バッソ要塞へ戻り、ピッティ展示会ブースめぐり再び。


外気温35度のなか、いたるところで撮影がおこなわれています。こちらは動画の撮影。歩く姿や帽子に手をやる姿も、みなさん決まって(決まりすぎて)ます。

ひときわ多くの人が訪れていた、ポール・スミスのブース。彼はイギリス人ですが、ロンドンコレクションではおこなわず、ピッティに来るんですね。ピッティのほうがやはり商業的にもリターンが見込めるのか、イギリス人デザイナーやイギリスブランドのなかには、ロンドンではとくに何もせず、ピッティに力を入れているところが少なくない。ブースにはロンドンの著名なブランドがいくつもありました。気鋭のJ.W.アンダーソン(英)も今回、ピッティでショウをおこないました。J.W.アンダーソンに関しては、ミハラヤスヒロも「注目のデザイナー」として名前を挙げていましたが、今回のショウではかなり強気で、観客数を絞り、招待状を送ったところにまで「送りましたが間違いでした。来ないでください」というメッセージを送ってきたらしい。失礼だと怒るジャーナリストもちらほら。こういう対応もブランドイメージを左右します。ひょっとしたら、「怒らせる」ことで何かのブランド価値を発信しようとしていたのかもしれません。今後どうなるか、徐々に明らかになってくると思います。

さて、ポールのブースです。






展示作品も密集、ゲストも密集。そのなかに何気なくゲストに混じっているポール・スミス発見。左から2人目。


しっかりデザイナーと記念撮影。笑

いいかげんこれ以上歩けなくなったところでこの日の取材は終了。

着替えて地元のレストランへ。Hiromi Asaiさんと彼女の作品のために服地を作った丹後の服地屋Yamamotoさん、そして靴デザイナーKatsukawaさんと、インタビューを兼ねて夕食。詳しい内容は後日。



そういえばフィレンツェに来て初めてまともにレストランで食事をしたなあ。あとはプレス用のあわただしいフリーランチとかパーティーフードやサンドイッチばかりだったような。写真のTボーンステーキはフィレンツェ名物で、5人ならなんとか食べられるだろう、と。



出展の苦労や服作り・生地作りの苦労などうかがいつつ、楽しく過ごさせていただきました。

フェラガモミュージアム。

フィレンツェにおけるフェラガモの影響力の大きさはいたるところで感じる。フェラガモが経営するホテルが数件、レストラン、ワイン、ファッション、などなど。

この建物はフェラガモが買い取ったもので、本社オフィスも美術館もこの建物のなかにある。

美術館のテーマは随時変わる。今回は1927年。これはフェラガモがアメリカからイタリアに帰国した記念すべき年。船での帰還なので、展示においても航海がイメージされている。


靴がみんな小さい…。足が小さかったのだろうか。



20年代といえば、このシルエットですね。頭はボンネット、ストンとしたギャルソンヌスタイル。


当時のセレブリティたち。

フェラガモのほか、今回は時間がなくて観られなかったのですがグッチも展覧会をおこなっている。そもそも町中が芸術的な雰囲気。


コーディネーターMayumiさんのパートナーが勤務するホテル、Tornabuoni Beacci のテラスで少し休憩。ここがもうなんとも雰囲気のある素敵なホテルでした。イタリア名をもつ日本のジャーナリストも常宿にしていらっしゃるとのこと。


世俗の時間の流れが感じられない、別世界。


少し英気を養ったその後、某ブランドのファッションショーを見るために、酷暑のなかシャトルバスでレオポルダ駅まで。レオポルダ駅といっても電車が止まるわけではなく、上の写真ですが、中も格納庫のようで、歴史的な建造物らしい。(こちらのショーに関しては、座席の割り当てられ方において運に恵まれず、よく見えなかったのでコメントを控えることにしました……。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14日はフェデリコ・クラーディのショウから。場所はバルディーニ美術館。画家からキャリアを始め、美術商になったバルディーニ氏が、昔の館を修復し、美術館としてよみがえらせた建物という。


こんなところで生活すると、いやおうなく美意識が鍛えられますね。美術が生活や人格の一部になってしまう。

9:30スタートとインビテーションに書いてありましたが、実際に始まったのは10:30過ぎ。コーディネーターさんによれば、時間の感覚は「そんなもの」だそうです。


スタンディングのゲストが見守る中、裸足のモデルたちが歩いていく。どこからがランウェイでどこからが観客側か、すべてが一体となったような雰囲気。


観光地につき記念写真。歴史的な建造物をファッションの舞台として紹介していくのもピッティの役割。フィレンツェならではの建物でした。それにしても朝から待ちくたびれ、立ちくたびれ……。

 

Baguttaの時点ですでに20時すぎ、日本にいれば当然、本日の業務終了としていい時間なのですが、夏至前後のヨーロッパ、まだ外は明るい。これで帰らせてはもらえず、さらにこれからHugo Bossのショー会場へ移動します。

この日(13日)の朝はロンドンにいました。疲労もとうに極限超えしていますが、経験的に、極限超え、限界超えをすることによって次の次元に行けることも知っている。(不本意な仕事であれば過労死してしまうかもしれないというぎりぎりのところなので、すべてのケースにあてはまるというわけではありません。) もうこんな無茶ができるのはあとどれくらいだろうと思いながら、とりあえず、ほとんど意地だけで行く。


