mikio sakabeデザイナーの坂部三樹郎さん、writtenafterwardsデザイナーの山縣良和さんをお招きして、「ファッションは魔法: 服を超えて、新しい人間をつくる」というテーマでクロストーク式のレクチャーをしていただきました。

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左が山縣さん、右が坂部さん。

坂部さんはアントワープのロイヤルアカデミーを主席で卒業後、グローバルに活躍。山縣さんもロンドンのセントラル・セントマーチンズを主席で卒業後、話題を振りまき続け、いまは、故郷の鳥取県の観光大使まで!

おふたりそれぞれの最近のお仕事の動画だけでも、かなり学生には衝撃だったようですが、その後続いた、「ファッションとは」という哲学的な問題に始まり、「生きるとは?」「人間の細胞のしくみとは?」「グローバルに活躍できる条件は」など多岐に、深く、話題が広がり、ファッションの見方ががらっと変わった刺激的な時間でした。

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山縣さんの七服神。「ぎりぎり、着れる服」。きゃりーぱみゅぱみゅや、初音ミクも着用。WWDの表紙にもなりました。ダメダメなアダムとイブの物語からはじまり、この神が出てくるストーリーそのものが奇想天外で、笑いと感嘆の声続出。

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坂部さんの、ジェンダーを問うメンズコレクションから。「ゲイ」もすでにステレオタイプになっている。そうじゃない、「らしさ」にカテゴライズできない男だっている…ということで、まったく新しい男性像の数々。なかにひとりだけ、こんな変なメイクをして出てくるモデルが。「なぜ、一人だけこのメイク?」と聞いたら、予定調和の中にひょいと異物を入れて、リズムを壊すことも大事」と。なるほど。

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以下、とくに印象に残ったことばをランダムにメモしておきます。

・ファッションを考えるとは、環境のなかで生きる服を着た人間を考えること

・イケている、ということはフレッシュであるということ

・人間が新しく生まれ変わるためのもの、それがファッション

・西洋においてアートはファッションよりも格付けとしては上。それはアートが宗教と結びついているため。浮薄で、うつろいやすく、瞬間瞬間できまぐれに変わっていくファッションは軽んじられてきたけれど、実はそのうつろいやすさにこそ、人間の「生」の真実があるのではないか? 日本には「諸行無常」という考え方がある。同じ一瞬は二度とこない。ファッションはその瞬間瞬間のあわいを表現するもの。

・大御所のデザイナーは、ショーの直前になってスカート丈を切ったりする。がっちりした不動のコンセプトがあればそんなことはしない。その瞬間、その場の空気にもっとも「イケてる」と感じられることを表現するからこそ、直前になっても変えてしまう。それこそがファッションの面白さ。

・人と社会との間。人と人との間。そこにファッションは生起する。パリコレの会場でかっこいい人をたとえばこのホールにもってきても、ただの変な人(笑)。必ず環境との調和のなかにかっこよさは成立する。

・細胞が感じて、思考の前に反応してしまうもの。言葉にすくいきれないあわきもの。それを表現するのがファッション。

・祭りはその場に参加すると細胞が沸き立つほど面白いが、テレビで見てもまったくつまらない。祭りの渦中に、生身をさらしてこそ生起することがある。

・日本の着物は四季を描きこんできた。「環境とともに生きる」という意識がそこにある。

・グローバルに活躍するためには、西洋のまねっこをしててもダメ。自分の内面にきっちり向き合うこと、そのほうが世界にダイレクトに通じる。

・山縣さんは日本ではダメダメないじめられっ子でいいところがまったくなかった。でもロンドンへ行ったらそれが逆に強みになった。日本で隠していたことと向き合ったら、それがクリエイティビティにとって強みとなり、すべてが好転した。

・失敗することをおそれてはいけない。失敗をおそれて何にもしないことが、むしろ危ない。ぴょんと行動してみることが、より豊かに生きることにつながる。失敗したってなんとかやっていけるから!

