水道の蛇口が壊れるやらまぶたにトラブル発生やらで大みそかはあわただしく過ぎようとしています…。

 

2016年もあっという間に終わりましたが、15年前の本の読者、数年前の卒業生、10年以上前にボランティアで奉仕した人、損得ぬきにサービスしてあげた人など、予期せぬ人が、想像すらしなかった新しい出会いや朗報や思いがけない仕事をもたらしてくれることが多かった一年でした。

結果がすぐに現れなくても、行動したこと、言葉にしたことは、忘れた頃に、それなりの利息つきで返ってくるものだと実感しました。

おそらく、よくもわるくもそうなのでしょう。

うまくいかなかったこと、実現できなかったこともありました。それもすべて自分の選択と行動がもたらした結果です。時間は有限。今年、あまりにも多くの文化人やミュージシャン、俳優の訃報が続きました。ひとり、ひとりのご冥福をお祈り申し上げるとともに、私とほぼ年が変わらない方もいらっしゃるという事実を、深く、厳粛に受け止めていました。いつ来るかわからない終わりのときに、やり残した仕事のことで後悔するわけにいかない。

優先順位と改善点を見極め、質・量・速度ともに納得のいく仕事ができるよういっそう精進します。

 

今年一年、多くの方々に、さまざまな場面でお世話になりました。ほんとうにありがとうございました。みなさまどうぞ佳いお年をお迎えください。

 

 今日はやはりこれで締めたい。日本未公開のブランメル伝記映画”Beau Brummell This Charming Man”のDVD。講演でよく使っている映画です。ブランメルが(摂政時代の)ジョージ4世のメイクをふきとり、かつらをとり、彼を近代的に「男らしく」変身させるシーンが最も好き。

大みそかにJ-Wave 葉加瀬太郎さんの番組 World Air Current に出演します。

12月31日(土) 19:00~19:54

さすがに一年の締めくくりのご家族団らんのお時間でしょうから、聴いてくださいとはなかなか申せませんが、お知らせまで…。

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ことしも仕事を通してほんとうにたくさんの方々とお会いし、多くの貴重な経験をさせていただくことができました。心より感謝申し上げます。これもひとえに、みなさまのご高配のおかげです。おつきあいくださいました読者のみなさまにも、お礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました。来年も身を慎み、だれかの喜びとなれるような仕事で貢献できるよう、いっそう精進します。

と締めくくる口上を述べながらもこのJ-Waveが仕事納め……というわけにもいかず、今日、明日、明後日のあと3日、ぎりぎりまで原稿を書きます。今日の山羊座の新月は、むしろスタートを促すはず。2016年のラストスパートにして、2017年のスタート。

 

 

今の仕事をするに至った経緯を他のサイトで書きかけていたのですが、諸般の事情でとりやめになりましたので、以下、こちらのブログに転載しておきます。

ケンブリッジ大学客員研究員時代のこと。

1994年の秋から、大学院の博士課程(British Studies)を休学して、客員研究員としてイギリスのケンブリッジ大学を訪れていました。ケンブリッジ大学といってもその名前の建物があるわけではなく、街の中に30といくつかの「コレッジ」が点在しています。それらの総合体がケンブリッジ大学というわけです。

私がお世話になったコレッジは2か所です。「ヒューズ・ホール」と「ホマトン・コレッジ」。ヒューズ・ホールは理系の学問に強く、ホマトンは主に教育系の学問に強いところでした。今回はホマトンでの思い出を書きます。

hommerton(Hommerton College, Cambridge)

 

日本の大学のように決まった時間に講義があるわけではなく(学部生は、大教室でいくつかの講義を受けますが)、「チューター」と呼ばれる人が、一対一、あるいは小人数を対象に、とことん個人と向かい合って指導していきます。私は一応、立場としては学生ではなく、下位の教員と「ほぼ対等」の客員研究員(visiting scholar)として来訪していたので、個人の研究はあくまで個人として責任をもっておこない、そこで生じた疑問やら見解やらを、チューターや、他の研究員たちとディスカッションして発展させていく、という表向きはゆるやかに見える研究生活を送っていました。

自由には責任が伴います。ハードに割り当てられる課題に追われるというプレッシャーはありませんが、最終的に「業績」が出なければ誰にも相手にされなくなります。Publish or Perish(書かなかければ滅びるだけ)という暗黙の掟が学問世界にはあります。限られた時間をいかに自分自身の責任で管理して効率的に成果を上げていくか、それはそれは大きな重荷を、焦りとともに感じていました。

しかも当時、私はまだ3歳だった長男を連れていっていたので、まずは自分のための時間を確保することだけで精いっぱいというところがありました。イギリスの冬は朝9時にようやく明るくなる感じなのですが、その時間に、長男をナーサーリー・スクールに連れていきます。子供にとっては言葉も全く通じない環境ですから、最初の20分くらい、その場になじむまで、一緒にいます。ようやくスクールを後にし、カレッジに向かうと10時近く。

落ち着く間もなく10:30ごろから「コーヒー・モーニング」が始まります。ホマトン・コレッジのチューターや大学院生、各国からの客員研究員たちが一室に集まり、スコーンとコーヒーをいただきながら(紅茶よりもコーヒーを好むイギリスの研究者が多かったのは、意外な発見でした)、研究にまつわるよもやま話を議論しあう場です。ここでいわゆる「世間話」をしていても別にとがめられることはないのですが、何しに来てるんだという目で静かに軽んじられていきます(笑)。昨日の研究成果の一部を披露したり、他の研究員や大学院生の話を聞いたり、チューターの意見を聞いたりしているうちに、あっという間にお昼になります。

