鹿島茂先生はやはり外さない。これも面白い。ラ・フォンテーヌの寓話にフランス的な処世術を学ぶ、の本。

「つきあうなら、同じ身分の人にしておくほがいい」「敬意は、衣装に対して払われるものである」「遠くから見ればたいした人物だが、近くから見るとろくでもない」

ヒトのよさが禍を呼ぶこともあるということを実感するこの頃。ヒトがいいとかナイーヴであるとかはフランス人から見れば軽蔑すべき欠点でしかないだろう。社会に対しては慎重すぎるほど慎重にふるまうに越したことはない。繰り返し読んで頭&ハートを鍛えたくなる一冊。


 処世術ついでに。女性アイドルへ向けてのラブ(・・・なんでしょうね(^_^;))に基づいた毒気たっぷりのコラム集。黒木メイサの本名が島袋さつきとは知らなかった。島袋さつきではできなかったであろうことが黒木メイサという名ならできる。なんだか納得。

滝クリのお・も・て・な・しに関しては「この動きは人が犬に言うことを聞かせようとする時のハンドサインのようです。滝川クリステルによって世界が調教された瞬間でした」。

ここまで書かれてしまうアイドルもたまらないと思うが、書かれるのも人気があるからこそ。アイドルとしての人格が、名前と同様、別だと思えば。

ディスカヴァー・ブックバーでのクロストークイベント、50名を超える多くの方々(通常は30名前後だそうです)にお越しいただき、満席の熱気のなか、楽しく過ごさせていただきました。

ほとんど打ち合わせなしで臨みましたが、そこはココ・シャネル通どうしならでは(笑)、ディープなところまでノリよく会話のキャッチボールができたのではないかと思います。話したいことが多すぎて時間が足りないくらいでした…。

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読者の方々からお花やお祝いをいただき、また、関西からはるばるこのイベントのためにお越しくださった方もいらっしゃって、感激しています。本ブログの読者の方々にもお目にかかれて、光栄でした。親子で愛読しています、という美人母娘さまにもお会いして、自分が無頓着に書くものの思わぬ影響力を知ってあらためて身がひきしまったりとか(^_^;)。 みなさま、ほんとうにありがとうございました。

写真は、「リシェス」連載を愛読してくださっている村岡輝子さん撮影です。ありがとうございました!

イタロに乗って、ミラノへ北上。イタロとは、フィアットの会長とトッズの社長が共同出資して作った鉄道会社が走らせる特急電車。私鉄ですね。塗料の赤はフェラーリの赤と同じものを使っているらしい。内装もスタイリッシュで、なんといってもwi-fi無料というのが助かった(イタリアのホテルではすべて時間制で高く課金されました)。

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待合室までスノッブな感じ。スタッフもみな赤い制服。

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ミラノの中心部はショッピングをする人でかなりの混雑。LEONで見るような、リッチなおやじと若いモデル風美女のカップルというのは都市伝説かフィクションだと思っていたが、ほんとうにごろごろ歩いていたので、お前は場違いと言われているようで居心地が悪かったです(笑)。結局、人と街を観察することに終始して、何も買わず。基本的にあまり買い物に時間を費やすことが好きではないのですね。日本でも、「ウィンドウのあれください」で、試着せずに買うこと多々(~_~;)

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日本と比べると、ショッピング街での男性比率が高いように見受けられました。

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何度か遭遇した武装軍団。ローマでは黒い制服の武装警察を見ましたが、ミラノでは、オリーブドラブのアルファ・ロメオに乗ったベレー帽の武装警察に目が釘付けになりました。車体に見える文字はGuardia di Finanza、経済事件専門の武装警察ですね。税務署からこの出で立ちでやってこられると思うと恐怖ですね。イタリアでは税務署がマフィアと闘ってきた歴史があって、武装する必要があるのだとか。そういえばイタリア系マフィア、アル・カポネも脱税で挙げられてましたね(アメリカの話ではありますが)。ベレーのかぶり方も決まりがあるようで、角度や密着度がばしっと統一されています。

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少し中心部をはずれると、八重桜が満開。

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ミラノでは中心から少し離れたプリンチッペ・ディ・サヴォイアというドーチェスター系のホテルに。

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どこもかしこも「ポッシュ」というか、フィレンツェの重厚ラグジュアリーとはまた異なる、モダンでスノッブな今どきミラノテイストで圧倒されました。バスルームも当惑するほど広く、アメニティはアクア・ディ・パロマ。