会場は、閉鎖取り壊しが決まった煙草工場。建物の中からの照明の演出が考えつくされており、映画の世界に入ったような錯覚を覚えます。





幻想的で退廃を感じさせる場所に似会うクールなコレクションでした。


終了後はパーティーフードとお酒がふるまわれます。

日本ではかえってなかなかお会いできないファッションジャーナリストの方々とお話することができるのも、ファッションウィークや見本市の楽しみですね。左からコーディネーターのMayumi Terashimaさん、中野、世界各地のファッションウィークを飛び回るYu Masuiくん、そしてジャーナリストのTakuro Ogasawaraさん。それぞれ率直に本音を語る方々で、疲れも吹き飛ぶひと時を過ごさせていただきました。

ラルディーニ、ブルネロ・クチネリはじめ日本にも人気のイタリアブランドのブースを回り、デザイナーやディレクターにご挨拶をしつつ最新作を取材。

クリエイティブ・ディレクターのルイジ・ラルディーニ。ラルディーニはファミリービジネスで、会場でも兄弟何人かでいろいろ言い合いながら楽しそうに。

クチネリのブースは社員?と思しき人が大勢。ソファに座っている左側の方がブルネロ・クチネリ氏。

クチネリのコレクション。色使いがうっとりするほど美しい。

いい加減歩き疲れてきたところで会場の終了時間。


ぞろぞろ出てくるイタリアのファッション関係者の静かな迫力。

その後、急いで着替えて、バグッタのプレゼンテーションへ。



会場はウェスティン・エクセルシオール。

ここは1年半前に泊まったホテルで、ほんとうに居心地のいいホテルでした。

今回もできればこのあたりに泊まりたかったのはやまやまですが、ピッティの時期はホテル争奪戦で、コーディネーターのMayumi Terashimaさんによれば、「みなさん、お帰りになるときに、来年のホテルを予約していかれます」。1年前からすでによいところは埋まっているというわけです。

このたびのピッティ行きが決まってホテルを手配してもらったのが1か月ちょっと前で、そのころに空いているホテルとなると、信じがたいほどに価格が高いのに、なにかしら難点があるところばかりなのですね。しかし、当日、オーバーブッキングで泊まるところがなくなり、電車で30分のボローニャでようやく真夜中にホテルを見つけたという日本人もいたということを思えば、泊まるところがあっただけでも心からありがたいと思いました……。

今回のフィレンツェのホテルに関しては、そんなわけで、この繁忙期に3泊も無事に取材できただけで感謝しつつ、ノーコメントです。学んだことは「4つ星自慢ばかりするのは、最低限の設備は備えているがほかに自慢することがないことを意味する」「ホテル予約サイトの口コミは、ホテルに求める要素が違う人のコメントだったりするので、まったくあてにならない」「場所自慢、歴史自慢には要注意。ほかに褒めるところがないことがある」。

素人レビューにこそ、高いリテラシーが求められますね。

滞在した場所によって、同じ町でもまったく違う印象をもってしまうのは確か。前回のフィレンツェと、今回のフィレンツェで、まったく異なる面を見ることができて、それもまた貴重な経験でした。

13日、空路ロンドンからフィレンツェへ移動して、休む間も与えてもらえず、ピッティ・イマジネ・ウオモ会場のバッソ要塞へ。記録的な暑さらしく、30度を優に超えていますが、フル装備のスーツの男性も多い。



ピッティは世界最大の男性服見本市で、クラシックスーツのトレンドを発信するブランドがブースを出しているイメージが強いのですが、カジュアルウエア、スポーツウエア、装いに関わる各種小物、ニッチな香水などのブランドも出展しています。


ブースを出すという形式だけでなく、フィレンツェの各種歴史的建造物を活かしたショーも行われます。商談がメインになりますが、各国からジャーナリスやブロガー、「写真に撮られたい人」やその他もろもろのファッショニスタらも集まります。年に一度、ピッティで顔を合わせるということになっている人たちもいるようで、メンズファションの一大祭典。

初日のブース巡りでは、まず、Hiromi Asaiさんにご挨拶に伺いました。今回、ピッティに強く誘ってくださったのはほかならぬ彼女なのです。「まんまる」の連載で、もう2年ほど前になりますが、Hiromi Asaiさんの、着物地を使ったニューヨークコレクションのことを記事にしたことがあります。それをきっかけにHiromiさんとの交流が始まり、何度か冬のピッティにもお誘いいただいたことがありましたが、タイミングもなかなか合わず、今回、堂々取材できることになり、ピッティでお目にかかることができた次第です。


着物地からオーダーして作り上げたという作品の数々は、独特の存在感を放っています。

やはり着物地によるメンズウエアというのが珍しく、海外メディアの取材もたくさん来ています。

これは地模様が薔薇なんですよ。薔薇が透けてみえて、意外と涼し気な夏物素材なのです。私自身がこの服地でスーツを作ってもらいたいと思った傑作。

Hiromiさんのディレクションのもと、これを縫製したのは、弟子?の長谷川彰良くんです。Good Job!  良いご縁が生まれたことを、心から嬉しく思います。

 

この日の最後は、ヴィクトリア&アルバート美術館で開催されているバレンシアガ展。

ここはケンブリッジ時代にも、週末にロンドンに来るたびに通った大好きな美術館。


外側は当時のままで懐かしい、ところが、中は大胆に変貌している。そこがいかにもイギリスらしい。
バレンシアガ展はすばらしかった。すべて撮影可能というのもこの美術館のいいところ。撮影されたものが出回ると人が来なくなるので撮影不可にする、というのは主催者側の大きな勘違いです。写真が出回れば出回るほど、人は「本物」を見に来るんです。フラッシュさえ禁止にすれば、来場者に写真撮影を許可するのは、来場者を増やしたければ、メリットになるはず。

