DHC出版より行方昭夫先生の『英文~』シリーズ第4弾が発売されました。
 『英文読書術』。ラフカディオ・ハーン、アースキン・コールドウェル、キャサリン・マンスフィールド、ナサニエル・ホーソーン、リング・ラードナー、それぞれの短編で英文学の読解を学ぶための本。左から読めば、原文をどのように解釈し、その言外のニュアンスをいかに読み取っていくかについての、繊細で奥深い読解ガイドとして読める。各作家についての短い解説もつく。そして右から読めば、行方先生による完成訳を通して味わうことができる。それぞれについての、深い「読み方」も学べる。

「使える英語」、「通じる英語」と称されるフラットで明快すぎるアメリカンな英語(裏の意味がまったくない、つるつるの実用英語)ばかりが幅を利かせている現代英語教育に対する、優雅な抵抗の本にも見える。いや、つるつるの実用英語も必要だとは思うが、その種の言語ならば、これからAIが全部瞬時に翻訳してくれるようになると思う。でも、人間の複雑な心の機微まで読み取らなくてはならない「文学の英語」は、少なくともグーグル翻訳ではまったく無理だし、こうした読解の訓練こそが人の心を育てていくのだと思う。

 

もちろん、「文学の英語」は「使える英語」としても役に立つ。

She gave an apologetic little laugh. (彼女は弁解がましく少し笑った)とか、

That open countenance! (あの屈託のない笑顔をご覧なさいよ!)とか、

Methinks I can see a likeness of our departed Henry. (ヘンリーの面影があるような気がします)とか、

文語チックだけど、覚えていると「使える」というか、映画のセリフみたいに「使いたい」フレーズ。笑

 

今回選ばれた5点の短編は、それぞれに味わい深いのだが、なかでも鮮烈に印象に残ったのは、あっさりするほど短い作品、ハーンの『葬られた秘密 (A Dead Secret)」。幽霊がタンスを見つめる情景がありありと見えて、くどくどと背景が書かれていないゆえに、幽霊の心情や生前の家族の関係、秘められた関係、その後の展開などをあれこれ想像し、深読みしたくなってくる。

英語の、ほんとうの意味での「読み方」を学ぶとは、文脈のなかでの論理を考えることにもつながる。英文学における論理というのは、往々にして、人の心の動き方に対する洞察でもある。本欄のタイトルにした「全面的真実」とは……? ぜひ行方先生の解説をお読みください。

 

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