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ホテル内のスパにはこんなテラスもあり、ミラノ市内を見渡せる。サウナはハーブミストとドライ、二種類あって快適だったのですが、男女兼用で、バスローブをフックにかけておくことで、「誰かが入ってるのかいないのか」を察して行動せよ、という仕組み。

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イタリアのホテルは、そういえば、どこもアメニティとして歯ブラシを置いていませんでした。ほかはありとあらゆるアメニティが充実しているのに、歯ブラシセットだけが、ない。客室係にお願いすると、デンタルフロスまでついた立派なセットを持ってきてくれましたが。日本の旅館が「なにはなくとも歯ブラシだけはサービス」するのと、対極にありますね。

ここのホテルのレストランもモードな装いの笑わぬ美男美女(笑わないこと、これかっこよさには重要なのかもですね)であふれ、動くファッション誌のように楽しませてもらいました。

などなどと書いててなつかしきデジャブ感。そういえば30年ほど前、私は「レジャーアサヒ」の旅行ライターとしてデビューしたのであった。メキシコ、グアム、沖縄、奄美、国内温泉地などなど、旅しては書く、ということが天職だと思っていた時期があった(笑)。天のはからいで原点に還らせていただいた気分です。

ダイナースクラブさま、アリタリア航空さまに、あらためて心より感謝します。

フィレンツェからバスでトスカーナへ。

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周辺の大聖堂などを見て、メインのピサの斜塔。

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中はがらんとした空洞になっていました。

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塔を囲むようにして螺旋階段が293ステップ。外へ出ると斜塔の上。トスカーナが一望できる。この日の外気温22度、カラッとした気持ちのいいお天気でした。

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芝生の上で上半身裸になって日光浴している人もちらほらいた「トスカーナの休日」。

気分良く油断していたら、帰途に悪名高いスリ軍団に遭遇。少女やら、赤ん坊(おそらくダミー)を抱えた女たちがすりよってきて「ユーロ、ユーロ」(ユーロをくれ)と。無視して早足で歩いていたら、ダンボールを赤ん坊の上にかぶせ、体当たりで擦り寄ってくる。ハッと思ってダンボールに隠れたバッグを見たらちょうど留め金を開けられた直後でした。絶叫したら逃げて行き、何も盗られずにすみましたが、ガイドさんによれば、この「ダンボールや新聞で手元を隠す」やり方は、かなり多いのだそうです。観光客の多いこの道はスリとぼったくり&ひったくりの天国らしい。

こういうことを生活の糧にしなくては生きていけない人たちがいる。しかも大勢。しぶとく生き抜こうとしているだけあっぱれなのか。年間数万人の自殺者を出す日本は、スリが比較的少なく安全だからといって「平和」といっていいのだろうか。答えの出ないことをとめどなく考える・・・。

北上してフィレンツェ。空気がゆったり澄んでいて、波長に合う。飛び込みで入るリストランテやバールがどこもおいしいし、人が親切。タクシーも正直(笑)。ようやく寛げる街に来たという感じ。Firenze_3

街全体がオレンジ色で、夕刻になるとオレンジ色の照明が灯り始め、あたたかみのあるいい雰囲気になる。アルノ川沿いを散歩しているうちにあっという間に夕刻から夜。

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フィレンツェではウェスティン・エクセルシオールに二泊。

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ロビーも重厚で広く、部屋もヨーロッパのラグジュアリーとはなにかを教えてくれるような快適で美しい空間でした。ホスピタリティもすばらしくて、なによりもチップを出しても受け取らないスタッフがいる(!) ローマで抱いたイタリア人不信を、フィレンツエで完全回復。

夕食はホテル最上階にあるSE.STOというレストランでとったのだが、インテリア、セッティング、サービス、味、雰囲気(窓の外にはルネサンスの眺め)、すべてにおいて、これまでで最高のレストラン体験をさせていただきました。

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背景に広がる空間は、なんとガラス張りになっているテラス席。客層もかなりよいと思われ、思わず見とれてしまうような美男美女のカップルやらグループやらでほぼ満席。

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日曜の朝。部屋から見る朝日。定時に鐘がなりひびくのも、情緒があります。

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こんな自転車おやじ軍団にも遭遇。レースかなにかだったのでしょうか。

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アルノ川の対岸には、釣りを楽しむ人たち。みごとに等間隔に並んでいたのが、イタリア人っぽくなく(?)面白いな、と。Firenze_10