詳細に関しては、また機会をあらためて書きます。


次回はピンク・フロイド展ですって! これを見るためにまたロンドンに来なければ!と思わせるクールな「次回予告」。

 

最後のディナーは、ピカデリーのThe Wolseley で。



やはり王道をいくスコッティシュ・サーモン。鱒ずしと錯覚しそうなシンプルなレイアウト。

とても天井が高く、開放的なムードで、好みのど真ん中でした。

(くどいですが)私は小食で、雰囲気のよい店で正統派の(凝りすぎていない)料理を2品ほど食べてシャンパンとワインを1~2杯いただければそれで大満足、デザートも不要という単純なタイプです。そういうタイプにはこの店は気楽なのにリッチな気分を味わえて最高でした。味にうるさい人はまた違う意見かもしれません。

食事が終わる頃、ロンドン在住のソーシャライトで25ansブロガーでもあるSatoko Matsudaさんがご主人さま(←とても優しくて奥様思い♡)とともに合流してくださって、コペンハーゲンファッションサミットの資料をお持ちくださいました。ひととき、ロンドン社交界のお話で盛り上がり、楽しいひと時を過ごさせていただきました。ありがとうございました!

かくしてロンドン取材は無事に終了。終始、晴天に恵まれたのは幸いでした。予定していたショーが見られなかったなどのハプニングもありましたが、予想外の収穫も多々ありました。今回の成果は後日、順に記事になる予定です。どうぞお楽しみに。

疲労も極限にきていて、このあたりで東京に戻りたいのはやまやまですが、取材はもうひと山分残っています。そのままフィレンツェに向かいます。

 

続いて、ミチコ・コシノのプレゼンテーション。ミチコさんは昨年、「ミチコ・ロンドン」30周年を祝いました。ロンドンではベテランです。


テーマは日本の野球少年。



バックステージにもお邪魔しました。インスタレーションのモデルは時々こちらに帰ってきて、着付けを直したり、飲食物をとったりして休憩をとります。

ミチコさんにもお話を伺いました。ロンドンを中心に発表するのは、ロンドンには自由があり、「しがらみがない」から自然な形で服作りができるため、とのこと。「しがらみ」とは、百貨店のバイヤーからの注文や契約や、その他もろもろの数字的な束縛のことのようです。表現は違いますが、同じようなことを、ミハラさんもおっしゃっていました。ロンドンは「コマーシャル(商業的)」ではないところがいいのだと。


気さくに記念撮影に応じてくださるミチコさん。


移動のタクシーの窓から、ジャック・アザグリーのお店発見。ダイアナ妃のデザイナーとして10年以上前?に来日した時、インタビューしたことがあります。今回はお会いできなかったけど、お元気でいらっしゃいますでしょうか?

5日め、12日の午前中はさすがに動けず、少し体力の回復を待ってから、午後のヴィヴィアン・ウエストウッドのショウからスタート。場所はシーモア・レジャーセンター。公民館のような体育館のような場所。すでに外は一目でヴィヴィアンのファンとわかる人たち、彼らを撮るカメラマンらで大混雑。



シートには”We are Motherfucker”と題されたコレクションテーマ、というかアジテーション文が。各モデルのメイクは、次のものを表す、と書かれています。ハート=愛、自由な世界。ダイヤ=欲望、腐敗、プロパガンダ。クローバー=戦争。スペード=シェルやモンサントなど地球を凌辱する巨大企業。現代社会のもろもろのコントロールに対し、抵抗していこうというメッセージ。


開始前、ゲストのファッションを眺めているだけでも相当面白い。


どのショウにも共通しているのですが、おしゃれな方は靴に凝りますね。

向い側のフロントロウも、おそらくファッションエディターらが多いと推測するのですが、個性的な人がずらり。


いよいよ開始。期待を裏切らない、過激で、メッセージ性の強いルックが続々。


ただランウェイを歩くのではなく、サーカスダンサーが大胆なポーズをとりながら踊り、挑発し、移動していく。



フィナーレは大歓声、大喝采。スタンディングオベーション。こんな熱い反応で盛り上げる大勢のファンがヴィヴィアンを支えている。

 


ラストにヴィヴィアンがサーカスダンサーに肩車されて登場した時には鳥肌が立った。なんとかっこいい人なんだろう!


よほどバックステージにかけつけてインタビューしたかったのだが、日本のPRに「混み過ぎていて無理です」と止められる。今から思うに、そこを突破していくべきだった。ヴィヴィアン・ウエストウッドならそんな行動も歓迎してくれたような気がする。


デザイナーに敬意を表して、いちおう、ヴィヴィアン・ウエストウッドのセットアップを着ていったのです(レッドレーベルですが)。しかし私が着るとパンクなイメージからほど遠くなりますね。人込みを突破していくくらいのガッツが足りないのだな。

ちなみに、この服の左肩のボタン(ヴィヴィアンのロゴ入り)だけ、ブロガーさんたちが熱心に撮影していきました。笑


ヴィヴィアン・ウエストウッドはやはりロンドンファッションの女王であると確信した午後。

読売新聞夕刊連載「スタイル アイコン」。

本日は、マーク・ザッカーバーグ<スーツ版>について書いております。

ハーバード大学の卒業式でのスピーチにはまさに未来のビジョンを示してもらった思いがしました。理想主義的、との批判もあったようなのですが、理想を語るリーダーは、懐疑主義的ではなく、これくらいの明るさと信念があるほうが頼もしいと私は感じました。とりわけ現代のような時代においては。

