明治大学グローバルフロントにて、商学部創設110周年記念 ファッションビジネス国際シンポジウム。

シャネルジャパン社長、リシャール・コラス氏はシャネルブランドの伝統と革新の話を。前日に転倒して膝を痛め、松葉づえでご来校でしたが、そんなことをまったく感じさせないアツいレクチャーで予定を30分延長!

続く太田伸之さんの話ははじめて拝聴しましたが、パワーポイントなどまったく使わない、話だけのみっちりトークでこちらも時間延長のパワフルなレクチャー。

ファッションビジネスにかかわってきたこれまでの経験談と、マーチャンダイジングの現状と未来について。それぞれのエピソードがいちいちドラマティックで情熱的、思わず涙した場面も何度か。

はじめて東京コレクションをするときのテント設営。とび職の方々に、毎晩、150人分、ご飯をつくって差し入れしたという話。予算がないので手作りのおでんとか。それに感じ入った現場の方々が太田さんのためにささやかなご恩返しをし、さらに後日、太田さんが大きなご恩返しをするというあたたかな「ご恩返しの循環」。

日本のデニムのよさを世界に伝えたい一心で、銀座の歩行者天国でデニムファッションショーをしたときの奇跡のようなエピソード。

震災直後、チャリティを募ったら世界中のデザイナーがすぐに協力してくれた話。

ライバル三越と組んでの、異例の銀座ファッションウィーク。役員会にかけたら反対されるにきまってるので、既成事実として両社の名前入りのショッピングバッグを先に作っちゃったという戦略。

松屋に復帰したとき、ライバル社の伊勢丹の大西社長が、「百貨店業界に戻ってくれて、ありがとう」とメッセージをくれたというエピソード。

いちいちじーんとくる。本気で仕事をする人だけに降り注ぐ天からの恵み。

現在はクールジャパン機構の社長として日本発のものを世界へ発信するファンドを運営する仕事をしていらっしゃるのだが、その立場からのアドバイスも刺激的だった。すなわち、勝つためには

絶対におまけをしないこと!

中途半端に妥協すると、結局、ビジネスにも失敗するし、良好な関係も築けない。徹底して戦ったほうが、結果、良好な関係が長続きする。よいと信じるものをきちんと説明して、おまけなどしないこと。

そして、とことんぶれないこと!

お客は自分で作れ。クレームは謙虚に聞くべきだけど、いちいちそれに合わせて小手先の変化をするな。ベンツやシャネルには一貫性がある。ぶれないことがブランディングとなる。

また、マーチャンダイジングにおけるグループ分けを、変えなくてはならない時期にきている、という話も面白かった。もう服だけを並べて売る時代ではない。生活の空気を売る時代。物語のないお店には、人は感動しない。

この話から連想したのは、シンポジウム開始前、東野香代子さんが話してくれたパリのラグジュアリーワールドにおける「アール・ド・ヴィーヴル」の話。生活芸術。コルベール協会に属するブランドの中には、インテリアやテーブルグッズ、香水、チョコレート、シャンパーニュまで含まれる。こうした生活回りすべてがラグジュアリーファッションの世界であって、ファッションとは服やバッグや靴だけの話ではない、ということ。

ともあれ、国際的なビジネスに乗り出したらならば、負けるな、ぶれるな、かたことでいいからひるまず戦え! と強気のはっぱをかけて大盛り上がり。

そして三人目のガシュシャ・クレッツ氏。終了予定時間から始まりましたが、ラグジュアリーブランドとブロガーの今を英語でレクチャー。排他的、エリート主義、卓越主義、歴史主義、タイムレス、秘密主義、近づきがたい…こんなラグジュアリーワールドは、SNSとは相いれない。でももはやそうは言っていられない時代。SNSと巧みにコラボするブランドの例が紹介される。

重要なこととして「身近すぎない」こと、という指摘が興味深かった。すぐコメントに返事を返したりするのはラグジュアリーなイメージにとってはNGなんだと。わはは、すぐ返事を書いちゃう私は完全に庶民派ですな。

ファッションビジネスってほんとうに面白くて奥深い、とワクワクさせていただいた土曜日の午後でした。主催の商学部のスタッフの皆様、講師のお三方に感謝します。良い循環を生み出しながら業界を動かしている一流の仕事人に共通するのは、現場の人への愛であり、愛を示すための常識破りな行動力であること、あらためて学ばせていただきました。

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