フィレンツェではいわゆる「観光」をせず、ホテルまわりでゆったり過ごした。有名なポンテ・ベッキオは、駅に向かうタクシーの中から鑑賞。

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ローマからバスでヴァチカンへ。ローマ教皇が統括するカトリックの総本山となればやはり見ておきたいと思って。

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宮殿の威容にも圧倒されたけど、なんといっても美術館が、ケタ外れのスケール。500年分、歴代の教皇の収集物が延々と続く。

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ガイドさんに解説してもらいながら4時間も歩く。足も目も痛い。とにかく神々の像がいたるところにあり、

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床はモザイク、天井も壁も空間恐怖のように絵が書き込まれている。

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回廊と回廊をつなぐ中庭にもなにげなくバンバン美術品が置かれている。

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 巨大な松ぼっくりの像も。なぜに松ぼっくり。

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クライマックスが、システィナ礼拝堂。ここでコンクラーベが行われる。根比べ?と疲労のあまり気が遠くなって、ほとんどおやじになっている。ミケランジェロが描いた天井画の「最後の審判」とか、側壁のキリストとモーゼの生涯の絵なんかは、キリスト教徒が見たらまた違う感慨なのだろうな…とぼんやりと見上げる。文字が読めない人も、こうやってキリスト教を学んでいくことができたのか。基本、写真はどこを撮ってもOKだけど、礼拝堂のなかだけは撮影禁止。下の写真はウィキペディアよりシェアさせていただきました。

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しばらく美術は見なくていい、というほど満腹。

ちょうどこの日、オバマ大統領もここに来ていた。警備のために道路に通行制限がかかり、それを理由にまたタクシーにぼったくられた…。油断もスキもないイタリアのタクシー。

気分を和ませてくれたのは、ローマのカラスでした。ツートーンカラー。カラスまでおしゃれね。

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通りは各国からの大勢の観光客であふれていました。このあたりで撮った自分の写真を見たら、疲労とぼったくり警戒のあまりおそろしい顔をしていた(^_^;)

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天からのギフト、幸運のイタリア往復チケットの期限は3月末でした。活かさなくては天罰があたると思って、なんとか3月最後の数日を確保してイタリア駆け足縦断の旅をしてまいりました。

アリタリア航空の往復チケットがあるのみで、ホテルの手配はじめ、すべて自分でやらなくてはならないというのは、実は初体験でした。たいへん勉強になりました…。

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到着地ローマ。映画の舞台になった場所を中心に「来た。見た。撮った。」シリーズ。まずはスペイン階段、「ローマの休日」。

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パンテオンは「テルマエ・ロマエ」でも使われてました。

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トレビの泉で「ドルチェ・ヴィータ」。タイミングの悪いことに投げるべきコイン持ち合わせていなかった…。最初で最後の、甘い生活。

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ナヴォーナ広場の角には、マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンの「昨日、今日、明日」の舞台に使われたアパートが。

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ナヴォーナ広場の、オベリスクを囲む四つの大河の擬人像。「天使と悪魔」ではここで殺人事件が起きました。昼間見てもド迫力、夜はかなりおどろおどろしいだろうなあ。

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コロッセウムは当然、何度も見ている大好きな傑作、「グラディエーター」。

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お約束の「真実の口」。「ローマの休日」で有名になった観光スポットは、なんと写真を撮るのに30分待ち…。待ってる間、イタリア美女のガイドさんとおしゃべり。最近はポルトガルとブラジルからの観光客が増えているとのこと。

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ホテルの中ではヴィスコンティの「山猫」ごっこをしてみました(笑)。

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スペイン坂の上にある、「インターコンチネンタル・ド・ラ・ヴィレ・ローマ」という、旧貴族の館を改造したホテルで、

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滞在中には、ちょうどギリシアの大統領も訪れていた格式のあるホテルです。ものものしい警備のわりには、あっさりとホテルの前に路駐されていたギリシア大統領の車。

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内装が完璧に美しい、快適でラグジュアリーなホテルではありましたが、悲しいことにここで盗難にあいました。たいした被害はなかったのですが、タクシーにも二日間の間に二度ほどぼったくられました。イタリアではよくあることらしいですが、よほどお人好しなカモの風情だったんだと思う。ローマを経つ頃には人間不信のあまり、かなり険しい顔になってました(~_~;)

ま、恨みは忘れて、いいことだけを覚えていよう。「グラディエーター」のラッソーが演じていたマキシマスのセリフ。

"What we do in life echoes in eternity." (われわれが人生で行うことは、永遠にこだまのようにはねかえってくる)