機会がありましたらご笑覧くださいませ。

一日が長い。普段ならこれで眠り始めているところ、これからこの日のビッグイベント。ハケットロンドンによるテムズ川クルーズ。19:30テムズ埠頭のハケット号にて。


ロック帽子店で買ったのはこのハットでした。

今シーズンのテーマがヘンリー・ロイヤル・レガッタということで、船内にはボールドストライプのジャケットやクラブタイで装ったメンズも多く、気分が盛り上がります。

ちなみにハケット・ロンドンはヘンリー・ロイヤル・レガッタのオフィシャルパートナーになっています。HRRに関する詳しい情報は、こちら、HPに。

ハケットの新作コレクションも一応、船内に展示はしてあるのですが、とくに解説があるわけでもないし、みなさんおしゃべりに夢中で誰も観てない。PRの方によれば、この「服なんて関心がない」態度を見せるのが紳士ワールドの感覚なんだそうです。笑

ハケットもそうですが、他のブランドも、ただ服だけを提示するのではなく、その服がしっくりと似あう背景のなかで(ライフスタイルの一環として着用されるアイテムとして)提案しています。

ミスターハケットはさすがのレガッタ風味のジャケット。左はBLBG社長の田窪さん。


レガッタ名物のシャンパンアイスも供されました。シャンパンがそのままシャーベットになっています。

10時半近くなって暗くなったころ、ようやく船はテムズ川ミニクルーズに出航します。このころになるとゲストはほとんど帰ってしまっており、ごく少数の残ったゲストのみ「ザッツ・ロンドンナイト」という贅沢な夜景を楽しむことができました。終盤に差し掛かったぎりぎりのところで本当のお楽しみが出てくるというパターン、これも紳士文化のひとつの型に則ったものでしょうか。

A summer cruise to remember forever.

寝不足続きの上、バイクレースのおかげでタクシーに乗れず歩きどおしで疲労も極致に達していたので、19:30から始まる夜のイベントに備えていったんホテルへ戻って1時間ほど仮眠をとることにしました。

ところが、うとうとしかけたところでけたたましい火災報知器の音が鳴り、万が一本当だったら、と思ってパスポートとお財布だけ持って部屋の外へ。しかし、どうやら間違いらしいと他の客が言うので様子を見ていたら、2分ほどさらになり続けたあとに終了。でもあの音は心臓に響きますね。ドキドキしたまま部屋に戻り、再びうとうとしかけたところ、またしても火災報知器。念のために、もう一度出てみる。やはり間違いとのこと。このときはなんでもなくて幸いでしたが、この誤報事件の翌日、ホテルのあるストランドからは離れるのですがロンドンの高層住宅の火事が発生し、思わずあの報知器の音を思い出して身が凍る思いがしました。巻きこまれてしまった方々は、いかほど恐ろしい思いをなさったことでしょうか……。逃げきれなかった方々に、衷心よりお悔やみ申し上げます。

 

なにかと心労ばかり増え続けた今回滞在のホテルとは違い、その空間にいるだけで疲れが癒される思いがした、リージェントストリートのカフェロワイヤル(ホテル)。「オスカー・ワイルドのバー」に行きたかったのですが、


予約がとれず、ラウンジでカフェ。ここはここで優雅な時間が流れており、別格の居心地よさと安心感を感じさせる対応でした。


高い飲食代や宿泊代には、「安全」や「安心」も含まれているのですね……。

ミハラヤスヒロのショー会場から近いということで、そのまま歩いてサヴィルロウへ。


ザ・サヴィルロウの貫禄、ヘンリープール。



ハンツマンの看板は、右側から見るとHuntsman と書いてあるのに、左側から見るとKingsmanと書いてある。かなり嬉しくなりました。少し光が反射して見えにくいですが、Kingsmanと書かれているのがおわかりになりますでしょうか?


アレクサンダー・マックイーンもサヴィルロウに。刺繍入りのジャケットに目が釘付け。

日曜なのでほとんど休業ですが、リチャード・ジェームズはファッションウィークに合わせた展示会でにぎわっています。



上の写真はリチャード・ジェームズのオーダーメイドの店。今回展示会がおこなわれたのは、お向かいの既製服の店でした。



カラフルな色彩使いのうまさがリチャード・ジェームズ。ピンクと黄色とグリーンを同じ靴下にあしらうなんてなかなかできることではありません。

リチャード・ジェームズご本人もいらっしゃいました。右側です。左は、大手PR会社パープルPRのディレクター、ナンシー・オークリーさんです。

リチャード・ジェームズのマネージング・ディレクターとデザイン&ブランドディレクターのおふたり。靴が茶色です。聴いてみると「もちろん、ブレーキングルールさ!」と即答。この店ではブレーキング・ルールを守ることがむしろ王道という皮肉なことが起きています。笑

こんどは平日に!

日曜日はメジャーな自転車レースがおこなわれているとかで、道路がレースのために使われ、タクシーでの移動がほとんどできない。それで地下鉄と徒歩になるのですが、これがけっこうな距離を歩くことになるのですね。寝不足とオーバーワーク気味で相当、体力は消耗しているはずなのですが、好奇心というのは何よりも強力なエネルギーになるようで、ふだんなら信じられないような体力を発揮してしまいます。

ランチ後のコーヒーもそこそこに、ミハラヤスヒロのショウ会場へ移動。オクスフォードストリートの地下駐車場でおこなわれます。



クレッシェント型にのびる駐車場に、心をざわつかせるような生演奏が響く。ちょっと寒くて怖い。そんな雰囲気によくあうコレクションが展開される。





丁寧に作られた見ごたえのあるコレクションの最後には、デザイナーが走って登場。ちょろっと顔を出してひっこむデザイナーが多い中、カメラの前まで行くデザイナーは珍しい。

感動さめやらぬままにバックステージにお邪魔して(プライベートでは慎ましすぎるほど控えめな私ですが仕事となるとかなりアグレッシブになります)、ミハラさんにお話を伺いました。


テーマはブランク・ミラー(blank mirror)。電源の消えたパソコンのこと。いまや「アンチテーゼ」が当たり前すぎて、パンクすらアンチテーゼになっていない。そんな時代の葛藤や混沌を表現したかったとのことですが、詳細は活字で!