コレッジを出て、シティセンターで軽めのランチを食べたら、午後はユニヴァーシティ・ライブラリーにこもります。図書館といっても東西南北多方向にウィングをもつ壮大な建物で、本を倉庫から出してもらう手続きも一仕事。まずは検索ワードにひっかかった本を片っ端から出してもらい、目を通して、必要とあればコピーするのですが、コピー枚数は著作権の関係で限られます。しかたがないので必死にその場で読んで、引っ掛かりを感じたところを、本の概要とともに、片っ端からメモしていく(まだスマホもない時代)。情報は少ないのも困りますが、多すぎても途方にくれるものです。当時、研究課題としてゆるやかに掲げていたのは「イギリス社会におけるジェントルマンの支配」。「ジェントルマン」というワードにひっかかった本だけで、ワンフロアほぼ占めるくらいの本があると知った時の絶望ときたら……。

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(Cambridge University Library)

そんな作業を2時間連続して集中できればいいほうで、あっという間にナーサリーのお迎え時間が迫ります。もう暗くなっている15時半にはライブラリーを出て、ナーサリーまで車を走らせ、長男をピックアップして、「セインツベリ」という大型スーパーで食料品や日用品の買い物をして帰り、食事と家事を済ませたら倒れ込むように子供と一緒に眠る…。翌朝、4時に起きて昨日のメモを整理したり、その日のディスカッションのテーマを見つけたりしていました。

そのころは、まさか、夢中で集めていた膨大な「ジェントルマン」メモが、メンズファッションの領域で役に立つなどとは夢にも思っていませんでした。今の日本のファッション誌は、スーツ姿が素敵というだけで、実態スルーで安易にジェントルマン呼ばわりしますが、本来、これは厳然たる階級が存在する国における、社会的な身分を表す概念(=大土地所有者)だったのです。

(いつか、タイミングがあえば、つづきを書きます)

なにもよりによってクリスマス当日に見なくてもよかったのだが。

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劇場は満席。

88分間のハードで緊密な物語のラストには、思わず笑ってしまった。いかなる感情に訴えるにせよ、90分ノンストップで緊張を持続させるのは並大抵のことではない。

いつもサイコーに的確なコメントで映画を評してくれるCulture Conciergeいわく、

「クリスマス向きな、ハートフルな映画だったでしょ?」

 

 

Blind man: There is nothing a man cannot do once he accepts the fact that there is no god. (「神などいないという事実を受け容れれば、人間はなんでもできる」)

このブラインドマンの不死身っぷりを一緒に「笑える」タフなセンスの持ち主と見るのがお勧めですかしらね。

 

そしてさきほどソニーピクチャーズさんからの一斉メール。

「全国でわずか33スクリーンでの上映にもかかわらず、公開10日目で早くも興行収入1億を突破する大ヒットとなりました!
12月16日(金)から18日(日)までの公開3日間の数字は興行収入33,389,460円(動員23,027人)でスクリーンアベレージは同日公開の「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」を上回る第2位!」

とはいえやはり気の弱い方は見ないほうが心安らかに眠れるかと存じます。

 

 

 

 

11日の半・分解展記念トークショーの内容の一部が、Dress Up Men のサイトにアップされました。

第一部 歴史編はこちら

第二部 テイラリングの現状と未来編はこちら

とりわけ、第二部の話は現場の生々しいお話は貴重。「手縫いの服など要らなくなる」未来に、テイラーが生き残るためにはどうすればいいのか。テイラーばかりではない。人間の手による仕事の多くがテクノロジーにとってかわられる時代に、仕事を続けていくためにはどうすればいいのか。

考えさせられました。ご覧くださいませ。

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その1)(その2)(その3)から続く

今回の最後の取材場所、高円寺の尼僧バー。中野にある坊主バーの姉妹店です。

BGMにお経が流れ、ルームフレグランス?として線香がほのかに香る、こじんまりしたバーのカウンターに立つ「尼僧」は、あれっというほど、ごく普通の主婦でした。聞けばご結婚もしていて、お子さまもいらっしゃるとのこと。口の悪いいでさんは「保育園落ちた 日本〇ね」風の主婦、というような形容をしていましたが(^^;)

尼僧といえば瀬戸内ジャッキーのような風貌の方を想定していたので、やや肩透かしでした。

この尼僧の宗派は真言宗。真言宗は「どちらかといえばゆったりしている」ので、頭髪も丸める必要はないし、結婚してても子供もいても可なのだそうです。なんだ、パートタイムのように尼僧がつとまるのか? 目指そうかと真剣に考える。

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ありがたい名前のカクテルが数種類あり、飲むだけで解脱できたり涅槃に行けたりしそうな感じ。

尼僧バーはお客様というか「信者」の夜中の駆け込み寺のようになっており、客は尼僧ママに悩みや苦しみを聞いてもらいにくるのだそうです。

「いちばん多い煩悩ってなんですか?」と聞いてみたところ、すかさず、

「愛欲ですね」

という答えが返ってきました。「出会いがない」という悩みもよく聞く、とのこと。

ちなみに、いでさんの煩悩は愛欲ではなく物欲だそうです。画伯は自由欲、金森編集長は金銭欲……。

 

