『イヴ・サンローラン』初日は満員御礼で、立ち見の回も出たそうです。鑑賞後に多くの方々からメッセージなどで感想聞かせていただきました。あらためて感動をシェアできたり、新しい発見があったりと、私にとっても嬉しい日でした。

コミュニティ・カレッジのサンローラン講座にご参加くださいました寺部真理さまからも、とても知的な刺激に満ちた感想をお送りいただきました。なるほど!と思わされることも多かったので、真理さまのご了承を得て、以下、抜粋して紹介させていただきます。

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個人的な思い出:

私がサンローランのファッションについて知ったのは、1970年代後半でした。
映画評論家の今野雄二さんのコラムを通してであった、と記憶しています。
今野さんもゲイ的な感性の持ち主で、ラガーフェルド、マノーロ・ブラニクなどに、かなり早い時期から注目しておられました。4年前に亡くなられた時は「シングル・マン」のような最期を遂げられたのが印象的です。
余談ながら、トミー・ナッターの「21世紀にはネクタイはなくなる」という予言を40年前に引用していたのも今野さんでした。
まさかクールビズの時代を予言したわけではないでしょうが・・
ちなみに私は学生時代にリヴゴーシュを愛用し、オピウムについては海外旅行に行く親戚に頼んで、発売当初さっそく買ってきてもらいました。当時、水戸黄門の印籠のようなデザインに驚いたものです。(笑)

ミューズと映画ファッション:

「昼顔」のドヌーヴは、ベージュのスーツやトレンチコートが印象的でした。
人妻・不倫・トレンチコートの三点セット?を踏襲したのはブライアン・デパルマ監督の「殺しのドレス」でしょうか。
この作品はヒッチコックの「サイコ」よりも、むしろブニュエルの「昼顔」へのオマージュだ、とデパルマ監督が言っていたそうです。
こんなところにもYSLの影響があったのですね。

グローバルビジネス:

デザイナー個人としてのブランドと、グローバルビジネスとしてのファッションブラ
ンド、シャネルとサンローランの会社としてのその後・・・
この対比は、国際ビジネスを専攻した私にとって、とても興味深く、かつその矛盾について深く考えさせられるテーマです。
ファッション・ブランドのグローバル戦略については、ビジネス関係の学会でもテーマとして取り上げる先生方がおられるようです。しかし、アーチストの個性が深く絡むファッション産業においては、もっと多角的な分析が必要ではないか、と私は考えています。

デザイナーの感性とマネジメント:

「社会的意味はなく、ただただ美しくあることを唯一の基準として選んだことが、結果的に時代を変えるきっかけになる」、というデザイナーの感性のすごさ。
これがクリエイティビティの真の原動力ですね!
アーチストとしてのデザイナー、ビジネスとしてのマネジメント、イブとピエールの関係も興味深いです。
アーチストには、プライベートも知り尽くして存在をまるごと受け止められる有能な、愛あふれるマネージャー兼パートナーが必要ということで・・・

リシェス・オブリージュ:

最後に・・・もしもシャネルやサンローランが現代に生きていたならば、エコロジー、社会貢献、リシェス・オブリージュといった潮流を、独特の感性でどのようにとらえ、どういう形で表現し、何を起こしていたか・・・?想像するとたいへん興味深いです。
それを考えることは、ファッションを志す若い方々にとっても刺激的なことではないか、と思いました。

本当に楽しく、かついろいろ考えさせられるところの多い講座でした。

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こうして整理してコメントをいただくことで、私が無意識に話したことがどのように受けとめられたのかを確認できて、さらに視野が広がり、私にとっても大きな学びになります。他の受講者の方々にとっても、体験がより深く刻まれる貴重なご意見なのではないかと思います。真理さま、ありがとうございました。他の受講者の感想からも多々学ばせていただきました。受講者のレベルの高さにあらためて身が引き締まる思い。

それにしても、デパルマ、ブニュエルにつながるトレンチコートをめぐる三点セットって、キャッチーで、いい視点です!

Ysl_betty

ご参加くださった内田栄治さんもブログ記事でご紹介くださいました。5日のコメント欄からもリンクできますが、あらためて、こちらです。ありがとうございました。

サンローランのドキュメンタリーは何種類かありますが、たとえば、ユーチューブで見られるのは、こちら。全部観ると長くなりますが。

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