取扱い要注意ワード

2015年6月14日

☆鷲田清一さんの「折々のことば」、朝日新聞14日付。 「人類学者は『ヴァジャデ』を通じてひらめきを求める」。 ヴァジャデとは、デジャヴュならぬ「未視感」。「偉大な発見はたいてい、ありふれたものを新しい目で見るところから生まれる」。 おおよそのことは「すでに目の前にある」んですよね。それにどれだけ新鮮な目で気づくことができるか。

☆プロフェッショナルの物書きが使わないように気をつけていることばがあります。ベテランの編集者や校閲のチェックを幾度もかいくぐり、正当な批評や査読に身をさらしてきた職業文筆家であれば、よほどのことがない限り、以下のことばは使いません。 いろんなところで何度も書いているのですが、ライフスタイル誌においては相変わらず乱発されているので、差し出がましいことを承知で、あらためて本欄で書いておきます。

「生きざま」:「死にざま」「無様(ぶざま)」「ざまーみろ」で使われる「ざま」に通じる「ざま」です。よほど醜くくて「無様」としかいいようのない姿であれば「生きざま」もいいでしょうけれど、「あの男の生きざまがかっこいい」「彼の生きざまにあこがれる」という表現はありえません。皮肉として言う場合は別ですが。そもそも、発音してみて美しいことばでしょうか? あっさりと「生きかた」「生きる姿勢」などでいいと思います。

「こだわり」:どうでもいいことに必要以上に執着する、という否定的なニュアンスをもつことばです。校閲がもっとも厳格な雑誌のひとつ、「サライ」では、完全にNGワードです。「ファッションにこだわりをもつ男の人って、すてきですね」と言えば、相手を皮肉ってバカにしているということになります。もっとも、言われたほうも意味を知らなくて、ほめられたと思って喜んでいるのなら……なんと能天気なことでしょうか。

「こだわりのある生きざまがすてきです」って言ってる方も言われたほうも何のひっかかりも感じることなく素直に喜びあっているのなら、これほど滑稽なことはありません。

もちろん、私もうっかり恥ずかしい間違いをしてきたし、これからも無知をさらす可能性大なので、日々わが身をかえりみることにします。

もう3冊めを使っている(前の2冊はぼろぼろになったので)角川の 「類語国語辞典」。 気になったら、言い換える。その時に役立つ頼もしい辞典です。類書も何種類か買ってみましたが、結局、私にはこれがいちばん使いやすい。

 

kadokawa

2 Comments

  1. so より:

    中野香織様 ダブルクリックしたらコメントを書く前に送信されてしまいました。申し訳ありません。改めまして 角川の類語辞典、中野香織様に触発されて購入しました。
    私は、物書きではありませんが日々の生活の中でも言葉には気をつけなければと思います。 「ざま」と「こだわり」決して使ってはいけない言葉と認識いたしました。疑問に思った時にこの辞典をくりつつ役立てたいと思います。

    • Kaori より:

      so さま 
      いえ、必要に応じて、その状況を表現するにふさわしいのであれば別に使ってもかまわないのです。
      ただ、ほめことばのつもりで「こだわりのあるダンディらしい生きざまがすてきですね♡」なんて言うのは
      (言われて鼻の下伸ばして喜ぶのも)、愚かさ丸出しの超ハズカシイことである、ということだけを
      お心にとどめおいていただければ幸いです。

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