当初、尼僧バーで尼さんから煩悩を叱り飛ばしてもらうという趣旨だったので、「煩悩の金字塔」コスプレがウケるかと思い、タダシ・ショージの金きらドレスに着替えていきました。靴もイヤリングもゴールドです。観音像か。現場ではかなり違和感があったようで、「カウンターの女性がガン見してましたよ」といでさん。いや気付きませんでした(鈍感なシェンシェー)。

4人それぞれの煩悩を聴いていて思ったことは、本誌ルポに書かれているとおり。

自分の中にかけらもないものに関しては、そもそも欲しがることすら知らなかったりする。

ちなみに私はたぶん煩悩が希薄です。夢見たこと、強く望んだことが叶ったという経験が一度もなかった。そんな苦い経験を何度か繰り返しているうちに、そもそも「欲」など持たなくなっていきました(最初からこれもきっとムリ、とあきらめの制限をかけてしまう、というか)。欲を自制すると、執着もなくなり、日々、あるもので足りて、案外、ハッピーに暮らせるものです。

「それはアンタが恵まれた立場だから」ということを言われたことがありますが、それは逆なのです。身の丈に合わない欲や、どんなに願っても叶わない夢をあきらめて、目の前の現実のことを損得抜きに最善化することだけを考えて行動するようにしました。その結果、思いもかけないときに、予想もしなかった方から、想定外の幸運がもたらされることが時折あった。恵まれているから欲がない、のではない。欲をなくして人に尽くしたから、少なくとも仕事には恵まれた、と思っています。

(そもそも、別の視点から見れば、私などシングルマザーの苦労人だし、将来もおぼつかない不安定な身分だし、現実には恵まれてるどころか常に崖っぷち…)

 

たとえ今は多少、状況が良かったとしても、人間界のことだからほんと、一寸先は闇。ちょっと浮わつけばこれまで築いたものすべてが瓦解してしまう。幸運をもたらしてくれるのも人間なら、人を地獄に陥れるのも人間。そんな針の筵な世界にあるからこそ、我欲を捨てて、少なくとも捨てるフリして、他人のために尽くすことが、最終的に、自分を生かすことにつながるのではないか。

おっと悪ノリしてさらに説法くさくなったぞ。

現実に煩悩で苦しまないと、ジャッキーのような重みのある説教はできないのかもしれない。それは一理あるが、古今東西の煩悩の行方の法則を学んできた学徒(古き良き時代の「文学部」の底ぢから)にもひょっとしたら尼僧の末端に加えていただくことも、ありえないことではない……と思えたことで、少し将来に希望の光が見えてきた気がします。

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解散したのは結局、12時近く。早朝の登山から深夜のバーまで、ほんとうにおつかれさまでした。得難い体験をさせていただき、楽しかったです。ルポの誌面は一生の記念にしますね。ありがとうございました。

さらなるアニヴァーサリーをめざしてがんばってください!

裏ルポ 終

【ゲストの立場から見たら現場です。勝手に書いてる裏ルポ(その1)(その2)から続く】

ひととおり全員が作り終わり、ようやく全員がほっとして座ることができる時間が訪れました。食べながら品評会と100回を顧みるの巻。

連載を続けるなかで受けたクレームやら行ってきた謝罪やらの数々も、今では半分笑い話になっている。現代の日本社会はささいなクレームに異様に過敏で、主催者側がすぐに作品を撤回したりプロジェクトを中止したりということが多々ありますが、「ナウのれん」は、クレームを何度も受けながら、がんとして連載が続いている。ある方を激怒させ、厳重な抗議を受けたときには、一度、表向きは連載中止にしたという。でもすぐに別のタイトルに変えて連載を復活したとのこと。出版社や編集部の肝の据わり方もあっぱれだし、それにめげず、ギリギリのラインで面白さを追求することをやめない画伯&いでコンビのクリエーター魂もたいしたもの。

そんなこんなも乗り越えての100回だから、偉業ですよね。

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ちなみに、男子4人はビールで。「シャンパンとのマリアージュ」料理は、ひたすら「シャンパンと白ワインしか飲まない」(←今回のキャラ上)シェンシェーが気に入るかどうかを考えて作られたのだった。ネタ的な役柄とはいえ、いやもうほんと、感動しました。役得感謝。それぞれの個性がフルに発揮されたプレゼンテーションで、順位なんてつけられませんよね。

ネタ的な役柄だからこそ、本誌のルポには冠に「美人」とつけられるとか「わたくし」語りとか、嫌がらせに近いムリもありましたが、戯画化された虚構のキャラクターということで。読者にしてみれば、非日常的なキャラのほうが面白いですもんね。

ちなみに、「中野シェンシェー」キャラをこのように書いたことで、いでさんはけっこう内心ビクついていたらしい。「怒ってない?」と心配していました。本が出てしまってからですが(遅いし。笑)

 

 

それぞれの料理ぶりから連想した単語をくっつけたリング名です。レスラーか。

ブリコラージュ綿谷(Bricola Wata)
マイウエイいで(My Way Ide)
スキルド市川(Skilled Ichi)
ビスマルク金森(Otto von Kanamori)

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私からは、連載100年を祝って、スペシャルケーキをプレゼントしました。編集部からは、ナウのれんのチケットが巻かれたシャンパンが。
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いでさん、綿谷画伯、市川さん、金森編集長、あらためて、連載100回おめでとう!