・グーグル検索の予定調和から脱出せよ。検索にひっかからないバグや偶然にこそ豊饒なクリエイティビティのヒントがある。そのためにも、どんどん外に出よ。

講義後のランチをご一緒し、さらにお話伺いましたが……お二人ともユニークで面白いっ。自分の感覚にまっすぐ向き合っている人ならではの独特なエネルギーがあり、学ぶところ大でした。

坂部さん、山縣さん、ありがとうございました! ますますのご活躍を応援します。

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「サライ」チームの連載終了おつかれさま会。新宿5丁目「玄海」にて。

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水炊きがメインの、なんだか老舗旅館にでも伺ったような懐かしい気持ちにさせてくれる、とてもよいお店でした。

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4年半ほどの間に、編集長も替わり、担当編集者もハンジさん、ニシムラさん、オオクボさん、と替わりました(モンダイがあったわけではなく、単に事務的な交替です。笑)。それぞれがエッセイネタになるほどユニークで、いい仕事をする優秀な方々でした。スタイリストの堀さん、カメラマンの稲田さんにもたいへんお世話になりました。スタッフのみなさまあっての仕事だったとあらためて深く感謝します。多くの企業に取材したこの4年半の経験は、かけがえなく貴重です。淡々と、いつの間にか50回を超えていた…という実感。

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玄海の玄関に飾られていた太鼓。一本の木をくりぬいてできているそうです。

明治大学グローバルフロントにて、商学部創設110周年記念 ファッションビジネス国際シンポジウム。

シャネルジャパン社長、リシャール・コラス氏はシャネルブランドの伝統と革新の話を。前日に転倒して膝を痛め、松葉づえでご来校でしたが、そんなことをまったく感じさせないアツいレクチャーで予定を30分延長!

続く太田伸之さんの話ははじめて拝聴しましたが、パワーポイントなどまったく使わない、話だけのみっちりトークでこちらも時間延長のパワフルなレクチャー。

ファッションビジネスにかかわってきたこれまでの経験談と、マーチャンダイジングの現状と未来について。それぞれのエピソードがいちいちドラマティックで情熱的、思わず涙した場面も何度か。

はじめて東京コレクションをするときのテント設営。とび職の方々に、毎晩、150人分、ご飯をつくって差し入れしたという話。予算がないので手作りのおでんとか。それに感じ入った現場の方々が太田さんのためにささやかなご恩返しをし、さらに後日、太田さんが大きなご恩返しをするというあたたかな「ご恩返しの循環」。

日本のデニムのよさを世界に伝えたい一心で、銀座の歩行者天国でデニムファッションショーをしたときの奇跡のようなエピソード。

震災直後、チャリティを募ったら世界中のデザイナーがすぐに協力してくれた話。

ライバル三越と組んでの、異例の銀座ファッションウィーク。役員会にかけたら反対されるにきまってるので、既成事実として両社の名前入りのショッピングバッグを先に作っちゃったという戦略。

松屋に復帰したとき、ライバル社の伊勢丹の大西社長が、「百貨店業界に戻ってくれて、ありがとう」とメッセージをくれたというエピソード。

いちいちじーんとくる。本気で仕事をする人だけに降り注ぐ天からの恵み。

現在はクールジャパン機構の社長として日本発のものを世界へ発信するファンドを運営する仕事をしていらっしゃるのだが、その立場からのアドバイスも刺激的だった。すなわち、勝つためには

絶対におまけをしないこと!

中途半端に妥協すると、結局、ビジネスにも失敗するし、良好な関係も築けない。徹底して戦ったほうが、結果、良好な関係が長続きする。よいと信じるものをきちんと説明して、おまけなどしないこと。

そして、とことんぶれないこと!