日曜12時からジョン・ローレンス・サリヴァンのショー。大勢の人、人、人。バブル期に人気を博したブランドというイメージもありましたが、今また盛り返しているようです。テーマはポスト・パンク&クール・ウェイブといった音楽を含むカルチャーを背景とするファッション。

定番アイテムをオーバーサイズにすることで挑発。


どこか破壊された服なんだけど、きれいな印象。これが「ポスト・パンク」?


レディス?が何気なく混じっている。写真ではわからないのですが、胸元はニプルまで見せています。


クールウェイブ?


ボディに響く音楽との相乗効果で、なんともしびれるショーでした。最後にちらっと出てきたサリバンは歓声と喝采を浴び、熱気のなかに終了。

 

ランチは会場から歩いて数分のサヴォイホテルの中にあるサヴォイ・グリルで。

日曜なのでサンデーローストがおすすめ、というわけでローストビーフをいただきました。コーディネーターYumiさんによれば、ゴードン・ラムジーが関わるようになってからこのレストランも格段においしくなったとのことです。

またしてもボリュームに泣きそうになりましたが、向こうのテーブルに座っている父子に癒されました。プチ紳士といった風情の坊や、しっかり気取って紳士の振る舞いをしていたのがなんともかわいかった。

サヴォイホテルのサービスも雰囲気もさすがにすばらしい。次の機会があればぜひこんなホテルでゆっくり過ごしてみたいものです……。

日曜。ホワイトオムレツに懲りたので、朝食はイングリッシュブレックファストにしてみました。これで一人分…。小食なのですべて少量でお願いしますといってこの分量。マッシュルームが巨大すぎて怖い。甘いペストリーが山盛りに(トーストを選ばなかったためではありますが)。ベリーミックスにも焼き物のプレートにもエディブルフラワー(食べられる花)が散らしてある。贅沢な不満だとはわかっているのですが、この巨大な量、むだなおしゃれ演出に、そろそろ泣きたくなってきました……。

さて、気をとり直して朝11時スタートだったはずのアストリッド・アンダーソンのショーに行こうとしたら、直前にスケジュール変更があり、10時にスタートしており、見逃してしまう羽目に。

さらに気を取り直し、ロンドンのキングズカレッジ内で行われていたDanshanのインスタレーションに。ぷちぷちで作られたトラウザーズが目をひく。


でもこれだけ!?

不完全燃焼感が残り、隣接するコートールド・インスティテュートで、印象派展を開催していたので、こちらで気持ちを持ちなおすことにする。ファッション展がしばしばおこなわれている館内でもあるので、それを見ておくためにも、というわけで。


麗しき天井画。

ピアノのふたにもアート。


天井画、シャンデリア、宗教画、暖炉、カーペットというのは、この種の「カルチュア&ヒストリー」の迫力で威圧するための必須アイテムと見えました。


館内のカフェから眺める広々とした中庭。ここでもしばしばファッションショーが行われるそうです。メイン会場の隣とは信じられないほどのゆったりとした時間が流れていて、休憩中のファッションジャーナリストやブロガーらがコーヒーを飲みながら談笑している。イギリスでは紅茶、というのは昔のステレオタイプ。時間が止まってほしいくらいの平和で豊かな光景。

フォートナム&メイソン、セリフリッジ百貨店についても最新のディスプレイを見ておかねば。というわけで駆け足で訪問。

店舗内のディスプレイは、とてもわかりやすく、眺めているだけでも楽しいミュージアムのようになっていました。


フォートナムメイソンの入り口では、トップハットのドアマンがいい味だしています。日頃はとなりのおじさんのような装いなのだと思います。お仕事のためのコスプレ。

セルフリッジ百貨店入口にて。入っていきなり広々とした香水売り場で、文字通りむせ返りそうな匂いに迎えられます。入口に香水売り場があるのは、においを外に逃がしやすくするためだそうです。日頃はブティックでしかお目にかかれない、各ブランドのエクスクルーシブラインがすべてそろっているのもセルフリッジならでは。すべて3万円超えクラスの香水。またとないチャンスなのでいろいろ試香してしばし夢の時間を過ごしてしまいました。

靴売り場が顕著でしたが、こちらもミュージアムのように商品を並べており、一点一点、デザイナーの作品を比べていくのは、まさに美術館体験と似ているように感じました。


ヌーディストのサイクリストたち。文字通りフルヌードで自転車に乗っている人もいるんですよ。驚愕でした。一瞬で走り去っていくので、不快なものを見たという気はせず、眺める人たちも寛容な笑顔で。

メンズファッションウィーク期間は、メイン会場だけなくロンドン全体がお祭りを盛り上げる。メンズの聖地、ジャーミンストリートでも道路でファッションショーをしたり、特別なインスタレーションをおこなったりしています。



ジャーミンストリートの守り神といえばこの方。ボー・ブランメルさま。


ルー・ダルトンの店では、ショーウィンドウに生身のモデルが入り、動いたりおしゃべりしたりしながら最新コレクションをアピール。ルー・ダルトンは女性のクリエイティブディレクターです。モデルはみなつるんとして「かわいい」印象の男の子たち。