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キッチンの片付けも怒涛の速さで済ませ、出る前に記念写真。

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ここのレンタルキッチンはおすすめです。火力は強いし、あらゆる調味料や器具や食器がそろっているので、材料を買いこんで自分たちでわいわい作りながら楽しめる。お料理ぶりからそれぞれの人がらの一端もうかがい知ることができるのは、なかなか楽しい。

また来たいな!(料理男子を連れて)

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そして一行は三軒茶屋から高円寺へ向かいます。

(裏ルポは続く)

(裏ルポ その1から続く)

編集担当、市川さん作のお料理です。まず一品めは、魚料理、カジキマグロのムニエル。バルサミコ酢を仕上げに少し加えたのが工夫のポイントだそうです。このお酢の酸味によってムニエルがひきしまるとともにシャンパンと連携しやすくなり、料理とお酒の相性がぐっとよくなるのですね。なるほど、たしかに! 論理的です。
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そして市川さん二品めは、牛肉のタリアータ。中までしっかり火が通っていて、素材の味を活かした王道のおいしさ。見た目もきれい。当然、シャンパンがますます進みます。これは他のメンバーにも大人気で、あっという間にお皿が空になりました。

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市川さんはメインとしてボリュームのある魚料理、肉料理に真正面から挑んだわけですね。論理的な工夫もさしこみながら直球で堂々と勝負してくるガッツに誠実な仕事魂がにじみ出ていました。

そして三番目に仕上げてきたのは、いでさん。白菜と豚肉をミルフィユ状にして、ほぼお醤油+αだけでシンプルに蒸しあげた「白菜Nabe」です。「水を一滴も入れてないから、栄養たっぷりで美味しいんだよ、これが」という自信とともに、鍋ごと「でん!」というイメージで出してくださいました。

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たしかに、芯からあたたまり、滋養を実感できます。おいしいことにはちがいありません。……しかし、シャンパンとの相性となると? まあ、合わないということもない。どっちかといえば焼酎に合うような…。

鍋の中身が半分くらいになったところで、お豆腐と、おうどんを入れて、「二度おいしい」お料理に。

お題「シャンパンとのマリアージュ」をあっさりスルーし、わが道をいく自信作で強引に勝負をかける、ルール無用のマイペースぶり。これがやっぱり、いでさんなんだなあ。

そしてトリとして登場した金森編集長のお料理。まず一品めは、さきほどの、丁寧に下ごしらえされたビスマルク風アスパラとチーズのオーブン焼き。アンチョビーが効いた絶品です。アスパラの歯ごたえが快く、シャンパンとのマリアージュという点でも合格。

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そして金森編集長2品目。豚肉に切り込みを入れたり、フレッシュオレンジを絞っていたりと、やはりバックステージでの仕込みがとても凝っていて、料理する姿が絵になるし、プロ級だなあと眺めていたのですが、

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仕上がってきたのが、豚肉のオレンジ&ハニー&マスタードソースがけ。シャンパンといえばフルーツと相性がよい。だから、オレンジを加えることでシャンパンとのマリアージュは成功するはず」と金森編集長。きわめて論理的なのです。

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しかも上質な粒マスタードのぴりっとした辛みも効いて、非常においしい。ポークはシャンパンと合わせにくいという偏見が一掃されました。「これまでシャンパンと一緒に食べたポークのなかではいちばんおいしい」と絶賛しましたら、すかさず、いでさんが一言。「でも、ごはんには合わねーよ!」 それを受けて綿谷画伯「だからあ、今回はシャンパンとのマリアージュだっつーの!」 さすが負けず嫌いのいでさんでした。

なんのかんのと互いに言い合いながらも、画伯はしっかりといでさんの鍋を「おかわり」。口では言いたい放題でも、行動で愛を示す。このあたりがコンビ長続きの秘訣なんだろうなあ……と見ているほうまでほのぼのした気持ちに。なんでもコンビ結成23年。ちょっとした夫婦以上です。

というわけで金森編集長に戻ります。高級素材をおしみなく使い、バックステージで下ごしらえを華麗におこない、論理的に組み立て、時間をたっぷりかけて自信作を出す。あとで知ったのですが、自分以外のメンバーには経費をできるだけ抑えるようにとの指示があったらしい。笑。編集長の特権をフルに行使した専横的パフォーマンスで勝ち抜けるのが金森流?!

(裏ルポはまだまだ続く)

3日(土)昼は、横浜の山手にあるイギリス館で、ヴィクトリアン・クリスマスの講座を受けてきました。

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イギリス館の前には、ロンドンタクシーが。現在はロンドンタクシーの製造が中国に移ったとのこと。この車はまだその前のもの。所有者は、下の写真の、この日の講師、土橋先生。

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ヴィクトリア時代のクリスマスがいかようであったか?をあらゆる面から語る講師は鎌倉アンティークスの土橋先生。まったく知らなかった情報のオンパレードで、目からうろこが落ちまくるとはこのこと……。インテリアやアンティーク、料理や音楽から見たイギリス文化は、また奥行きがあって面白い。いやもう、どれだけ勉強しても知らないことがあるというのは、おそろしくて、とてもうれしいことでもありますね。