お客は自分で作れ。クレームは謙虚に聞くべきだけど、いちいちそれに合わせて小手先の変化をするな。ベンツやシャネルには一貫性がある。ぶれないことがブランディングとなる。

また、マーチャンダイジングにおけるグループ分けを、変えなくてはならない時期にきている、という話も面白かった。もう服だけを並べて売る時代ではない。生活の空気を売る時代。物語のないお店には、人は感動しない。

この話から連想したのは、シンポジウム開始前、東野香代子さんが話してくれたパリのラグジュアリーワールドにおける「アール・ド・ヴィーヴル」の話。生活芸術。コルベール協会に属するブランドの中には、インテリアやテーブルグッズ、香水、チョコレート、シャンパーニュまで含まれる。こうした生活回りすべてがラグジュアリーファッションの世界であって、ファッションとは服やバッグや靴だけの話ではない、ということ。

ともあれ、国際的なビジネスに乗り出したらならば、負けるな、ぶれるな、かたことでいいからひるまず戦え! と強気のはっぱをかけて大盛り上がり。

そして三人目のガシュシャ・クレッツ氏。終了予定時間から始まりましたが、ラグジュアリーブランドとブロガーの今を英語でレクチャー。排他的、エリート主義、卓越主義、歴史主義、タイムレス、秘密主義、近づきがたい…こんなラグジュアリーワールドは、SNSとは相いれない。でももはやそうは言っていられない時代。SNSと巧みにコラボするブランドの例が紹介される。

重要なこととして「身近すぎない」こと、という指摘が興味深かった。すぐコメントに返事を返したりするのはラグジュアリーなイメージにとってはNGなんだと。わはは、すぐ返事を書いちゃう私は完全に庶民派ですな。

ファッションビジネスってほんとうに面白くて奥深い、とワクワクさせていただいた土曜日の午後でした。主催の商学部のスタッフの皆様、講師のお三方に感謝します。良い循環を生み出しながら業界を動かしている一流の仕事人に共通するのは、現場の人への愛であり、愛を示すための常識破りな行動力であること、あらためて学ばせていただきました。

コットンクラブのみなさまに、長年かかった仕事の完成をねぎらっていただきました。

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半蔵門のARGOにて。昼も夜も窓からの眺めがすかっと美しい、とても雰囲気のいいレストランです。和のエッセンスを取り入れたフレンチで、サービスもすばらしい。

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お祝いの品としてセンスのいいバカラグラスの一輪挿しをいただきました。そのうえ、豪華な花束まで。感激。興子ちゃんが、私のイメージを花屋さんに伝えたらこのようになったそうです。ゴージャスに見えるけど実はシャイとか。わはは、照れるね! 一生懸命私のために考えてくれた、その粋なやさしさが何よりもうれしい(涙)。バカラの一輪挿しは家宝にします。

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店内に飾られる1000冊のビジュアルブックを背景に。後列左からbatak社長の中寺広吉さん、Yon-ka社長の武藤興子さん、ユニオンワークス社長の中川一康さん、前列左イラストレーター・ソリマチアキラ王子、右は綿谷寛・画伯です。
コットンクラブの名前は会長の名前に由来。

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場所を変えて二次会、三次会まで延々と話題が尽きずに気が付いたら午前三時(-_-;) 仕事の疲れも苦労もすっかりふっとび、次の仕事へのエネルギーチャージができた楽しい時間でした。笑いじわくっきり。みなさんありがとう!

尖閣諸島問題で半年ほど中断しながらも数年連載が続いている中国の「端麗服飾美容」。

一時は分厚さが加速して持ち上げるのも困難かと思えるほどになりましたが、最近はA刊、B刊、2冊分冊になっています。

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写真は5月号A+B。2冊でワンセット。買うほうも作るほうも、大変ですね。でもそれだけ広告が入るということ。紙質がしっかりと良いのもおどろきです。中国のファッション市場の勢いの一端を感じます。

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日本語で書いて送りますが、編集部で中国語に訳されます。微妙なニュアンスなどが最終的にどのような感じで落ち着いているのかは私にもわかりません。どう転んでも政治問題にはならないよう、「あたりさわりなく、わかりやすく、心地よく何かを学んだ気分になれる」ことを至上の課題として書きます。お気楽ご気楽な領域で、若い中国の女性たちに日本に対する親近感を深めていただければ幸い。