写真を撮る人、撮られる人があちこちにいて、地味な賑わい感。


ターンブル&アッサーは長く続いた外壁の修復もようやく終わり、少しリフレッシュされた外観。


おなじみのブランドの「本店」「ジャーミンストリート店」というのはやはり心ときめくものですね。


連日、快晴に恵まれています。スーツでやや汗ばむくらいの暑さ。


ジャーミンストリートから少し外れたところには、ロック帽子店が。「キングスマン」にも登場した、世界最古の帽子店です。



大きな古時計と並ぶ、クラシックな帽子の数々。そして美しい帽子ケース。


上階は女性用の帽子やファシネーターが並びます。ロイヤルアスコットも近いので、帽子を売るには最適なシーズンですね。

試着しているうちに、明日夜のイベント用に最適なハットと遭遇。買ってしまいました。
六角形の素敵なハットボックスに入れていただきました。しかしこれはさすがに日本に持って帰れないので、箱はコーディネーターのYumiさんに引き取ってもらい(収納ケースとしても使え、お部屋のアクセントになるそうです)、帽子はかぶって帰ることに。帽子はかぶりなれないと「じゃま」と感じることも多いのですが、それにゆえにたぶん、帽子とのつきあい方を学ぶよい機会。

11日。Me Londonの朝食、モーニングのメニューに「ホワイトオムレツ」というのがあったので、どんなだろうと思って頼んでみた。クリームソースでもかかっているのかと想像していたら、なんと、卵の白身だけを使ったオムレツだった。見た目はおしゃれすぎるほどなのですが、ありえない味でした。


すべてにおいておしゃれすぎる、というのもやや疲れるものですね……。ホテルに入ると、ホテル自慢のオリジナルのアロマが迎えてくれるのですが、これも狙いすぎの最先端で、疲れて帰ってくるとややついていけない感に襲われます。ホテルのホスピタリティも実に多様。よい経験をさせていただいています。

気をとりなおし、ホテルから歩いて3分の、ロンドンファッションウィークメン、メイン会場へ。

このスーツもアトリエサルトの廣川さん作。今回の出張のために、前回の型紙を使って、途中のフィッティングを省いて超特急で作ってもらいました…。廣川さん、ありがとうございました。

フロントロウに座ってファッションショーに参加するには、やはり空気をぶち壊しにするわけにはいかず、それなりの配慮が必要なのですね。

まずはE. Tautzのショー。
こんな打ちっぱなし風のショー会場。



少しゆるい空気感をただよわせるテーラードを中心に。ハイウエストで、ややオーバーサイズ気味の太めのラインが特徴。


クリエイティブディレクターのパトリック・グラントが、最後にちらっと登場。喝采を浴びていました。デザイナーというよりもむしろマーケッターという印象。E. Tautzを立て直した敏腕”ビジネスマン”としてBBCに特集されたこともあるそうです。

会場には熱烈なグラントのファンが詰めかけていました。ひときわ目をひくイケメンさんがいるなあと思ったら、モデルのデイヴィッド・ギャンディでした。LFWM(London Fashion Week Men’s)のアンバサダーもつとめるスーパーモデル。あちこちで記念撮影に応じていました。

サンダーバ―ドから飛び出してきたようで、あまりにも美しすぎてリアリティがない。笑。

ファッションウィークでは、日頃メディアでしか見かけない有名人が何気なく混じっているのも面白いですね。

10日、午後7時でまだ明るい。一日が長いとなかなか仕事も終われない。かなり体力もきつかったのですが、ソーホー地区に新しくオープンしたRag & Boneのパーティーへ。

店内はラグ&ボーン的なファッションの男女でひしめく。

テラスの壁には一面に骨の絵。

道路にあふれるゲスト。

ストリートファッションに関しては、一時、ソーホーの勢いが減じていたのですが、最近、再び盛り返しているそうです。キティスカートの男子も、何でもないようにしっくりと風景に溶けこんでいます。


午後8時過ぎでもまだ明るく、パブでは人が外で立ち飲み。


今回の取材、ロンドン編は、ロンドン在住のYumi Hasegawaさんにお願いしました。きめ細かにアレンジしていただき、ありがとうございます。


帰途、9時半ごろでようやくこのくらいの暗さになる。夜のロンドンも照明が美しく、ムード満点です。


 

その後、いよいよダイアナ妃展へ。詳細に関しては、後日、活字媒体で書きますので、こちらではさらっとね。



社交界デビューに際し、ハロッズで買ったというドレスからスタート。



学芸員のマシュー・ストーリー氏の解説のもと、ダイアナ妃が社交界デビューから晩年にいたるまでに着たドレスやスーツ、それぞれにまつわるエピソード、デザイナーと結んだ関係、およぼした社会的な影響を学んでいきました。

これまでにかなりダイアナのファッションについては書いたり話したりもしてきたのですが、それでも新たに発見したことが多々。




写真で何度も見て、よく知っていたはずのドレスであっても、細部の工夫のすばらしさはやはり、肉眼で見ると初めて心に迫ってくるものなのですね。

それにしても背の高い方だったのだわ。

原稿はどこから何を書くべきか……。字数制限のあるものを、いざ書いてしまうと、「書けなかったこと」がどうしても出てくるのです。それが気になるとなかなか仕上がらなかったりするのですが、最後には、割愛分もまた書かれたことの厚みにつながると自分を無理やり納得させるしかないのですね。

10日、夕方はケンジントン宮殿へ。ダイアナ妃展が目的ですが、その前に、宮殿内を見学。広大な庭園でくつろぐ人々がけっこう多くて、公園と勘違いしそうなのですが、ここは「パーク」ではなく「ガーデン」。あくまでも、宮殿内の「庭」なのです。




