「インプット」するにふさわしい内容とエンタメ性を備えた本に出会えた幸運。


ユリイカ8月臨時増刊号、「総特集シャーロック・ホームズ」。収録の上田麻由子さん論文で新しく知ったことば「ブロマンス(bromance)」。brother と romanceを組み合わせた言葉で、「二人の男性間の親密だが、性的ではない関係」。なるほど。シャーロックとジョンは、ただの親友ではない。でも性的にロマンティックというわけでもない。互いが互いに見せる反応はほとんど男女間の恋人同士のそれなのだけれど。ハドソン夫人も二人は恋人であると信じて疑ってないし。笑

70年代のマッチョカルチュアにおけるバディムービーではこの手の関係は互いに互いが無自覚であったのに対し、現在では同性愛婚も認められる時代、ロマンスがほのめかされるようになった、と上田さんは解説。

もう一冊は筒井康隆「創作の極意と掟」。この本を買ったあと、裏原宿を歩いていたら「筒井康隆」と表札が入った一軒家を発見。おしゃれすぎる裏原にあって、そこだけタイムスリップしたような端正な家。ほんとうに筒井康隆の家なんだろうか?

という偶然も手伝って、運命も感じた一冊。やたら字が大きくスカスカで最後のまとめが太字で締めくくられている方法系の「ベストセラー」には辟易していたけれど、こんなハウツーものなら永久保存。筒井康隆が語りかけるように具体例を列挙しながら持論を展開。巻末に文学ガイドもついてくる。ときに人間くささと俗物性の吐露(これを筒井さんは自覚して俎上にあげているから知的)に失笑しながら、背筋が伸びる。

「自分自身との対決の中でも作家にとって特に過酷なのは、自身の俗物性との対決であろう。浮世を超越しているかに見える芸術家とてその大半は俗物なのであり、作家ともなれば99パーセントが俗物であることは確かだ。そういう俗物であればこそ、作家としてその俗物性を追究し、対決しなければならないのだと思う。(中略)こうした俗物性との対決は、作家にとって不可欠の作業である。これが創作においてどれだけ役に立つかは計り知れないものがあるのだし、そこには迫力の源が存在する」

こういう、物書き業者に対して覚悟を迫る一文が随所にあって、ときに泣ける(物書き業ではない読者にとってはなぜここで?というようなところかもしれないが)。

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