以下、学んだことのランダムなメモです。

・ヴィンテージ、アンティーク、ピリオド、この各違い。
・Whatnot, Loo Table, Sotherland Table, Canterbury の実際の形
・Clockの大きさの違いによる呼称
・ウレタン塗装(現代)とシェラック塗装の違い。
・シェラック塗装はなぜアンティークになりうるのか。
・シルバープレート(銀メッキ)は1850年以降
・ツリー売りの掛け声
・暖炉への装飾、シャンデリアの装飾、壁の装飾
・クリストリウム(写真画)
・宗教画、肖像画から風景画へとステイタスが変わったのは、ターナーとコンスタブルのおかげ
・マホガニー、ローズウッドという輸入材の力
・和室に掛け軸、洋室に油絵
・照明は上、中、下に
・ポッシュ感を出すには本も重要。ライブラリは富の象徴。「本を貸そうか?」(=本は所有しているけど読んでないのが地主階級)
・オフィクレイド(楽器)
・ジョン・ブロードウッド・サンズ 英国王室御用達のピアノ ダイアナ妃の伝記映画では、日本人に理解されないので、このピアノとわかる重要な部分がカットされていた。
・Dennis Servers’ House ジョージアン・スタイルの家 見学可能! イギリスが好きすぎるアメリカ人が購入
・Drawing Room とは引き込む部屋であること。

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・イギリス館の各部屋が、ヴィクトリアン・クリスマス仕様に飾りつけられていてうっとり。

12-3-2016-9ご参考までに「イギリス館」とは。

昭和12年に、上海の大英工部総署の設計により英国総領事公邸として建てられました。「港の見える丘公園」内にあり、高台で、訪れるにはちょっと不便です(私は桜木町の駅からタクシーで行きましたが、バスもあるようですす)。鉄筋コンクリート2階建てで、階段にはカーペットが敷かれております。玄関脇にはめ込まれた王冠入りの銘版(ジョージVI世時代)や、正面脇の銅板から、旧英国総領事公邸であったことがしのばれます。

昭和44年に横浜市が取得。1階ホールはコンサートなどに、2階集会室は会議などに利用されているそうです。また、平成14年からは2階の展示室と復元された寝室を一般公開しているとのことで、今回は2階の各部屋が、鎌倉アンティークスさんによりクリスマス仕様のデコレーションを施されております。

あと一週間、この優雅な飾りつけが見られます。ぜひに。

*実はこの話題はほかのサイトの連載ブログで書こうと思っていたのですが、じっくり座る暇がないほど仕事が多いうえにまた知恵熱?が出てダウンしたのであきらめました。メモ程度の中途半端な段階ですが、ぜひともイギリス館をご覧いただきたいので、中途半端なまま、こちらで公開することにしました(遅い!って)。
「ナウのれん」裏ルポは、私がダウンしていても自動的に公開されます。どうぞお楽しみに。

 

 

Begin 名物連載「ナウのれん」。100回記念ということで、ネタとして登場すべく?!ゲストとしてお招きいただきました。本誌が発売になりましたので、この裏ルポも解禁です。実は記憶が生々しいうちにと、お招きいただいた翌日の11月6日にすでに書き上げておりました。4回シリーズでお届けします。今日から4夜、20:00時に自動的に公開されます。

さて。取材が行われたのは11月5日土曜日。特別拡大バージョンのための取材スケジュールは次の通り。金森編集長、担当編集者の市川さん、いであつしさん、綿谷画伯の4名は、早朝から高尾山に山登りしたあと温泉につかり、その後さらに電車に乗って三軒茶屋まで来て食材の買い物、それを抱えてレンタルキッチンでそれぞれが2品ずつ料理を作り、さらに最後は高円寺の尼僧バーで一日を締めくくる。相当、ハードなスケジュールですね。

私はレンタルキッチンからの参加です。4名それぞれが、「シャンパンとのマリアージュ」をテーマに料理を作ります。私はそれを味見してコメントする……という役回りです。

なぜにシャンパンとのマリアージュかといえば、シャンパンと餃子のマリアージュをルポした回をふまえているわけですが、「中野香織はビールを飲まない。シャンパンと白ワインしか飲まない」という都市伝説(?)がまことしやかに出回っているからでもあるらしい。いや、ビールも飲むし、学生との飲み会では居酒屋のなんでもありコースだし(こういうときは生ビールとハイボール)。世間のイメージというのはかくもいい加減に作られるもんです。

世間のイメージといえば、数年前に「ナウのれん」忘年会に参加したときにドロンジョ系のコスプレをしていったことがあり、それ以来完全にそっち系の人と誤解されがちでした。今回はそれを裏切るよい機会と思いましたので、メイド服で参加してみました。

メイドなのに働かないし従順じゃない。シャンパンを飲みながら男子4人の働きぶりを鑑賞しつつあーだこーだと上から目線で批評する黒メイドというわけですね。

さて、4人がキッチンのなかでさっそく料理にとりかかります。4人が協働して前菜からメイン2種、デザートまでのコースメニューをつくる……という発想はまるでなく、めいめいが勝手に、「シャンパンとのマリアージュ」にふさわしい料理を考え、どれが一番おいしいのか競うというのがこのセッションのテーマ。

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このキッチンの火力はきわめて強力です。「これならチャーハンを作ればよかった」と言いながらなぜかうどんをゆでているいでさんと、その隣でシンプルなおつまみを手早くしあげていく綿谷画伯。

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アスパラのしたごしらえを丁寧に進めていく金森編集長。根のほうも柔らかく仕上がるようにと表面をピーリングしていらっしゃいます。かなり本格的。begin-14
市川さんは大きな肉の塊を手慣れた様子で転がし、焼き目をつけていらっしゃいます。日頃から料理していると見える安定の手つき。次第に集中してくると口数も少なくなっていく4人。それぞれが「ゾーン」に入っているのか、緊張感も漂ってきます。このころになると、さまざまな料理が仕上がっていく過程で立ち上る香りがまざりあい、調理で生まれる熱もよい感じで空気を満たしていきます。