柳のように下に垂れさがる大木。夜に遭遇したらかなりコワそう。


ケンジントン宮殿とは、1689年以来、イギリス王室の王や女王らの住まいとなってきた「ステート・アパートメンツ」です。ジョージ2世とキャロライン王妃、メアリ2世、ヴィクトリア女王、ダイアナ妃らがこの「アパートメンツ」のなかで過ごしました。


天井も壁も、隙間なく美術で埋め尽くされております。



窓から見えるガーデン内の白い像はヴィクトリア女王。その先には広大な池が。


18世紀、ロココスタイルの宮廷衣装も展示されています。間近で見ると、ぎっしりと宝石や刺繍がぬいつけられていることがわかります。壮麗というか、これはまさしく権力を見せつけるための衣装だったのですね……と理解できる。かなりの重さだったことがうかがわれます。



こんな豪華なタペストリーも。保存状態がかなりよい。


ハイテンションの勢いで、「女王の椅子」というのに座ってみました。笑


シャフハウゼンのときも感じましたが、ヨーロッパの曇って3G的というか、厚みがある。

10日、エドワード クラッチリーのショウ。場所はバービカン、シャフツベリープレイス、アイアンモンガーホール。


歴史的価値のある建物で、どんなショウが行われるのか、かなり期待が募ります。


時間、国、ジェンダー、肌の色、文化、全てを越境して紡ぐ、最高級素材を使った斬新なルックが続々登場。


バックステージに紛れこんで話を聞きました。次世代の鬼才ですね。



配られたメモから。”The irrelevance of gender; the relevance of sex.  Prog-rock Mediaeval rivivalism.  The role of Wakashu in Edo-era Japan. Poetry, not romance.”

荒唐無稽に見えますが、すべては一点ものの、彼のために特別に作られたテキスタイルから作られています。間近で見ると、リッチで豪華なのです。

マックイーンやガリアーノを生んだ、これがロンドンの底力。

ダイアナ妃関連の取材。パーソナルデザイナーとしてダイアナ妃のドレスを作っていたアイルランド人デザイナー、ポール コステロ氏にインタビューしました。

こちらが日本人だからこそ初めて語ってくれた、アイルランド人の目から見たダイアナ妃像。日本人ジャーナリストとしてのこの話題でのインタビューは初めてとのことで、記念にさらさらとデザイン画まで描いてプレゼントしてくださいました。貴重なお話の数々、必ずよい形で世に伝えます。

 

 

オフィスの前。立っているのは、息子さんでPRのロバート。

実はポールは現在、復興支援として釜石とコラボレートしてアクセサリーも作っています。


ケースの上に彫られているのは、アイルランドの「愛」の象徴。

 

詳しくは後日、活字で。

日本経済新聞土曜夕刊「モードは語る」。第4回の本日は「ゴープコア(Gorpcore)」について書いております。

Givenchy 2017 SSより。

ノームコアの次なる造語、Gorpcpreとは。

ご笑覧くださいませ。
This is Gorp.

今年の誕生日はロンドンで迎えることになりました。

たまたまイギリスの総選挙の日とも重なり、テレビのインタビュークルーなども町の中にちらほら見かけます。

今回の訪英の目的は、ロンドンメンズファッションウィークの取材と、ダイアナ妃展関連の取材です。インタビュー、ショウ、展示会、イベント、パーティーなどの予定がぎっしり詰まっています。

(ホテルにはすでに大量のインビテーションが届いていました)

到着してすぐ、瞬間で着替えてイベント2件のはしごから。


コベントガーデンにあるBeastにて、グローブトロッターのパーティー。


グルーミンググッズや香水なども扱われていて、今どきのセレクトショップという感じでした。グローブトロッターのデザイナー、シャーロット・セドンと久々に会い、喜びあって記念写真。
テロへの警戒も高まっているロンドンですが、「できるだけいつも通りに日常生活を過ごすことこそが、テロリストへの最高の復讐」だそうです(グローブトロッター社長談)。平常を保つということ。Keep Calm and Carry On. これにはやはり強い心と意志が必要ですね。私にしても、「何も今、行かなくてもいいのではないか?」と心配してくれる家族の言葉に後ろ髪をひかれる思いでしたが、どこにいても多かれ少なかれ危険はあります。恐れすぎず、楽観しすぎることもせず、いただいた仕事のチャンスがあれば謹んで応えていくのが務めかなという思いです。

二軒めは、ロンドンメンズコレクション5周年を祝うパーティー。とあるジェントルマンズクラブ風の建物のなかで行われていました。

写真は遠慮して撮らなかったのですが、とりわけグルーミングにおいてスタイリッシュな方々がひしめいていて、やはり同じ国の人でも場所によって「人種」(誤解を生みそうな表現かもしれませんが、肌の色による人種分けや社会階級分けとは違う、装いに対する意識が生む見かけの違いという程度の意味です)が全く違うということをあらためて実感。

建物自体も一室、一室、とても凝ったインテリアで、トイレの中にもクラシックな本がぎっしり飾られていました。

インドにかかわるモチーフが集められていた、赤が印象的な部屋で、誕生日の記念写真。着ているのはTae Ashidaです。

向かい側にはパブ。木曜の夜にパブに集う人々。夜9時過ぎでも明るいですが、夜は肌寒く、コートを着ている人も。


今回の滞在はコベントガーデンにあるME Londonという5つ星ホテルです。進化形スタイリッシュ&グローバルなモダニズムを意識した、おしゃれ(すぎる)ホテルで、広々としたクイーンサイズのベッドをおく最先端テクノロジーを搭載した部屋には身体が全部入る長さと深さのバスタブもついており、水回りも快適で、移動の疲れも癒せました。ただ、一人で使うのが相当もったいない……。

