原題はMr. Turner. 「ターナー、光に愛を求めて」。19世紀初頭、ロマン派の画家ターナーの生涯を、マイク・リー監督がティモシー・スポール主演で描く。マイク・リーだから「ど」がつきそうなリアリズムで人間のいいところにも醜いところにも若干のアイロニーをもって迫る。女優をきれいに撮ろうなんてことはしていない。19世紀のコスチュームもシワや痛み方も含めリアリティたっぷり。150分、ずっしり重くて深い。

 

父親が理髪店を営んでいて、母親は精神を病み病院に入れられていた。家族に対する冷淡さも奇人すれすれ。40年も仕えたというメイドに対する扱いにしても、いきなり「トイレ代わり」にもする。晩年、出会った未亡人の口説き方に呆れる(ほほえましいが)。

でも画家としての敵対者や嫉妬を向ける者に対する態度、カネだけで自分の絵を買おうとする成金に対する態度はヒューマニスティックで大物感あり。嵐を描くために4時間船のマストに縛り付けられて観察するとか、アクションペインティングばりのパフォーマンスで魅了するとか、名高いエピソードもリアルに再現。

絵の具の調達から、光の表現方法、スケッチのしかたまで、あの名画の数々をどうやって描いていたのか、その背景がわかるのは非常に興味深い。人によって多様な見方ができる映画。150分と長いけど。ラスキン、サッカレー、コンスタブル、ヴィクトリア女王&アルバート公などなど、当時の美術界やセレブリティのことをある程度知っていると、よりいっそう楽しめる。調査が細部にいたるまで丁寧。ラスキンとの議論はかなり笑えました。

 

当時の貴族(もしくはそのライフスタイルを模倣したい中産階級)のお屋敷の壁には、絵をすきまなく飾ることがステイタスだった。長らく宗教画、肖像画の価値が高かったのだが、ターナー以降、風景画の価値が上がる。

ということを、年末のイギリス館で鎌倉アンティークスのオーナー土橋さんから伺っていたのでした。それを知るとなぜ絵画の需要があれほど高かったのかということもわかる。

写実なら写真に負ける。写真の時代になっても絵画が芸術として永遠の命を保つ理由のヒントが随所にちりばめられている。

 

 

 

 

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