「自分には生きている価値がない」と思いこみ、死にたい願望を募らせて男の友達に頼んでほんとうに自分を殺させた(男子学生の供述の通りだとすれば)18歳の女子高校生の事件が痛ましくて、頭にちらついて離れません。

先月、家の一部を久方ぶりにリフォームしたときに、30年以上前のアルバムやら手紙やら日記やらがごっそり出てきました。多くは感謝とともに処分したのですが、日記の一部をぱらぱら見ていたら、今から見るとほとんど他人のような、メンヘラすれすれの記録がある。もちろんこれも処分しますが、焼却してしまう前に、ひょっとしたら、「自分には価値がない」と死を思うほど苦しんでいる若い女性にとって、何らかの救いになるかもしれないと思ったことを書いておきます。

19歳、大学2年のとき。表向きはバブル経済下のにぎにぎしい女子大生ライフを楽しんでいるように見えていたのかもしれないですが、内実は不安と焦りと自己嫌悪と絶望に苦しんでいて、こんなことを書いています。

「私は不完全で、理想の自分に達しえていない。約束の時間が迫ると自信がなくなって直前にキャンセルしている。後から自己嫌悪に陥って後悔で泣いている。悲しい。つらい」。「欠点をあげれば果てしない。美点を探せど、見つからず」。「人と違おう、人と異色でいよう、そればかり、で実質がない」。「こうありたい自分と現実の姿をしばし混同している」。「愛する人がほしいと思いつつ、もっといい人が、完璧な人をと求めつつ、そのくせ自分はそれにふさわしい女ではない。だからいい人には見向きもされない」。「もっとましになろうと努力をかきたてるものがある。同時に、それが一つほころびると、恐ろしい下への加速度がかかる。こわい。地獄だ」。

書き写しながらあまりの狭量ぶりに苦笑を通り越して爆笑しているのですが、まあ、19歳なんてそんなもんです。ということを、今19歳で、「自分になんか生きている価値がない」と悩んでいる女性が万一いらっしゃるならば、お伝えしたかった。

このアホな(でも渦中は大真面目な)苦しみから抜けるきっかけになったのは、メキシコ行きでした。とにかく自分を変えたくて雑誌の端に見つけた「女性大生レポーター募集」に応募したのがやはり19歳のとき。スペイン語などできなかったけど、ほとんど度胸だけでメキシコに行かせてもらった。サバイバルのために否応なく行動するしか選択肢がない、というのは精神の健康にとってきわめて有効でした。これ以後、ひたすら行動&取材し、書くということを忙しく繰り返すことの積み重ねをしているうちに、文字通り悩んでる暇もなくなり、今に至ります。自分自身の価値がどうこうなんて問題は、世界が広がって責任が伴ってくると、どうでもよくなってきます。行動&その行動に対する反省(アクション&リフレクション)。この繰り返しは矮小な悩みをあっさりと蹴散らす力があります。少なくとも私の場合、ありました。

表向きはちゃんとしてるように見えたとしても、ついぞ誰にも「見向きもされない」ままでしたし(別にそれゆえに不幸になるわけではないということもわかりました)、当時夢見た「理想の女性」なんてものにはまったく近づけずじまいですが、自分が「果てしない欠点の持ち主」だと思いこんでいた分、いろんな女性の(あるいは男性の)、それぞれの美しいところに敏感になり、他人の美点や他人の作品の美点を見出すことは得意になりました。不思議なもので、他の人の、本人も気づいていない美点を見つけると(心にもないお世辞を言うこととは異なります)、その人はこちらに対して悪い感情はもたないものなのですね。欠点だらけの自分でも受け入れてもらえることがあるのは、その特技のおかげかもしれません。コンプレックスを強みに変えた歴代「ダンディ」に惹かれ、本まで書いちゃったのも、そのあたりが原点になっているような気がします。

もっと切実な、生活そのものの底なしの苦しみを抱えた若い女性も世界には大勢いらっしゃいます。そのような方々にとっては贅沢な戯言に聞こえるかもしれませんことをあらかじめお詫びしておきます。また、男子学生に自分を殺させた女子高校生は、表には報じられない深い特別な事情を抱えていたのかもしれません。

悩みや苦しみはひとりひとりにとって全く違うものなので、他人への漠然としたアドバイス(めいたこと)ほど<余計なお世話>なことはないのですが、「生きている価値がない」と考える18歳の問題が人ごととは思えず、ついおせっかいなひとことでした。時が来れば否応なく「お迎え」が来るので早急に自ら死ぬな、ましてや人を巻き込むな。

2 返信
  1. M.S
    M.S says:

    はじめまして。
    中野先生のブログ、いつも拝見しております。鋭い視点からの考察を含む内容やウィットに富んだ、愛のある文章が大好きです。
    今年19歳になり、焦りや不安を毎日感じているのですが、先生のお言葉に励まされたと同時に少し安堵しました。いつの日か成熟できるように、日々邁進していきます(いつまでも半熟くらいで止まってしまうかもしれませんが)。ありがとうございました。長々と失礼いたしました。

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    • Kaori
      Kaori says:

      M.Sさま コメントありがとうございます。
      お恥ずかしい19歳当時の日記の文章でしたが、少しでもなにかのお役に立てれば幸いです。
      日々、楽しんでくださいね。そしてチャンスが来たら即ゲット!できるよう、「備えよ常に」。

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