 

北日本新聞別冊「まんまる」7月号発行です。

連載「ファッション歳時記」第69回。クルト・クラウスが時計界に起こしたイノベーションとその意義について書いております。

5月にお目にかかった伝説の時計師、クルト・クラウス氏。


1985年にクラウス氏が考案した「シンプルな」(!)永久カレンダーの設計図を説明するクリエイティブ・ディレクターのクリスチャン・クヌープ氏。

京都国立近代美術館で行われているヴァンクリーフ&アーペル展。土曜日には、CEOのニコラ・ボス氏と、建築家の藤本壮介氏のレクチャーを聞きにいってまいりました。

インスピレーションに満ちたすばらしいお話と、極められた技の前にひれ伏したくなるほどの圧倒的な展示。

 

フェアファクスブログに書きました。その1、です。お時間のゆるすときがあればご笑覧くださいませ。

 

そういえば、ちょうど去年の今頃、ポール・スミス展の関連講演で、この美術館のこの場所で話していたなあ。こうしてわざわざ東京から京都までレクチャーのために出かけるというマニアな聴き手になってみると、どのように聴き手にサービスすべきなのかが、はっきりとわかってくる…。

 

BLBG  2017-18 秋冬メンズ展示会に伺いました。南青山Vulcanize London にて。

テーマはリアル・ロンドン・スタイル。メイフェアの上品な紳士がイメージされています。

グローブトロッター新作は、「キュナード・ライン」社とのコラボ。「キュナード・ライン」とは、世界で唯一、イギリス女王の名を冠することが許されているクルーズラインです。

おなじみのターンブル&アッサーのテーマは「ダークサイド・ソサエティ」。クラシック映画のマフィアスタイルがイメージされた、大胆な柄が目をひきました。ここのネクタイのディスプレイにはいつもほれぼれします。

老舗ファクトリー、コービーズからは、ジョシュア・エリスの上質なウールで仕立てたダッフルコート。白いダッフルって現実的ではないかもしれない分、眺めている分には素敵ですね。カラーバリエーションは豊富です。

そしてハケットロンドンからは「スカイライン・コレクション」。イギリスの空の色でもあるグレーと、建築物のレンガから着想を得たバーガンディ、そしてハケットのブランドカラ―であるネイビーを中心に新作が展開されます。

上は現代では珍しいブロークン・ヘリンボーン。写真ではわかりづらいのですが、ヘリンボーン柄の変形バージョンです。複雑な深みがあって、なかなか新鮮。

こちらは、新たに加わったモデル、「ウィンザー」。肩と腕まわりが「ロープショルダー」と呼ばれる構築的なラインになっています。着丈はハケット一番人気の「メイフェア」よりもやや長め、Vゾーンの開きも少し大きめです。トラウザーズやウエストコートの細部にもクラシックなアレンジが盛り込まれています。

そしてスマイソン。ダイアリーの新作は「Yes Yes Yes」。イギリス人なので必ずしも全肯定のイエスではなく、いろんな意味が状況に応じて与えられるわけですね。

カードは上質なのに楽しさ満載、思わず帰途にショップで2種類のボックスを購入してきました。すぐにお礼状を書きたくなるカードなのです。あまりに上質すぎるので書き損じがほとんど許されないというのも緊張感あってよいということで。Yes.

読売新聞夕刊連載「スタイル アイコン」。本日は、フランスの新大統領エマニュエル・マクロン氏について書いています。


就任式でのスーツは450ユーロという庶民的な価格であることが話題になりました。妻のブリジットが着ているのは、ルイ・ヴィトンからの借り物、と報じられました。

 

スーツをダウングレードすることで得られた支持。興味深い大統領選でした。

機会がありましたら、ご笑覧くださいませ。


知人らが口をそろえて「見ておかないと絶対損をする」と勧めるミュシャ展、駆け込みで見に行きました。平日の午後4時すぎで入場まで40分待ち、中に入ったら人の波。

その人気も納得の、けたはずれのスケールの絵の数々。悲惨で絶望的な状況を描く絵も光の描写のなかにどこか宗教的な救いを感じさせ、画家の心の中に渦巻く感情をほんの少しでも追体験できたような経験でした。

それにしてもあの巨大なサイズの絵はどのように運んできたのか?船舶でしょうか。もう二度とこのような展覧会はできないのでは。行ってほんとうによかった。


撮影可能スペースの絵は、他の絵に比べて優しく穏やかな絵でした。


穏やかとはいえ崇高な思いがあふれてくる迫力の絵。写真ではとうてい伝わらないのですが。


撮影する人、人、人……。

 

その後、渋谷のbed というレストランで早目の誕生日祝いをしていただきました。渋谷には大人がゆっくり食事ができるレストランが少ないのですが、ここは超穴場。カウンターをはさんだ目の前で、その折々に入荷した新鮮な素材をすばやく調理して出してくれます。食器はすべて特注の伊万里焼だそうです。

新鮮な太刀魚とアスパラを極上のオリーブオイルだけでフリットにした逸品。
ワインの種類も多く、くつろぎながら満足感のあるディナーを楽しませていただきました。


ソムリエ(左)とシェフ(右)。ありがとうございました。


感謝。まさかのこの歳になってキャリアの大きな変わり目を迎えておりますが、離れるのもご縁であればつながるのもまたご縁、いったん離れてもまたどこかでつながることもあるでしょう。一瞬一瞬の選択が確かなものになるよう、日々を深く味わって過ごしていこうと思います。