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待っている間も退屈しないように、おつまみを用意してくださる金森編集長のこまやかなお気遣い。高尾山や温泉の話を聞きながらシャンパンをグラスに2杯ほど飲んだところで、次々と料理が仕上がってきます。

いちばん早かったのが、綿谷画伯の「餃子の皮のピザ」。begin-3begin-16

ピザの台を餃子の皮で代用してあるのですね。下はチーズに海苔がかかっているバージョン。意外とシャンパンにあうし、美味しい。なによりも早い!begin-18綿谷画伯のもう一品は、マッシュルームと魚介のアヒージョ。手前のフライパンの料理です。こちらも手早く仕上げてくださり、あつあつを美味しくいただきました。ピザもアヒージョもイタリア料理系なので、シャンパンとの相性もばっちりですね。

手早く、手堅く、軽やかに器用仕事をして、外さず確実におもてなし。これが綿谷画伯流ですね。(念のため:器用仕事とはブリコラージュのことで、なければあるもので代用するという人間の智恵。ピザ台の代わりに餃子の皮を使うという工夫がよかった。「餃子ルポ」の回に対するオマージュにもなっているし)

そして次、アヒージョのフライパンの横に「どうぞ!」と料理を出してきたのは市川さんでした。その料理とは……

次回へ続く。明日の20:00をお楽しみに。
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Begin 2017年2月号 本日発売です。begin-2017-2

綿谷画伯&いであつし文豪による連載「ナウのれん」が100回目を迎えました。

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100回記念の拡大版に、ゲストとしてお招きいただきました。「中野香織シェンシェー」キャラとして登場しております。

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全容はぜひぜひ本誌をご購入のうえ、ご笑覧くださいませ。なかなか笑えます。

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それにしても、彼らから見た「中野シェンシェー」キャラと、自分の実態が相当違う気がしております。キャラなのでおもしろくおかしくデフォルメされてはいることはわかってますが。

まあ今回はこのようなキャラクターということで。それに合った(合ってるのか?!)コスプレしてますしね。

自己イメージは世間のイメージとずれているものだということをあらためて自覚しました。そういえば私のデビューはルポライター。(メキシコの旅ルポを19歳で敢行。)こういうレアな体験は、自分の言葉で書きたくてうずうずするのです。本誌が発売になったので、裏ルポも解禁。今日の夜から4回シリーズで、ゲストの目から見た「裏ルポ」をお届けしますね!
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日刊工業新聞から取材を受けました。大学時代のこと、その後のキャリアについて、仕事の哲学など。13日、青山カフェラントマンにて。

同新聞社の記者、六笠友和さんに取材していただきました。ご縁をつないでくれたのは、国際日本学部第三期生(卒業生)で、現在、同新聞社に勤めている月岡亜梨沙さんでした。

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思わぬ久々の再会に喜ぶ! 私の教えを、こっちが忘れかけていたことまでしっかり覚えていてくれて、とてもうれしかったです。「カオリズム」(笑)と一期生によって呼ばれるようになったマインドの持ち方は、女子学生のほうが覚えていてくれることが多いようです。確かな手ごたえとともに生きるために、自立し、人と運を味方にしていく行動と表現の心構え、みたいなもの(主に私の痛恨の失敗の数々から導かれていますが(^^;))。OBOG会では、これを覚えている学生に、逆に思い出させられます。

 

記事は来年1月早々に掲載とのこと。楽しみにしています。

 

 

国際日本学部の話ついでに。2016プレゼミ(小人数の教養講座)、一年間がんばりましたおつかれさま!の打ち上げの模様。国際ニュースとプレゼンテーションの技法、そして映画の見方を学んだ今年のプレゼミも活気があふれすぎるほどで、毎回、うるさいくらいの発言が飛びかい、笑いが絶えず、発見が多々ありました。濃い時間のなかで築いた絆のご縁は末長く続く…… でしょう。

中野駅前の「とり鉄」にて。12-13-10

15日付朝日新聞夕刊ファッション面「私にフィット 楽しむオーダー」という記事で取材を受け、コメントが掲載されております。ご笑覧くださいませ。asahi-order-2asahi-order-1

シスレーの新製品発表会にお招きいただきました。南青山スパイラルホールにて。

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フィトブラン・ブライトニング・デイリー・デフィエンス。美白・保湿・保護・下地の全ての効果を備えた、日中用総合美白美容乳液です。SPF50 PA++++ という強力な防護効果なのに、白浮きせず、ラベンダー、マジョラム、セージのアロマティックな香りでのびもよく、快適なつけ心地です。癒しという効果も含めれば、一本で5役?!

都市部に暮らす女性は、地方より、シミ発生率が20%も多いのだそうです。紫外線ばかりでなく、大気汚染、ストレスといったものもメラニンを発生させる刺激要因になるのだとか。

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目に見えなくても、毛穴から浸透するという微粒子汚染物質の存在を知ったからには、早目に防御するにこしたことはないですね。

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2017年2月1日発売。50mlで29,000円。
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シスレー・パリ アジアパシフィックのマネージング・ディレクター、ニコラ・シャニエ氏です。

11日(日)に行いました半・分解展トークショー 。

専門度の高い、長時間にわたる話にもかかわらず、約100名もの熱心なゲストにご来場いただきました。この日のために鹿児島から飛んでいらしたお客様もいらっしゃいました。

