「怪物はささやく」(A Monster Calls) 。Gaga 試写室にて。

J.A.バヨナ監督。主人公のコナー少年にルイス・マクドゥガル、難病で死にゆく母にフェリシティ・ジョーンズ、そりの合わない(でも寛大で思いやるのある)祖母にシガニー・ウィーヴァー。そして怪物の声がリーアム・ニーソン(家族写真のなかにちらっと登場?)。

© 2016 APACHES ENTERTAINMENT, SL; TELECINCO CINEMA, SAU; A MONSTER CALLS, AIE; PELICULAS LA TRINI, SLU.

どこにも居場所がなく、悲惨すぎる状況にたったひとりで耐えきれなくなっている少年の心に寄り添い、人間の真実、複雑で難解な真実の物語を語っていくモンスター。

真・善・美や正義の物語の価値が完全に崩壊し、嘘とでたらめが公然と跋扈する「オルタナティブ・ファクト」の時代に、ひときわ染み入る物語。モンスターが語る昔々の物語の部分は美しいCGで描かれる。それぞれの物語が「すっきりしない」結末だからこそ、リアリティがあり、あとあとまで尾を引きそう。

少年はものを破壊しつくす。少年は突発的に暴力的になる。少年は怒りをコントロールできない。少年は逃げて行方不明になる。男の子を育ててきたすべての母は経験していることである。それでも周囲は「罰しない」。少年にはそれが必要だと知っているから。そんな周囲の大人の描かれ方も優しい。

 

Conor: Your stories never made sense to me.
(君の物語はぼくには理解できない)

The Monster: Because humans are complicated beasts. You believe comforting lies, while knowing full well the painful truth that makes those lies necessary. In the end, Conor, it is not important what you think. It is only important what you do.
(人間は複雑な動物だからだよ。人間は安心できる嘘を信じる。そんな嘘を必要とする痛ましい真実を十分わかっていながらね。コナー、最後の最後に大事なのは、なにを考えるのかではない。なにをするのかだけが大事なんだ)

Conor: So what do I do?
(それで、なにをすればいいの?)

The Monster: What you did just now. You speak the truth.
(たった今やったことだよ。真実を語るのだ)

Conor: That’s all?
(それだけ?)

The Monster: You think it’s easy? You were willing to die rather than speak it.
(簡単なことだと思うか? 真実を語るくらいなら死んだ方がましだと思っていたくせに)

心の真実は、複雑で、あまり好ましいものではない。語る人は、往々にして、バッシングされたり、理解されずに透明人間にされたりする。それでも真実を語ることが本物の、最後の、大きな癒しになり、それだけが未来の希望を生むということをモンスターは教える。そしてモンスターとは…。

 

難解で醜く、エゴイスティックで暴力的で、不条理で哀しいヒューマニティの真実に優しく、丁寧に、美しく寄り添う映画。

 

6月9日(金) TOHOシネマズ みゆき座 他 全国ロードショー
*Special Thanks to “Maison”.

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