行方昭夫先生著『英文翻訳術』(DHC)。

eibun honyaku
モームの「大佐の奥方」(The Colonel’s Lady)を翻訳する過程を、試訳から翻訳にいたるまで、一文一文丁寧に解説していく。英文読解の勉強になるのはもちろんのこと、日本語の奥深さを学ぶことにもつながり、さらに、モーム特有のアイロニーや苦いユーモアを解釈するための「文学」の勉強にもなる。日本人が誤訳しがちな英文や、翻訳しづらい英語特有の言い回しをピックアップした「暗記用例文集」もついている。

翻訳された作品だけ読みたいという性急な方には、その「完成版」を通読できるというおまけもあり、さらにそれをどのように読むかという丁寧な解説もつく。

あらゆる方向から学べる、盛りだくさんな一冊。

ちなみに「大佐の奥方」は、20世紀初頭の「ジェントルマン」の一典型でもある人物像も描かれており、苦味の効いた感慨がじわっとあとをひく快作です。

女の魅力には欠ける地味な中年女とばかり思いこんでいた自分の妻が、はじめて書いた詩集がベストセラーとなり、社交界の話題となる。その内容はと言えば、妻とおぼしき女性と若い青年のエロティックで哀しく美しい愛の物語であった……。文学に縁遠く、プライドの高い「ジェントルマン」である大佐のとった行動とその心情の描かれ方が鋭くていじわる。最後の一行までパンチが効いてにやりと笑える。

何度も書いてきてますが、大学時代に行方先生に徹底的に英文の読み方と辞書のひき方を鍛えられたおかげで、今がある。字面ではなく、文脈をとらえろという考え方は、英文解釈を超えてあらゆる文脈の「読み方」の基本になっている。感謝してもしきれないほど。

 

暗記用例文から。こういう英語の言い回しはやはり、覚えてしまうのがいちばんですね。

She is all that a wife should be.(彼女は妻として完璧だ)

What he is is not what he appears to be.  (彼の実体は外見と違う)

Not a few people read from habit. (癖になっているので読書する人も結構いる)

 
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