濃い2時間半でした。ご来場のみなさまありがとうございました。

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 (左から テイラリングコンサルタントの吉田大輔さん、パンタロナイオの尾作隼人さん、中野、長谷川彰良さん )
展示会場には人がひしめき、写真を撮ったり、議論し合ったりする活気ある光景が見られました。「分解してみる」って、けっこう男の子心をくすぐるものなんだ……ということを、ゲストを観察していて感じました。
 
ひとりのマニアックなパタンナーの情熱をつきつめた、前代未聞の展覧会、企業のスポンサードもないのにこれだけ人を集めたのは大成功と言っていいと思います。彰良くんおめでとう!
ストーカーといってもかならずしも悪い例ばかりではなく、ごくまれに、お宝のようなストーカーもいる。
寛大になること、オープンでいること、熱意には耳を傾けてみること。を心がけたことによって、押しかけ弟子からたくさんのことを学びました。笑
こんな志と情熱の持ち主につきまとわれるほどの仕事をさらにさらにしていかなくてはね!
尾作さん、吉田さんの現場のお話も生々しく、多くの業界にあてはまる話として、示唆に富んでました。

 

またどこかで機会に恵まれれば、お二人のお話の概要を紹介したいと思います。

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(手前のクッキーは、今回の展示記念に彰良くんが作ったヴィンテージ服クッキー。背後にあるのは、鹿児島からのお客様にいただいたおみやげです。ありがとうございました!)
ゲストのお一人からの質問。フロックコートが第一次世界大戦後に着られなくなったのはなぜか? これに関して、時間ができしだい調べてみますね。しばしお待ちくださいませ。

反田恭平&バティストーニ指揮の東京フィルによるラフマニノフ。私なんかが自主的に宣伝しなくても勝手にベストセラーになっているわけですが、やはり何度聞いても力強くて好き。

パガニーニの狂詩曲は講演のときのBGMにしているし、ピアノコンツェルトNo.2はおそらく生涯でいちばんたくさん聴いているクラシック。脳内を現実から引きはなし、ロマンティックに変換するときの必需曲です。ソリタ&バッティによるラフマニノフは、やや現実味も残す、パワフルなロマンティック、というイメージ。ロンドンフィルのような華やかさ全開もいいけど、これもまた良い感じ。

必勝曲が揃ったこのCDは、2016-17AWシーズンのテーマ曲にさせていただいています。現実の生活が殺伐としてくると、脳内がバランスをとるかのようにこういう方向を求めるようですね。

 

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昨年の函館ラサール高校の国語の入試問題に、拙著『ダンディズムの系譜』から出題されたことを受けて、来年発売の高校受験用の問題集に一部抜粋が収録されることになりました。

つまり、高校受験をめざす中学生必読参考書になったわけですね(←強引すぎる解釈。笑)

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ダンディズム(史)を語るのに、葉巻を片手にした北方謙三さんのような重厚な語り口でなくてはならない、というステレオタイプに固執すること、そのことじたい、私が「滑稽だ」と感じていることです。いや、北方謙三さんは全く悪くないんですけどね。しかるに、そのようなロマンティックなイメージにとりつかれるあまり、それを壊されると不快を示す男のいかに多いことか。歴史をきちんと知れば、そのイメージの起源がどこにあるか、いかに歴史の中で歪んだものであるのか、わかるはずなんですけどね。

オリジナル・ブリティッシュ・ダンディは、重たくないんです。

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(Count D’Orsay.  Photo from Wikimedia Public Domain)

 

時が、しかるべき評価を下してくれる。発売後、7年経っても重版が出て、このような形で公に評価していただけるというのは、非常にありがたいこと、と心より感謝しています。

 Precious 2017年1月号 発売中です。

別冊「ゲラン 美学の結晶『オーキデアンペリアル』洗練の美肌伝説」がついています。今年の連載「輝き続ける女性たち10人の美の秘密」をまとめた小冊子です。

光栄にも第2回目に登場させていただきました。今回の冊子にも収録されています。

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(リスペクトしてやまないデザイナー、芦田多恵さんも10回めに登場!! ご一緒できるのはたいへん光栄です)

それぞれの方のお話をあらためてじっくり読んでみて、ひとりひとりの考え方に感銘を受けました。「人生は一期一会と申しますが、舞台も同じ。同じ舞台は二度とありません」(尾上紫)。「画面に映らない部分でどう生きるかが勝負」(安藤優子)。「奇跡と思われることも、実は積み重ねと選択の結果なんですよね。選んで選ばされて今があり、さらにその先に、自ずと未来が広がっていく」(村治佳織)。「散らしの美、崩しの美、墨でにじんだりかすれたり……書にはさまざまな美があって、美しさは『きれいに整っている』だけとは違うのです」(木下真理子)などなど。

美人のカテゴリーにも入らない私などがこんなところに登場するのは場違いな気もしますが、仕事を(途中の困難や試行錯誤も含めて)ひたすら楽しんできたことで選んでいただいたものと受け取っています。まだまだ修行の途中で、大成する気配はまったくありませんが、誰かに喜んでいただけるような成果を、ひとつひとつ、積み重ねていくことができれば幸いです。ちょっとこっぱずかしいところもありますが、お手に取る機会がありましたら、ご笑覧くださいませ。

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フェアファクス公式HPブログを更新しました。こちらです。

グレーゾーンをあやつる「ピンク・ジャケット」の話。キツネ狩り法案が成立しているのにキツネ狩りがなくならないイギリス紳士文化の摩訶不思議。そもそもなぜこれを「ピンク」と呼ぶのか。
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お時間の許す時があればご笑覧くださいませ。

 

