと伝えることの大切さ。

「潜水服は蝶の夢を見る」という映画を連想した。

涙とまらない中に、不意打ちに、自分の名前が出てくる。『スーツの神話』が神足さんの心のお守り的な本になっているという話が紹介される。

自分の本が誰かの心のお守りになる。こんな状況でも記憶から消えていなかった。これほどの賛辞が、はたしてあるだろうか。

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ご病気前の神足さんの文章は、「こんな文章を書きたい」とお手本にしていた。15字×87行で、と注文を受けたら、起承転結をつけてオチまで鮮やかにまとめて収める、というコラムのお手本だった。今の神足さんの心の姿勢も、お手本にしたい。こちらがかえって激励された気分です。

ありがとうございます。これからもたくさん書き続けてください。

神足さんのお母様が広島でかつて「シャネル」という洋品店を営んで繁盛しており、「シャネル」社からクレームの電話がかかってきたことがあるというエピソードに笑いました。来月出版される「シャネル」伝、お送りします(笑)。

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