「情熱のシーラ」(El tiempo entre costuras)は30年代のヨーロッパやモロッコでドレスがどのように作られていたのかの一端も垣間見せてくれる。第5話でファッション史的にとても興味深いエピソードが出てきました。

シーラの工房は、おもに「ヴォーグ」や「ハーパースバザー」などのアメリカのファッション誌に出ている服のコピー(あるいはそれに似た服)を、お客様のサイズに合わせて仕立てるんですね。いまなら「パクリ」と問題になるところですが、1930年代、戦争直前のモロッコだし。たぶん、著作権なんかの権利意識もまったくなかったんでしょうね。

シーラ・キローガ(名前もいいよね)の上客のひとりロザリンダ・フォックスのたっての頼みを聞いてシーラが特急で仕上げたのが……マリア―ノ・フォルチュニの伝説のドレス、「デルフォス」のコピーなのです。

デルフォスとは、スペインのファッションデザイナー、フォルチュニーが、古代ギリシアのドレスにヒントを得て、シルクサテンをランダムにプリーツ加工して作った、下着なしで着る女神ドレス。英語の表記はDelphos Gown. 1910年前後に作られていました。Conde_nast_fortunyフォルチュニーのティーガウンを着るミセス・コンデナスト。Gownという英語は、日本語で連想するような部屋着のガウンではなくて、ロングドレスを意味します。
Mariano_Fortuny_(Designer)デザイナーのマリア―ノ・フォルチュニー。

「シーラ」の舞台設定は1930年代ですが、フォルチュニーのデルフォスはトレンドなどで片づけられない永遠の力をもっているということでしょうか。助手のジャミーラが雑巾絞りをしているのを見て、シーラははっと思いつき、布地を買い、染料(サフランみたいなスパイスを何種類か)を買い、バスタブで染めあげる。それを二人で雑巾絞りをして乾かすと、ランダムプリーツができるのです!プリーツがアクセントで構造はシンプルなので、一日で作り上げることができたんですね。プリーツは明日になれば落ちる。一晩限りのプリーツドレスの、なんと美しいことか。fortuny_gallery_aスペイン保護領モロッコの高等弁務官とイギリス人女性のモロッコでのW不倫カップル。内実はとてもピュア。

どんどん美しくなって男たちを魅了していくシーラも目を奪いますが、バスケス署長(フランセスク・ガリード)がまたかっこいいのですな。出てくるたびにスーツが違う。視線が強く、そのなかに色気がある。ジョン・マルコビッチにどこか雰囲気が似ている。

第8話まで一気に観終って、さあ次、いよいよマドリードでスパイだと思ったら、DVDは10月発売なのですね(さっそく予約)。イギリス人記者マーカス・ローガン(ピーター・ビベス)との再会もあるかな。それにしても周囲のいい男たちが(女も)、シーラの味方になり、時に命がけでシーラを助けるのは、なんとうらやましいことか…。

 

 

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