Men’s EX 2017年 1月号 発売です。mens-ex-1

スーツの着こなしとマナー大特集。監修という形でご協力させていただきました。

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とりわけスーツ初心者にお読みいただけると嬉しいです。

横浜信濃屋さん 創業150周年記念クリスマス&信濃屋レジェンド白井俊夫さんお誕生日、ダブルのお祝いパーティー。3日(土)、横浜みなとみらい リストランテ・アッティモにて。

150周年を記念して、創業当時に信濃屋さんが作っていた鹿鳴館時代のドレスが復刻されました。

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オールシルクの復刻ドレスを、パーソナルスタイリストの政近準子さんが着用したほか、信濃屋のお客様、スタッフ、そしてどさくさに紛れて私も、鹿鳴館スタイルのドレスを着用させていただきました。

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バッスル(後部をホッテントット風に拡張させる装置)を着用し、そのうえからスカートをかぶり、ボディス、ジャケットを着用する。仕上げはヘッドピース。一人では着られません。スタッフ二人がかりでの着付けです。

小物もポイントで、パラソル&白手袋、または本&白手袋をもつのがたしなみだったとのこと。アートなパラソルも、ひとつひとつ、手作業で仕上げられています。

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(左がオールシルクの貴重な復刻版ドレスを着る政近さん。右はファッションレスキュー頼富さん。男性の社交スーツも色とりどりで、美しい風景でした。)

これを着て2時間半ほど会場で社交したり写真を撮られたりと過ごしていたのですが、なかなか気分が高揚するものです。当初、懸念していたほど苦しくもなく、むしろ意外と着心地はよかったです。(立ちっぱなしでさすがに足はいたくなりましたが…(^^;))

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うしろが盛り上がるバッスルスタイルを間近に見て思ったこと。横に並ぶと、そのくびれに思わず腰に手を回したくなりました。女の私でもそうなのだから、ましてや男性は……。笑 横&後ろ姿に誘惑を生む仕掛け、これでなかなかセクシーなドレスであったのだなあと感じ入った次第です。

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メンズファッション業界重鎮の鈴木晴生さま、白井俊夫さま、赤峰幸生さまによるトークショー。

最後は恒例の、白井さん演奏によるカントリーミュージックのご披露もあり、二重のお祝いにふさわしい会として華やかな盛り上がりでした。

鹿鳴館ドレス復刻コレクションに関しては、こちらに詳しいので、ご覧くださいませ。

横浜信濃屋さま、あらためまして、150周年おめでとうございます。白井さま、お誕生日おめでとうございます。貴重な復刻ドレスを着る機会を与えていただき、着付けをおこなってくださった信濃屋スタッフのみなさま、かけがえのない時間をともに過ごしてくださったゲストのみなさま、ありがとうございました。

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どの世界でも同じだと思いますが、中ではきわめて大きな違いがあるのに、外から見ている人にとっては、同じようなことに携わっているようにしか見えないことがあります。

その昔、叶恭子さんは、あるセクシータレントと比較されてひとこと、「カテゴリーが、ちがいます」とさらりと一蹴したことがありましたが、ときどき私も、そのように言いたくなることがあります。笑

 

ファッションを研究する、ないし論じる と一口に言っても、実に多様なアプローチがあります。

・ビジネス、産業という観点から研究する(そのなかにも経営・製造・流通・マーケティング・ブランディング・広告・宣伝など細かな分類がある)

・スタイリングという観点から具体的着こなしのルールや方法を論じる

・クリエーション、制作という観点から論じる

・「ファッション・メディア」としてトレンドを創り出す

・ジャーナリスティックにトレンドを調査し、分析し、伝える(モードとストリート、メンズとレディス、都市と地方、日本と海外においてはその方法も伝え方も異なってくる。また、ジュエリー、時計、靴、ヘア&メイク、美容など、ファッション業界とはまた違う独自の業界を築いているジャンルもあり、その扱い方もさまざま)

・アカデミックに考察する(その方法においても、美学的アプローチ、哲学的アプローチ、社会心理学的アプローチ、政治・経済学的アプローチ、文化史的アプローチ、ジェンダー学的アプローチ、倫理学的アプローチなど実に多様)

ほかにもいくつかカテゴリーを設けることができるかと思います。また、厳格に棲み分けがなされているわけではなく、いくつかの領域を横断したりすることも多々あります。私はそのすべてに対し、敬意を表してきたつもりです(たとえ理解が及ばないとしても)。

しかるに、現場(という表現が最適かどうかはわかりませんが)の方はアカデミックな言説に対し「机上の空論」呼ばわりすることが多々あり(私自身が実際に何度か投げつけられました)、文献に基づく議論を主とするアカデミズムの方は、ファッションの現場のありかたを軽視する、ないし関与しない態度を(とくに悪意はなく)貫く傾向が少なからずあります(大昔の話ではありますが、私自身が論文審査でそんな言葉を投げつけられました)。

学生には、できるだけ多くの視点からものごとを見てほしいと願っているので、毎年、異なるカテゴリーから、その人らしい活躍のしかたで社会に貢献している方をゲスト講師としてお招きしています。これまでご来校くださったゲストの方には感謝してもしきれません。それぞれの領域で活躍する方には、惜しみなく敬意を払っていますし、仲良くおつきあいもします。

ただ、異なるカテゴリーの仕事を比較してどうこう言われても……やはり「カテゴリーが違います」とお伝えせずにはいられないこともあります。

 

全方向に気を配るあまり、やや歯切れの悪い表現ですが、たまのつぶやきということでご寛恕。

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